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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
六作目『異星の下:ラ=ライエの召喚』
99/100

先輩のために、ゲームを作りたい

土曜の夜。

先週の約束どおり、瞳は絢音の部屋を訪れていた。


「もうすぐ配信始まるよ」

今日使うのはパソコンではなく、液晶モニターに映しての視聴。

二人は並んで小さなちゃぶ台の前に座り、机の上にはお菓子と飲み物が並んでいる。


「先輩のV、どんな感じなんだろうね。楽しみだなぁ、ムム」

絢音がそばを通りかかった愛猫を撫でると、ムムは「にゃー」と返事をするように鳴いた。


「そろそろ時間だな」

瞳が画面の時刻を確認する。

「ほんとだ」

絢音は正座をして、真剣な表情で画面を見つめていた。


「ゲームやるとき以外でも正座するんだな」

瞳が少し驚いて言う。

絢音には癖があった。強い敵や難しい場面に挑むときは、必ず正座で構えるのだ。


「だって今日はママの初配信だから」


そう話していると、ついに配信が始まった。


『みなさんこんばんは~、鈴宮あさみです』


:こんばんはー!

:かわいい!


オープニングから引っ張ることもなく、画面の中央に現れたのは、ライトブルーのパーカーを着た銀髪の少女。

耳の下で切り揃えられた髪と鮮やかな赤い瞳が、一瞬で視聴者の心を掴んだ。


「かわいいっ!」

絢音が目を輝かせて叫ぶ。


自らを鈴宮あさみと名乗った少女は、左手にスケッチブック、右手にペンを持っていた。


「ご覧のとおり、絵描きです。今回はVTuberとして初めての配信になります、よろしくお願いします」


「私を知ってる方とそうじゃない方もいますし、簡単に自己紹介するね。わたしはイラストレーターのあさみ、これまでいくつかの作品に関わっていて、イラストやキャラデザインを担当しました。そして、これが私の自慢の娘――鈴宮琉璃」


あさみは自分の立ち絵を画面の左側へ移し、右側にはこれまでの活動履歴が映し出される。その中には「狐の巫女と天気雨」と「鈴宮琉璃」の名前もあった。


「ママー!」

絢音は感動のあまり目に涙を浮かべ、即座にスーパーチャットを投げる。

隣のムムは声にびっくりして飛び跳ね、部屋の隅へ走り去った。



「赤スパありがとう。えっと……なになに、ママ大好き、いつもありがとね?」


:おお! 琉璃ちゃんだ!

:娘も見てるのかw


「瑠璃ちゃん、ちょっと何やってるのよ……でも、ありがと」

あさみは苦笑しつつも、予定どおりに話を続けた。


「えっと、どこまで話したっけ?そうそう、私はVTuberとしては、これまでの絵描き配信に加えて、ゲーム配信もちょっとやってみようかなと思います。まだ未定ですが、状況次第で変わります」


:ゲーム配信もやるのか!

:楽しみだ


(絢音がスパチャまで投げてるなら、俺も何かした方がいいかな……

その紹介を聞きながら、瞳はふと考える。

(まあ……俺にできることは、やっぱりゲームしかないよな)


「なあ、絢音」

「ん?」

絢音は画面を見つめたまま、軽く返事をする。

「先輩にプレゼントとして、VTuberのゲームを作るってどう思う?」

「ゲーム? どんな?」

興味津々に顔を向けてくる絢音。瞳は少し考えて答える。

「うーん……ホラーゲームとか、どうかな」

「晴香さんがホラー苦手かどうかは知らないけど……VTuberのホラーゲームって、どんな感じになるんだろ?」

「まだ全然決まってないよ。ピンと来ただけで、主人公をVにするかどうかすら、考えてないし」

「ふふっ、じゃあ楽しみにしてるね。瞳の新作」

「でも、ホラーっていいのか?まだ迷う」

「大丈夫、ほとんどのVTuberはホラーゲームをやったことあるし、きっとピッタリだと思うよ」



「そう言ってくれるなら安心した」


配信を見終え、絢音と別れた後、瞳はすぐに自分の部屋に戻り、パソコンの前に座った。



「今のところ決まってるのは、VTuberが登場して、その周りで何か不思議な出来事が起こるってことだな」


瞳はモニターを開き、文字を打ち込む。


主人公:VTuber(未定)

テーマ:心霊現象、不気味な日常


「導入は……主人公が新しい場所に引っ越してくるところから始めよう。そして周囲の雰囲気に違和感を覚え、奇妙な人や出来事に遭遇していく……」



プレイ時間


約1時間を想定


構成案


謎解き:1〜2箇所


驚かせイベント:3〜4箇所


隠し要素イースターエッグ:5箇所


「……うん、これなら形になりそうだ」

瞳はキーボードを叩く手が止まらない。


「最後までテンポよく、盛り上がりを切らさず……よし、イメージが湧いてきた!」

瞳の夜が、まだ終わってなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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