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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
七作目『配信事故』

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91/116

【晴香】この世界、まともなやつ一人もいなくない?

小野晴「はぁ〜……つかれた……」


配信を終えた少女が、ふぅっと息を吐く。


小野晴「……なんか、視線を感じる気がする」


「やめて、そういう怖いこと言うの!」

晴香が緊張気味に言いながら、キャラクターを操作して室内を見回す。

窓はすでにカーテンが閉められており、部屋には角のダンボールと、壁際の棚に置かれた──前の住人が残したらしい観葉植物。そして、さきほど配置したばかりの家具だけ。


小野晴「気のせい、かな……よし、ご飯買いに行こう」


伸びをしながら、少女は部屋を出る。




アパートを出ると、外はすでに夕暮れが終わりかけていた。


小野晴「この先にコンビニあったよね。今日はそこで済ませちゃお」


少女は細い路地を歩く。時間はまだそこまで遅くないはずなのに、人影はほとんどない。


???「ちょっといいか」


突然、横から手が伸びて小野晴の進路を塞ぐ。


「だ、誰っ!?」

思わず声を上げる晴香。画面に映ったのは──警帽をかぶった中年の警官だった。


「警察……さん?」

安堵の息が漏れる。


男の警官は無言のまま小野晴をじろじろと見つめ、ようやく口を開いた。


「見ない顔だな。最近引っ越してきたのか? それとも通りがかっただけか」

小野晴「え、あ……はい、引っ越してきたばかりで」


「女の子がこんな時間に出歩くもんじゃないぞ。この辺り、最近ちょっと物騒だからな」


警官は壁に貼られた張り紙を指で叩く。

そこには【不審者注意】と赤字で記されていた。


「不審者って……晴ちゃん、なんでこんなところ選んで引っ越してきたの?」

晴香がぼやく。さっきの“視線”の伏線が頭をよぎり、嫌な予感がこみ上げる。


「だから引っ越し前に周囲の環境チェックは必須なんだよ」

絢音が淡々と言う。


「たしかに……私も引っ越す前は周りの環境をちゃんと確認する派だ。みんなも引っ越すときは気をつけてね」

晴香が視聴者に呼びかける。


:はーい

:事前チェック大事

:てかこの警官の顔、怖すぎん? 不審者側じゃね?


「やめなって……まぁ、ちょっと怪しいのは分かるけど」

晴香は苦笑しつつも、画面を進める。

主人公は無事コンビニに到着し、弁当と飲み物をレジに置く。


「1200円になります。……袋は──どうされますか?」


青年の店員はそう言いながらも、差し出されたお金をすぐに受け取ろうとしない。

青年は無表情で小野晴を見つめている。


小野晴「……あの?」


「1200円、ちょうどですね」


ようやく金を受け取り、温めた弁当を渡す店員。

しかし、さっきの妙な間には一切触れず、淡々と接客を続ける。


「この店員もなんか怪しいね」

絢音がぼそりと言う。


「ていうか今のところ、まともなやつ誰もいないの?」

晴香が絶望したように言う。


:ほんとそれ

:これぞホラーゲーあるある

:正常な人間などいない世界


弁当を手にアパートへ戻ると、入り口で腰に手を当てた巻き髪の中年女性が待ち構えていた。


「やっと捕まえたわね。アンタが2-3号室の住人でしょ」


小野晴「え、はい……そうですけど」


「この数日、何の騒ぎよ! うるさくてたまんないんだけど。常識ってものないわけ?」


小野晴「えっ……でも、今日引っ越してきたばかりで……」


考えられるとすれば、引っ越しの作業音くらいだろうか。


「とにかく、静かにしなさいよ」


意外にも、それ以上は絡まず、捨て台詞だけ残して去っていった。


ようやく弁当をテーブルに置き──


小野晴「とりあえず、手を洗おう」


洗面所で顔を上げると、鏡の中にはどこか疲れた顔の少女が映る。

特に目の下の濃いクマが目立ち、少し不健康そうに見える。



「……配信者って、やっぱり夜更かし多いの?」

晴香がぽつりと呟く。

隣を見ると、絢音は「へへ」と苦笑いして頭をかく。


「やめ時が分かんなくて、気づいたら朝になっちゃった」


「もう、ちゃんと休みなよ……」

晴香が呆れつつも、どこか優しい声で言う。



:てえてえ

:休み大事

:わかる、やめ時は分からないよね




弁当を食べ終えた小野晴は、ベッドに横になる。


──画面に日付が表示される。【7月23日】


「今日はこれで終わり、って感じかな……」


晴香はそう思った瞬間、日付表示が一瞬だけバグったように点滅し、画面にノイズが走った。


「えっ? ちょ、なにこれ!?」


カメラが窓の方へ向く。カーテンの向こう──

人影。

大きな何かが、じっとこちらを見て立っている。


「だ、誰!? 幽霊……じゃないよね!?」


その影は何もせずただそこにじっとしている。

そして再びノイズが走り──日付が【7月24日】へと強制的に切り替わる。


「もう!意味わかんないんだけど!!!」

晴香がコントローラーを握りしめ、半ば叫ぶように画面に突っ込む。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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