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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
七作目『配信事故』

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90/116

【晴香】え?配信者はみんなそうなの?

ゲーム画面が切り替わり、真夏の太陽が照りつける空が映る。

そこからカメラがゆっくりと下へ移動し、灼けたアスファルトの道路が映し出された。


小野晴「ありがとうございます」


少女の声が響く。引っ越し作業を手伝ってくれた業者に礼を言っているようだ。

字幕には〈小野 晴〉という名前が表示されている。


「おお、ボイス付き!? びっくりした……主人公、ハルちゃんなんだ」

開幕からビビらせポイントが来るかと身構えていた晴香だったが、肩透かしのように突然の少女ボイスに心臓が跳ねた。


「この声……新人声優さんかな?」

聞き覚えのない声質に、晴香は少し首を傾げる。

同時に、以前 瞳から「声当ててみない?」と誘われたことを思い出す。もちろん“私は声優じゃないから”と丁重に断ったのだが。


「でも、声可愛いね」

隣の絢音が素直に感想を漏らす。


:確かに

:立ち絵も可愛い感じだな


全体的なグラフィックはアニメ寄りで、主人公の小野晴も清潔感のある美少女として描かれている。



「何かあれば、またいつでも呼んでくださいね」

業者が親切に言い残し、トラックは去っていく。

少女は汗を拭いながらアパートの入口へ向かった。


小野晴「2-3……っと」


アパートの階段を上がり、自分の部屋を見つける。引っ越しで扉が閉まりきっていなかったようだ。


「ん……? なんか視線、感じたような……」


振り返った晴が見たのは、閉まる扉の影だけだった。


:隣人かな?

:誰の視線なんだよこれ


この疑問は、そのまま晴香の胸にも突き刺さる。──これは間違いなくなんかの伏線だ。


部屋に入った小野晴。

まだ何もない空間に、〈本〉〈服〉などとラベルの貼られたダンボールが積まれている。

するとここで最初のミニゲーム、「部屋のレイアウト」が始まる。


家具やインテリアの種類は多くないが、色や模様を自由に選べ、配置も好きに決められるようだ。


「えっと、マイクは……紫にしようかな。琉璃ちゃん、ベッドって何色が良いと思う?」

「女の子なら、やっぱりピンクじゃない?」

「いいね、それで決まり!」


そんな風に二人でわいわい言いながら部屋作りを進め、ようやく配信部屋が完成する。

家具の設置を終えた主人公は、パソコンの前に座り込んだ。


小野晴「ネットも繋がったし……引っ越しでバタバタしてて、配信何日も空いちゃった。みんな元気にしてるかな……」


「琉璃ちゃんも、こういう不安ある? 私はまだ配信始めたばかりだから、よく分からなくて」

晴香が興味深そうに尋ねる。

「あるよ。あと、配信空けすぎると罪悪感も出てくる」

絢音は苦笑しながら続ける。

「だって、あれだけ応援してもらってるんだし、何か返さなきゃって思っちゃうんだよね」


:配信者の健康と幸せが一番の恩返しだよ

:そうそう、無理して配信する人もいるしな

:健康第一!


「そうなの?」

晴香は小首を傾げる。


:でもあさみちゃんはもっと配信していいよw

:確かにw

:あさみちゃんは心配いらないタイプ


「私は成熟した大人ですから、自己管理は完璧ですよ」

胸を張って自信満々に言う晴香。


「──よし、続きいこっか」

マウスをカチリとクリックし、ゲームは再び動き出す。


小野晴「みんなこんばんは〜、ハルです!」


画面内の銀髪美女が手を振りながら挨拶をする。


「本名そのままか! 適当すぎでしょ!」

自分も名前の浅海をもじっただけなのを完全に忘れている晴香に、横で絢音がクスッと視線を送る。


小野晴「ただいま〜! 引っ越し終わりました!」


:引っ越しお疲れ!

:おかえり〜

:久しぶりだな〜


視聴者と他愛もない話を交わし、しばらくして配信は締めに入る。


小野晴「じゃあ、今日の配信はここまで! みんな、おやすみ〜!」


コメント欄がクローズアップされる。


:おやすみ〜

:ゆっくり休んでね


──その瞬間、BGMがふっと途切れた。


:逃がさないよ


他のコメントと違い、その文字だけフォントが僅かに崩れ、血のような色で画面に滲む。

まるでコメントではなく、画面そのものに「刻まれた」かのように。



「ちょ、怖っ!! 誰よ、こんなコメントしたやつ!?」

晴香はビクッと肩を揺らし、こっそり絢音の様子を窺ってから、咳払いひとつで誤魔化して元の姿勢に戻る。


「こういうコメント、たまに見かけるよ。変なこと言うリスナーって一定数いるから」

経験豊富な絢音はあっさりと言う。


「えっ、現実にもいるの?」


:いるいる

:割と見る

:琉璃ちゃんの枠でも、たまに湧くよなw


「マジで!? 琉璃ちゃん、大丈夫なの?」

少し心配そうに見つめる晴香に、絢音はへらっと笑って肩をすくめる。

「大丈夫、実害ないから。──ほら、ゲームを続けましょう」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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