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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
【三周目】三作目『退院』
88/91

チャンネルで宣伝するよ

瞳はパソコンの画面に映る管理画面を見つめていた。これは、彼がずっと前に立ち上げたチャンネルだ。

ゲームが話題になって以来、SNSだけでなく、チャンネルの登録者数も急増している。

このチャンネルは主にゲームの宣伝を目的として運営されている。


現在アップされているのは、瞳が手がけた『エンドレス・エクスペディション』と『ネコ待ちカフェ』のプロモーションPV、それに加えていくつかのゲーム素材だ。

『エンドレス・エクスペディション』のときには素材不足に悩まされた経験から、『ネコ待ちカフェ』では制作過程の映像も一部公開しており、それが意外にも好評だった。

特に猫の素材は予想以上に注目され、再生回数の多さに瞳も驚いたほどだった。

チャンネルで一番再生されているのは、ロゴに使われた淡いクリーム色のシベリアンキャットの動画だ。


そして今、瞳は三作目となる新作ゲームの予告編を制作している。

今回はホラーゲームの予定で、これは彼が所属するゲーム研究会での研究テーマに合わせたものだ。

今学期、瞳はホラーゲームにおける恐怖の演出方法を研究することにしている。

視線誘導、ジャンプスケア、雰囲気作り、BGM……研究を進めるほどに、その奥深さに魅了されていった。


彼はゲームのいくつかの要素を、ネタバレにならない範囲で編集し、PVにした。


鋭い音楽が不安をあおる。

次々と白いロウソクに火が灯り、埃まみれの部屋を照らし出す。


【ここは……どこ……?】


割れた全身鏡には、顔のはっきりしない影が映り込む。


【私は……誰……?】


その後、いくつかのゲーム内シーンがフラッシュのように素早く切り替わり、

重い物を引きずるような音と共に画面が徐々に暗転し、

新作ゲームのタイトル『退院』が浮かび上がる。


「うん、こんなところかな」


ドット絵風のゲームだとすぐにバレないように、今回のPV制作では特に多くの追加グラフィックも描き下ろした。


「まだちょっと粗いけど……まあ練習としては悪くないかな」

本気でやるなら、専門のクリエイターに依頼する手もある。

だが、興味と学習を兼ねて、瞳は自分でやることを選んだ。


PVが完成した後、瞳はさらに恐怖演出の研究を続けることにした。

ゲーム内容をもう少し調整して、より怖いものに仕上げたい。


「よし、今日はこのゲームをやってみよう」


瞳は参考用として有名なホラーゲームをいくつか選んでおり、最も手っ取り早い方法は実際にプレイしてみることだった。

今日選んだのは、人形をテーマにしたホラーゲーム。


「和風の人形って独特の怖さがあるよね。特に、ドアの隙間や暗闇から無表情でこっちを見てくるときなんて……」

そうつぶやきながら、瞳は机の上のノートに真剣にメモを書き込んだ。


「この視線誘導と効果音、すごくいい。

プレイヤーの視線を一点に集中させて、そこに突然幽霊が現れる。この手法は確かに効くね」

思わず驚いてしまった瞳は、一息ついて再びプレイを続ける。


「うおっ!? 二段階で驚かせる手法か!最初に幽霊が出そうで出ない無害な演出で油断させて、その直後に振り向いたとき本物が出てくる……ホラー映画でもよく使われる技法だね。ちょっと古いけど、アレンジすればまだまだ使える」


壁に書かれた血文字【うしろにいるよ】を見て、瞳はキャラを後ろに振り向かせる。

廊下には何もおらず、ほっとして再び前を向いた瞬間、

画面いっぱいに飛び出してくるジャンプスケア。



「なるほど、確かに通らない場所に仕掛けても意味ないもんね」

瞳は顎に手を当て、思案しながらつぶやいた。

どんなに精巧な設計でも、プレイヤーに見られなければ意味がない。

プレイヤーが必ず通る場所に恐怖演出を仕掛けるのがポイント。


ゲームに集中していたそのとき、突然スマホの画面が光り、瞳はビクッと肩を跳ねさせた。


【見たよ】

それは絢音からのメッセージだった。


「見た? 何を?」

首をかしげながらスマホを手に取り、メッセージを確認する。


【PV見たよ。今度のはホラーゲームなの?】


「なーんだ、PVのことか。何かあったのかと思ったよ」

瞳はメッセージを返した。


【うん、来週公開する予定】

【やったー!私に……いや、やっぱりいいや】

【なにが?】

【今すぐやりたいけど、先に遊んじゃうのは他の人に悪いし、発売日まで待つよ】

【はは、わかった】

【楽しみだ】


瞳は微笑みを浮かべながら、ゲームを終了させた。


「やっぱり、もう少し調整しよう。

 こんなに楽しみにしてくれてる人がいるんだ。中途半端なものは出せないよな」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ★★★★★とレビュー、それにブックマークもどうぞ!

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