表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
六作目『異星の下:ラ=ライエの召喚』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/116

おっと、誰が来たっぽい

部室の教室で、瞳と絢音は並んで座り、最近プレイヤーたちが『異星の下:ラ=ライエの召喚』で見せたさまざまなプレイスタイルについて雑談していた。

「まさか、生贄を捧げなくても遊べるんだね」

絢音は少し感心したように言った。


「ちょっと極端だけど、全部テクノロジーに頼るっていうのも一つの手だよ」

瞳はうなずきながら感嘆する。以前見た配信者の一人は、純粋なテクノロジー路線──つまり完全に生贄を捧げないプレイスタイルを選んでいた。


「少なくとも安全そうに見えるわね」

絢音が評価する。

「そうだね。レベルアップなしだと異形化した身体に比べてかなり弱いけど、代わりに狂気や怪物化を心配する必要ない」


「でも、魔法が使えないのはちょっと痛いわね」

絢音はテクノロジーの武器が好きではあるが、派手でカッコいい呪文を捨てるのも惜しいと感じていた。

「後半になるとテクノロジーも十分強いんぞ。攻撃の射程は長いし、防衛施設も便利だし……そういえば、絢音も一度は狂気エンドを経験したことあるよね?」


「そうよ、最初の時は知らなくて、RPGをやる癖で、ずっとレベルアップしてたら……まさか怪物になるなんて」

絢音は思い出して、少し恨めしそうに言った。


「ははは」

瞳はそんな絢音の不満顔を見て、つい笑ってしまった。


「笑うなんてひどい!」

絢音は不満そうに、軽く拳で瞳の肩を小突く。

「ごめんごめん」

瞳は両手を上げて謝った。


「じゃあ次は罰として、瞳がプレイするところを私に見せてもらうわ」


「いいよ。でも俺がやると、ネタバレになっちゃわない?」

何せ作者だし、一般プレイヤーに知らないものをたくさん知ってた。

瞳は今のゲームの広がり方に満足していた。さまざまなプレイスタイルが花開き、たくさんのプレイヤーが自分のゲームを楽しんでいるのを見て、心の中でとても嬉しかった。

「たしかに、それなら……罰としては横で私のプレイを見守ることにしようかな」

絢音は少し考えてから、罰を変更した。

「それは罰か?」

「え?」

「いや、なんでもない。でも、一番大事な新入部員はまだ入ってこないんだよなぁ」

瞳はため息をついた。


「大丈夫!まだ新学期が始まったばかりだし。きっとチャンスあるよ」

絢音は、もともと瞳がこのゲームを作った動機を思い出し、慌てて話題を変えた。


「そうだ、そういえば……晴香先輩、VTuberを始める準備してるって知ってる?」



瞳は以前図書館で先輩に会ったとき、確かにそんな話を耳にしたことを思い出した。

だがなぜか、本能的に今はそれを口に出さない方がいいと感じた。

「そうなの? じゃあ、Vの皮は誰かに手伝ってもらうの? それとも浅海先輩自分で?」


「自分でやるみたいだよ。先輩、本当にすごいよね」

「さすがですね。デビューはいつってもう決めた?」


「ふふ、知りたい?」

絢音は口元を隠しながら、目を細めた。

「知りたい」

瞳は素直にうなずいた。


「仕方ないな……来週の土曜日だよ」

絢音はあっさりと答えを明かした。

「そんなに早いの?」

瞳は驚いて絢音を見上げた。


「うん。ずっと準備してきたみたいだし、実は前から配信もしてたんだって」

「先輩がチャンネル持ってるのは知ってたよ」

瞳は、以前ゲームのキャラデザインを頼むときに調べたことがあると説明した。

「じゃあ、その時は一緒に見ようよ」

絢音は笑顔で誘った。


「もちろん。絢音の家? それとも俺の家?」

「今回は瞳の家にしようかな。結衣に会いたくなってきちゃった」

「この前会ったばかりじゃないか」

瞳は思わずツッコんだ。

「それとこれとは別! それに瞳が誘わないから、結衣は陸上部に入ったじゃない」

絢音は唇を尖らせ、瞳に文句を言った。


「いやいや、結衣はもともと運動が好きだし、中学の頃から陸上部だったからね」

瞳は苦笑しながら答えた。

「分かってるよ。ただ言ってみただけ」

「まあ、その気があれば兼部だってできるし、 たまに遊びに来るとかいけそうじゃない?」

「いいね、それ。瞳から結衣に伝えてよ」

「分かった、言っておくよ」



ちょうど二人が雑談しているとき、突然ノックの音が響いた。


「失礼します、どなたかいらっしゃいますか?」

ドアの外から、どこか聞き覚えのある少女の声がした。瞳は首をかしげながら立ち上がり、ドアを開ける。


「はーい、少々お待ちください……」

「えっ? この声は……?」


ドアを開けた瞬間、瞳は目を見張った。

そこに立っていたのは、制服姿の茶髪の少女。


「やっぱり兄さんだ! 兄さんもこの部にいたんだね」

「……弥紗?」

瞳は少し驚きつつ、道をあけて弥紗を招き入れる。


「誰? あっ、ニナちゃん?」

声が女子だと気づいた絢音が気になって顔を出す。

「琉璃先輩!? どうしてここに?」


「そういえば、この前収録のとき紹介しそびれたんだよね」

瞳は思い出し、ここで補足することにした。

「彼女は西村弥紗。結衣の友達だよ」

「一番の大親友です!」

弥紗はすぐに訂正する。


「ふんっ、私は結衣と何度も一緒に寝泊まりしたお姉ちゃんだぞ」

なぜか対抗心を燃やした絢音が、腰に手を当てて言い放つ。


「な、なにそれっ!?」

弥紗はショックを受けて一歩引いた。


「ふふん、勝った」

絢音は得意げに笑う。


その様子に瞳は慌てて二人の間に割って入った。


「弥紗、今日はどうしてここに?」


「あ、そうだった。今日はこの部を見学しに来たんだ」

弥紗は自分の目的を思い出したように言う。

「でも……兄さんがいるなら、もうそのまま入部しちゃおうかな」


絢音はその言葉を聞いて、わずかに眉をひそめる。何かに気づいたようだが、何も言わなかった。


瞳は苦笑しながら答える。

「いや、まずは見学からだよ。もし気に入らなかったらどうするの?」

「むぅ……わかった。じゃあ、お兄ちゃん案内してもらえますか?」

「はいよ」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ★★★★★とレビュー、それにブックマークもどうぞ!

励みになりますのでよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ