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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
【三周目】三作目『退院』
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【浅海】え?二人はそういう関係……?

浅海晴香はイラストレーターであり、VTuber鈴宮琉璃の“ママ”でもある。

その中の人、清水絢音とは何度も顔を合わせており、今ではすっかり親しい仲になっていた。

だからこそ、絢音ちゃんの紹介となれば、簡単には断れない。

そう思いながら、実際に“彼”に会ってみた。


第一印象は悪くない、謙虚で優しそうな少年だった。

けれど、ギャルゲーを作りたいなんて……さすがに無謀すぎる。


「はは……確かに今の時代、ギャルゲーってあまり儲かるジャンルじゃないですよね」


目の前の制服姿の少年、長谷川瞳は、苦笑いを浮かべながら言った。


「それでも、なんでやろうと思ったの?」


「もちろん、好きだからです! それに、一度でいいから、ギャルゲーってジャンルに挑戦してみたくて」


長谷川くんの目はまっすぐで、その輝きは眩しすぎて、直視するのがつらいほどだった。


「あ、ちなみにギャルゲーって言っても、ちゃんと健全な内容です!えっちなやつとかは一切なしです!」


彼は焦りながらも、必死に誤解を解こうとしている様子が、逆に微笑ましい。


「若いっていいなあ……」


(……いやいや、自分だって19歳。ただの大学1年生。まだまだ若いはず。)

晴香は軽く自分の頬をつねって、気持ちを切り替えた。


「まあ、挑戦するのはいいことよ。でも先に言っておくけど、私は自分の技術を安売りするつもりはないわ」


「はい、もちろんです!」


「企画書を作ったって言ってたよね?見せてもらえる?」


「はい、どうぞ!」


晴香は企画書を受け取り、ページをめくりながら目を通していく。


「……けっこうしっかりしてるじゃない。なるほどね」


企画としては、甘い部分もある。けれど、相手は高校生。そのレベルでここまで詰めてあるのなら、むしろかなり優秀だ。


「この“有名VTuberを起用して話題性を狙う”ってところ。具体的には誰を使うと考えてるの?」


晴香が指さした企画書には、こう書かれていた:


『有名なVTuberを起用し、声優として参加してもらうことで話題性を高め、ファン層の獲得を目指す』


「もちろん、先生の“娘さん”鈴宮琉璃です。すでに事務所からも許可をもらっています」


「……えっ」


晴香は少し驚き、そして感心した。

何の準備もなく「コラボしてください」と無茶を言ってくる輩も少なくない中、彼はきちんと段取りを踏んでいた。


「なるほどね、大体わかったわ」


「それって……引き受けてくれるってことですか?」


緊張した面持ちで、瞳は彼女の答えを待つ。

晴香は頭の中で作業量を概算し、スマホのスケジュールを確認した。


「……引き受けるわ。面白そうな企画だし、これくらいならスケジュールに組み込める」


「ありがとうございますっ!」


満面の笑みを浮かべる瞳の姿に、思わず晴香もやわらかな笑みを返した。


ピローン。


「あ、すみません」


スマホに目を落とした瞳が顔を上げる。


「浅海先輩、絢音からメッセージが来て、用事が終わったから来たいって。大丈夫ですか?」


「絢音?もちろんいいよ」


数分後、カフェの扉が開き、私服姿の絢音が入ってきた。

制服から着替えて来たところを見るに、一度帰宅してからまた出直してきたのだろう。


「晴香先輩〜」

絢音は手を小さく振って、こっちに来た。

「絢音ちゃん、お久しぶり〜」


「お久しぶりです!」


「最近どう?ちゃんと寝てる?」


「バッチリ!最近は5時間くらい寝てるよ!」


「……それで足りてるの?もっと寝たほうがいいんじゃない?普通は8時間くらい寝ないとだめよ」

晴香は心配そうに眉を寄せた。


「ごめん、話ばっかりして。とりあえず座って何か頼もう?今日は私がおごるわ」


「いや、ここは僕に任せてください」


と、瞳が口を挟む。


「そうそう、今の瞳はお金持ちなんだから、遠慮しないで〜」

絢音は笑いながらそう言った。


「いや、別にお金持ちってほどじゃ……」

「またまた~」

二人の掛け合いに、晴香は少し驚いた。

(珍しいな。人のお金を使うなんて。それに呼び捨て……幼なじみって、そういう関係?)

晴香の知っている絢音は、できるだけ人に借りを作らない子だ。

だからこそ、思っていた以上に、この二人……仲が良さそうだ。


「私は紅茶で」


そう言って絢音は、晴香の隣ではなく向かいの席を選んで座った。


晴香は思わず目を丸くした。同性である自分ではなく、異性の長谷川くんの隣に座るなんて。

(えっ、この二人……そういう関係?)


「で、結果はどうだったの?」


絢音が尋ねると、瞳はにこやかに答える。


「おかげさまで、浅海先輩が協力してくれるって」


「本当に? よかった〜!」


絢音は嬉しそうに両手を上げ、晴香に向かってニコッと微笑んだ。


「では今回は、親子で初めての共同作業ですね」

その笑顔を見て、晴香の頬も自然と緩んでいた。

「えぇ、そうだね」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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