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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
六作目『異星の下:ラ=ライエの召喚』

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81/116

【弥紗】今日から、私はYちゃんだ!

サンドボックスゲームの一番面白い部分といえば新しいものを発見する“探索”だ。


外の世界を探検するだけじゃなく、新しい建物を建てたり、新機能を手に入れたりすること。

新しい要素が増えるたびに、弥紗はまるでおもちゃを手に入れた子供のように、嬉しくて仕方がなかった。


たとえば採掘をしていたとき、地下で突然錬金術師と出会った。赤い髪の綺麗な女の子で、ドット絵風でも凛々しく見えるキャラクターだった。

彼女のために錬金工房を建ててあげると、一番の収穫は広範囲を一度に吹き飛ばせる、しかも殺傷力も高い「錬金爆弾」が手に入ったことだった。


「これは便利だなぁ。ただ値段がちょっと高いけど」

弥紗は爆弾で地下を開けながら、大量の鉱石や土を回収していった。


:これが金の力か

:やっぱり爆弾の方が手で掘るより便利だな



「素材を集めれば自分でも合成できるけど、店で買った方が楽だしね」

コメントを眺めていた弥紗は、爆発範囲から離れるのを忘れてしまった。

爆弾が炸裂し、派手なエフェクトとともに、画面には「あなたは死亡しました」と真っ赤な文字が浮かび上がる。


「えっ……?」

現実を受け入れられず、弥紗は呆然とその赤文字を見つめていた。


:初デスおめ

:まさか自分の爆弾で死ぬとはな

:このゲームって復活できるの?


「そうだ、私のキャラ!」

最後のコメントでようやく我に返り、弥紗は慌てて画面を見つめた。


画面がモノクロに沈み、二つの選択肢が浮かび上がる。

【直接復活】(レベル-1) 【新しい肉体を使用】(SAN値-3)


「左は分かりやすいね。復活するけどレベルが下がる。でも右は何だろう?」


数時間の探索と戦闘で、ニナのレベルはすでに15になっていた。

このゲームは敵を倒すとRPGみたいに経験値を得られるが、レベルアップには祭壇での生贄が必要だった。


「ちょっと不吉だけど……試してみよう」

弥紗はしばらく迷ったあと、右の選択肢を押した。


すると画面の景色が歪み、渦に吸い込まれていく。


そして再び色が戻り、Yちゃんが自分の部屋のベッドから目を覚まし、家の中央に立っていた。


操作できる主人公が入れ替わり、Yちゃんになったのだ。


「えっ? 私、Yちゃんになったの?」

呆気に取られる弥紗。隣の結衣も信じられないという顔で弥紗を見ていた。


:二人が合体したのか?

:そういうエッなやつ?

:てえてえってこと?


「変なこと言わないで!私とYちゃんはそんな関係じゃない!」

弥紗怒ったあと、ハッと気づく。


「ちょっと待って、ニナは? ニナはどこ行ったの?」

弥紗はYちゃんを操作して、自分が死んだ場所へ向かった。


爆弾で開いた空洞の中には、ニナの遺体が静かに横たわっていた。

血やグロい描写はなく、まるで眠っているかのようだった。


遺体からこれまで集めた素材を回収すると、画面に選択肢が出る。

【ニナの体を回収します?】



「もちろん回収するに決まってるでしょ。ニナをここで放っておけるわけないじゃん」

回収を選ぶと、アイテム欄に無機質に『ニナ』の文字が表示された。

弥紗はため息をつき、そしてすぐに気持ちを切り替えた。


「よし、今日から私はYちゃんだ!」

弥紗は嬉しそうに叫ぶが、結衣は呆れたように友達を見つめる。


「え?」


「あっ」

二人は顔を見合わせ、弥紗は慌てて弁解した。

「ち、違うって!誤解だよ!そんな前から試してみたかったとか、そういうんじゃないから!」


:ニナちゃん?

:ついに本音が出ちゃったな


弥紗と結衣が言い合いながら、Yちゃんを操作して家の外に出ようとしたその時――。


玄関の影に、すらりとした女の姿が立っていた。

深紅のチャイナドレスに身を包み、白い肌に艶やかな黒髪。

長い煙管から紫煙を吐き出しながら、女はゆっくりと口角を吊り上げる。


見つめられた瞬間、弥紗の背筋を冷たい指で撫でられたような感覚が走った。


「こんにちは、Yちゃん。……いいえ、ニナと呼んだ方が正しいかしら?」


「だ、誰……?」

弥紗は息を呑み、主人公も同じ疑念を口にする。


「私? 私はナイア。新しく任命された祭司よ。よろしくね」


女は煙を吐き、笑みを深める。

その笑みは、美しいはずなのに、その奥に人ならぬ冷たさが潜んでいた。



:ナイア!?終わったなこれ

:やばい、まさか直接出てくるなんて!

:新しい祭司!?ってことはYちゃんの役職が奪われたってこと?


「えっ、どういうこと?ナイアって誰?」

クトゥルフ神話について詳しくない弥紗は、視聴者の解説を見て初めて知る。

“ナイアラトテップ”という邪神がいて、人間姿にも化け、千もの異なる顕現を持ち、人間を最も愛し、狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍する存在だということを。


「え、邪神!?そんなにやばいやつが!?……やっぱり右を選んだのは失敗だったかぁ……」

弥紗は後悔したが、このゲームはオートセーブ方式で、最後に自分でセーブしたデータがいつのものかも分からない。


巻き戻すということは、大量の進行データを失うことを意味する。

結局、弥紗はこのままプレイを続けるしかなかった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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