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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
【三周目】三作目『退院』
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久しぶり、君の部屋へ

食事を終えた瞳は、家族に一声かけてから、絢音の家へと向かった。


(なんだかこの道、久しぶりに歩く気がするな……)

慣れ親しんだ道を歩きながら、なぜか新鮮な気持ちになった

絢音の家はそれほど遠くなく、10分ほど歩くと「清水宅」と表札のかかった二階建ての一軒家に到着し、インターホンを押した。


「いらっしゃい」

絢音が満面の笑みでドアを開けた。

「仙海さんと由紀さんは?」

瞳は辺りを見回したが、絢音の両親の姿が見えず、つい尋ねた。

「お父さんは書斎で仕事中、お母さんは急用で出かけちゃった」

瞳は、絢音の父親がある会社の幹部で、母親は自分のビジネスをしていて、普段から忙しいことを知っていた。

「そうなんだ。じゃあ、ご飯はもう食べたの?」

「うん、食べたよ」

絢音は瞳の気遣いに目を細めて、嬉しそうに答えた。

「それならよかった」

瞳は絢音と一緒に2階の部屋へと上がった。

「おお、部屋、めっちゃ変わったじゃん!」

絢音の部屋に入ると、瞳は思わず感嘆の声を漏らした。


部屋に入ると、配信用の機材がずらりと並んでいた。

照明、マイク、カメラなどが揃い、以前とはまるで違っていた。

変わらないのは、たくさんのゲームグッズやポスター。

ぱっと見は男の子の趣味のようだった。

しかし、ベッドの上には等身大のサメの抱き枕が置いてあり、やはり女の子の部屋だと感じた。

(それに、なんだかいい匂いがする……前はこんな香りしたっけ?)

部屋にはほのかに香水の香りが漂っており、瞳の心拍が少し上がった。


「こうして見ると、本当にプロっぽいね。さすが職業配信者、機材がなんかすごそう」

気を紛らわせるように話題を変える。

(機材のことはよく分からないけど……とにかく、すごい)


「えへへ、なんだかちょっと照れるな」

「おっ!ムム、ここにいたのか」


瞳はベッドの端で寝ていた金色のシベリアンキャット、絢音の飼い猫ムムを見つけ、目を輝かせて撫でまくる。

瞳の家では猫が飼えないため、絢音の家に来るのは猫と触れ合える貴重な機会だった。


「ムム、やっぱり君はかわいいなぁ。この触り心地、最高だよ」

最初はだらんと撫でられていたムムだったが、やがてうるさくなったのか、一声鳴いてから別の場所へ移動してしまった。


「あぁ〜……」

名残惜しそうにムムを見送った瞳に、絢音は思わずに突っ込んだ。

「人のネコを撫ですぎ」


「あはは」

我に返った瞳は頭を撫でて、話を変えた。

「そうだ、手伝ってほしいって言ってたよね?何をすればいいの?」

「うん、ちょっと待ってね」

絢音はパソコンでファイルを開き、椅子を譲った。

「どうぞ」

「じゃあ、拝見させてもらうか」

ちょっと大袈裟で、瞳は椅子に座り、テキストファイルを読み始めたが、だんだんと見覚えのある内容に驚き始めた。

「ふむふむ、え、これ……俺のゲーム!?」

「そうだよ、だからこそ、開発者の瞳が一番詳しいでしょ」

絢音は笑って答えた。


そう、これは瞳が初めて制作したゲーム『エンドレス・エクスペディション』の攻略だった。

中にどの組み合わせが効果的か、逆にどれが相性が悪くて弱くなるか、などが丁寧にまとめられていた。


「うーん……正直、かなり完成度高いと思うよ」

瞳は最初、絢音の話を聞いてもっと酷い内容を想像していたが、予想に反して、かなり内容が充実していて説得力もあった。

「本当?よかった……」

開発者本人からの高評価に、絢音は安心した様子だった。

「改善したいなら、項目の順番を整理したり、タイトルをつけたりするくらいかな」

瞳は少し考えて、新しいファイルを開いた。

「まずはゲームの簡単な紹介から始めよう。知らない人もいるだろうし」

「うんうん」

絢音は真剣な表情で話を聞いていた。

「それからゲーム進行中のイベント、ショップ、休憩ポイント、敵キャラ……おすすめのショップアイテムやイベントを紹介するといいね」

「なるほどね」

「最後に、さっきの組み合わせをまとめて載せれば、だいたい完成かな」

「ねえ瞳、自分のおすすめのスキル組み合わせってある?」

絢音が興味津々で尋ねた。

「俺?俺は基本的に脳筋回復型が好きだよ、とにかくゴリ押しで回復しながら殴る、って感じ」

「えっ、ちょっと意外かも」

「テストのために何回もプレイしたからね。後半はもう頭をつかいたくないって気持ちが強くなっちゃって」

瞳は苦笑いしながら説明した。

「でも、テスト中にいくつかいい組み合わせも見つけたよ」

瞳はテスト中に役立ったいくつかの組み合わせを絢音に紹介した。


「ありがとう、これでなんとか間に合いそう」

絢音は、瞳が入力したドキュメントの構成を見ながら感謝の言葉を述べた。

「こっちこそ感謝したいよ。あの時、絢音がいなかったら、このゲームは世の光を当てなかったかもしれないし」

「そんなことないよ。こんなに面白いゲームなら、きっといつか日の目を見る。時間の問題だけよ」

絢音は瞳を励ましつつ、話題を変えた。

「よし、それじゃあ、もう一回始めるから、横で軍師してね!」

「任せろ!」

瞳は笑顔で答えた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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