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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
【三周目】三作目『退院』
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学校っぽいの来た!

「えー、そろそろ文化祭です」

先生は教壇に立ち、クラス全員にルールブックを配りながら、一つ咳をして発表した。

「みんなで、クラスで何をやるか話し合ってみよう。意見のある人は手を挙げて。委員長、あなたが進行して」

「はい」

ショートヘアで眼鏡をかけた少女が教壇に上がり、進行を始めた。

クラス内はざわざわと小声で話し合いが始まる。


「長谷川、何かやりたいことある?」

隣の佐藤が顔をこちらに向けて、こっそり聞いてきた。

「特にないけど……佐藤は?」

瞳は首を横に振った。実はかなり前から、ゲーム研究部の高野先輩から文化祭のおおよその日程は聞いていた。

ゲーム研究部は伝統に従って部誌を作ることに決めている。

瞳が出そうとしているテーマは「驚かせる方法」。多くのアイディアは『退院』というゲームに応用されている。

評判もいい感じで、ネットで調べても好評価ばかりだった。


「ふふん、もちろんメイド喫茶だよ」

佐藤はニヤリと言った。

「俺の調査によると、クラス女子の見た目は学年平均より明らかに上。絶対に人気になるぞ」

「でも、そんな提案したら、さらに嫌われたりしない?」

「バカもん!怖がって何もしないなら、青春できるないでしょ!」

佐藤は右拳を握り、情熱的に語った。

「そういう名言、こんな場面で言わないで欲しいなぁ……」


誰かが手を挙げるのを見て、委員長がそのまま指名した。

「お化け屋敷をやりたいです」

委員長は黒板に「お化け屋敷」と書き込む。誰かが口火を切ると、皆次々と手を挙げ始めた。


「やっぱり演劇がいい」

「ステージで歌ってみたい!」


委員長はそれぞれの提案を黒板に書いていく。


「はい、はい!」

佐藤が右手を高く挙げ、ぶんぶん振っている。

「……佐藤」

委員長は少し渋々としながらも、名前を呼んだ。

佐藤は立ち上がって大きな声で言った。

「メイド喫茶がやりたいです!」

「うおおお、メイド!メイド!」

一部の男子たちが盛り上がる。

「ちょっと面白そうかも」

「メイド服、かわいいし」

女子たちの反応も意外と悪くない。


佐藤の提案は、思いがけず好評だった。

「じゃあ、男子はどうするの?」

一人の女子が疑問を口にした。


佐藤は少し考えてから答えた。

「男子はキッチンがメインとか、それとも執事の格好する?」

「それいいと思う!」

「クラスの男子の執事姿、ちょっと見てみたいかも」


先生は皆の反応を見て、あっさり決定を下した。

「じゃあ、メイド喫茶に決まりだな。佐藤、君が……あ、君は野球部だったね。他に責任者やりたい人は?」

本当は提案者の佐藤に任せたかったが、野球部の忙しさを知っている先生は、言い直した。


「やってみたいです」


先ほど質問していた女子が手を挙げ、自ら立候補した。他に反対意見もなく、すんなり責任者に決定。


「じゃあ、田中さんにお願いしよう」


瞳はその女子の名前が田中礼嘉たなかれいかで、絢音と仲の良いグループに属し、普段から明るくて社交的な性格だと知っていた。


責任者が決まると、物事はどんどん進んでいく。


「じゃあ、衣装はどうする?」

「レンタルできるお店を知ってるから、聞いてみるよ」

「飲み物や料理は?」

「うちは飲食店やってるから、簡単なサンドイッチとデザートなら、みんなすぐ覚えられると思う」


必要なものがある程度決まったら、細かいことは自習時間に話し合うことになった。


「瞳、部誌の記事もう書き終わった?」

二人は下校中の道を並んで歩きながら話す。

「うん、大体は終わったよ。あとはちょっとした修正くらい。絢音は?」

「書くゲームは決めた。今またプレイし直してるところ。今んとこ、七、いや八割くらいかな」

「間に合うの?文化祭はまだ一ヶ月先だけど、締切は来週だよ?」

瞳は少し心配そうに尋ねた。


「ふっ、私のこと、まだわかってないみたいだね?私には奥の手があるのよ」

絢音は自信満々に言った。

「奥の手?」

瞳が首を傾げたその時、絢音はパチンと手を合わせ、片目をつぶって言った。

「瞳さま、助けて〜!」

「……それが奥の手?」

「瞳は呆れたようにため息をついて、絢音を見つめた。

「ゲームやる自体は簡単だけど、書く内容が全然思いつかないんだもん!」

「わかったよ。どうやって手伝えばいい?」

「内容を見て、他に何が書けそうか一緒に考えて〜」

「わかった。じゃあ、ご飯食べたらそっち行くね」

「助かる!必ずお礼するから」

「いいよいいよ、別にお礼なくでも」

瞳は手を振って、そんなに大したことじゃないし。

「ふーん、メイド服でのお礼でも?」

絢音は小悪魔的な笑えで瞳を問いかける。

「くっ、それは卑怯じゃないか」

「ははは、瞳よ、卑怯とは言うまいな」


わちゃわちゃして、二人はいったん別れた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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