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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
六作目『異星の下:ラ=ライエの召喚』

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部長さんはなにがするそうです

放課後の部室。

絢音は高野先輩が残していったゲーム機で遊んでいて、瞳はそんな彼女をぼんやりと眺めていた。


「……なに? 部長。そんなにじっと見られると、ちょっと恥ずかしいんだけど」

コントローラーを置いた絢音は、頬を赤らめながら問いかけてきた。



高校二年になってから、田中先輩と高野先輩は受験勉強のため、ほとんど部室に姿を見せなくなった。

自然と部長の座は瞳のものになり――。


「新入部員をどうやって集めようか、って考えてただけだよ」

眉間に皺を寄せ、瞳は小さく答える。


「前は、もっと人がいたんだけどな」


「それって……ほとんどは絢音目当てでしょ?」

絢音が入部してから、彼女にちょっかいを出そうと考えた男子が何人かやって来た。

でも、絢音が誰に対しても素っ気なく、最近では瞳と一緒の時しか部室に来ないと知ると――。

「チャンスがない」と諦めた彼らは、次々に退部していった。


「でもさ、瞳目当てで入ってきた女の子もいたと思うよ?」

「ははっ、まさか」

瞳は苦笑して肩をすくめた。自分はただの普通の男子で、アイドルでもなんでもない。

彼を理由に入部するなんて、あり得るはずがない。

結局、馴染めずに辞めていった人がほとんどだった

しかも隣には本格的なゲーマーが集まるeスポーツ部がある。

研究寄りのこの部活はどうしても影が薄く、長続きする部員は少なかった。


――結果、今も部室に通うのは、瞳と絢音の二人だけ。


そんな瞳の態度に、絢音はむっとして頬を膨らませた。

「私は本気で言ってるの」

もし自分がわざと「瞳と仲良し」なところを見せていなければ、瞳なんて、あっという間に女の子たちに囲まれていたはずだ。


「宣伝しないとダメだね」

「チラシでも配るか?」

「うーん……効果は微妙そう」

「じゃあ結衣ちゃんに頼んでみる? あの子も停雲に入ったんでしょ?」

絢音は瞳の妹の名前を思い浮かべて口にする。

「結衣はせいぜい幽霊部員だろうな。それに、あいつにはあいつのやりたいことがあるだろ」

「それもそうね」


少し考え込んだ後、瞳は探るように口を開いた。

「……もし俺が新しいゲームを作って、その制作過程を本にまとめたら。そうすれば、新入部員を呼び込めると思うか?」

「ゲーム作りに興味ある人なら、絶対に食いつくよ。だって“瞳中の景”先生の本だもん」

「そうか……」

「でもね、それって本当にいいの? 瞳って、人前に出るのあんまり好きじゃないでしょ。そうしたら、瞳があの“瞳中の景”ってバレちゃうよ?」

「それは確かに問題だけど……俺も高野先輩みたいに、この部に何かを残したいんだ」

高野先輩は、部室にたくさんのゲーム機を置いていってくれた。修理マニュアルまで、丁寧に残して――。


瞳の横顔を見つめながら、絢音はふっと笑みを浮かべる。

そして、ずっと気になっていたことを思い出したように問いかけた。


「……瞳がそう決めたなら、私は応援するよ。でも、新しいゲームって……もう構想あるの?」

「少しだけな」

「本当に?どんなゲーム?」

絢音が少し身を乗り出すように問いかける。


「今のところ決まっているのは、ドット絵風のサンドボックスゲームかな」

瞳は腕を組みながら、どこか楽しそうに目を細めた。


「サンドボックス……また新しいジャンルに挑戦するんだね」

絢音は感心しながらも、呆れたように肩をすくめる。


「挑戦ってのもあるけど……サンドボックスは、作者のバランス感覚がすごく試されるんだ。だから、自分を鍛えるためにもいいと思ってさ」

「……それ、新入生を呼ぶためのゲームじゃなかったの?」

絢音はすかさず突っ込み、頬をふくらませる。幼なじみのこの人は、ほんとにいつも自分の成長ばかり考えている。


「まあ、両立できるだろう」

瞳は楽しげに笑って返す。


「でも、“バランス感覚が試される”って……具体的にはどのへん?」

「自由度と制限さ、絢音、サンドボックスゲームってやったことある?」

「あるよ」

絢音は指で一本ずつ数えながら数えた。

「世界がぜんぶ四角いブロックのやつとか、宇宙でサバイバルしながら飛んでいくやつとか……あと、掘ったり、モンスター倒したりして、最後に魔王と戦うやつ!」


「ああ、その最後のタイプに近いかな。俺の構想も、最終的な目標は“魔王を倒す”ことなんだ」

「でもそれだと、すごく時間かかっちゃわない?」

「……うん、確かに。でもまずは簡易的な体験版を作ってみるよ。もしプレイ時間がかかりすぎるようなら、そのときは調整を考える」


「なるほどね……じゃあ最後に聞くけど、世界観はどんな感じになるの?魔王あるから、ファンタジーなのか?」

絢音はわくわくしたように目を輝かせる。


瞳はしばし沈黙し、視線を宙に漂わせた。

そして、ふっと小さく呟く。


「そうだね……絢音、“クトゥルフ神話”って、聞いたことある?」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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