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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
番外編『狐の巫女』DLC

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74/116

【晴香】狼さんは恋をしたい

「最初は誰から始めるべきかな」

晴香は苦悩の表情を浮かべながら考え込む。

狼狽姉妹はどちらも大好きなキャラクターで、誰から攻略するか本当に迷っていた。


「おっ、直接シナリオから始められるのか」

ゲームは一度シナリオを見たプレイヤーのために、新ルートの分岐点から直接飛べる親切な仕様だった。


「じゃあ、まずはお姉さんからにしよう」

最終的に晴香は年齢順に体験することを決めた。


そして、物語は幕を開ける。

シナリオの時系列は山神を打ち倒した後、しかし白禾を選ばなかった世界線。


街をぶらついていた主人公、宮崎祐真は意外な人物と出会う。


祐真「灰さん?」


目の前には灰色のジャケットを着た若い女性が立っていた。

右手に飲み物を提げ、欄干にもたれかかりながら人混みを眺めて何かを考えているようだった。


灰「ん?ああ、お前か」

祐真「今日は雪さんと一緒じゃないんですね?」

灰「雪は今日は家で休んでる。それに、オレたちだっていつも一緒ってわけじゃない」


「そういえば、前にプレイしたときは二人が離れているシーンなかった気がするけど」

主人公は何も言わなかったが、プレイヤーの晴香がついツッコミを入れる。


:確かに

:あの二人ってセットじゃなかったの?


祐真「じゃあ灰さん、今は誰かを待ってるんですか?」

灰「は?」

祐真「あ、違いました?」

灰「違う。ただ……この街を観察してただけだ。山神さまは静まったけど、怪異の騒ぎが終わったわけじゃないからな」

祐真「なるほど」

灰「どうした?言いたいことがあるなら言え」

祐真「いえいえ、そうだ、俺も一緒に見てもいいですか?」

灰「ふん、好きにしろ」


祐真も灰の隣の欄干にもたれ、人混みを見下ろす。

しばらくそうして眺めたあと、灰は体を起こした。


灰「そろそろ雪が起きる時間だ。それじゃあな」

祐真「また今度会いましょう」

灰「ふん……じゃあな」


「この灰さん、もしかしてツンデレ……?」

晴香は何かを察したようだった。


:そんな感じある

:ツンデレお姉さん、最高すぎるだろ


二人が初めて二人きりで過ごした瞬間。

ここから二人の縁が少しずつ結ばれていく。


祐真が街角でタピオカミルクティーを飲んでいると、颯爽とした人影が現れる。


灰「またお前か」

祐真「灰さん、こんにちは」

灰「ん?それは何を飲んでる?」


灰は祐真の手の飲み物をじっと見つめ、興味深そうにしている。


祐真「タピオカミルクティーですよ。結構美味しいです」

灰「そうか。どこで買った?」

祐真が近くの店を指差すと、灰はすぐに駆け足で行って一杯買い、戻ってきた。


右手には既にストローを刺したカップ。

迷うことなく一口飲む。


灰「悪くないな。雪も気に入りそうだ」

祐真「妹さんのためにですか?仲良しですね」

灰「当たり前だ」


灰は鼻を鳴らしながらも、当然といった笑みを浮かべた。


「これが“てぇてぇ”ってやつかぁ……」

晴香は感動してつぶやいた。


灰との出会いを重ねるたび、二人の関係は少しずつ近づいていく。

一緒に遊びに出かけることすら約束するようになった。


普段は履かないロングスカートに着替えた灰は、まるで別人のようで――。

一日遊んだ後、公園で休んでいるとき。


「かわいい……」

ストーリーを追いながら、晴香は颯爽とした一面と可愛らしい一面を併せ持つ灰狼のお姉さんに惹かれていた。


灰「祐真」

祐真「どうしました?灰さん」


灰「……」

灰は顔を赤らめ、しばらく迷った後、苛立つように頭を振った。


祐真「灰さん?」

灰「あああああ!もう面倒くさい!」


灰は叫び声を上げ、祐真の胸ぐらを掴んでそのまま口づけを交わす。


灰「好きだ!祐真!」

祐真「……僕もです。灰さん、好きですよ」


灰は祐真を睨みつける。


灰「バカ、こんな時まで“灰さん”呼びかよ!」

祐真「……灰」


灰は祐真の手を握り、眩しい笑顔を見せた。


灰「あぁ!行こう、デートはまだこれからだぞ!」


~FIN~



「えっ?これで終わり?」

告白が成功した余韻に浸っていた晴香は、画面に映る~FIN~に思わず声を上げる。


「その後のいちゃいちゃは?これでおしまい?」


:もっと見たい

:足りないだ!もっと見せろ!

:クリアおめでとう!


「ありがとう!時間もちょうどいいし、ストーリーもここで一区切りだから、今日はここまでにしよっか」


:ええ~

:続きやらないの?


「これ以上やったら夜更かしになっちゃうし、今日は平日だよ。続きはまた今度、雪のルートをやろうね。おやすみ~またね」

晴香は時間を見て、明日も大学あるから、夜更かしは無理。


:おやすみなさい~

:またね~

:おやすみ~

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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