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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
五作目『灰燼から燃え上がる天使の歌』

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【弥紗】君の記憶になれたら


「帰ったか」


青年は淡々と声をかけ、小さな女の子も嬉しそうに駆け寄った。


「おかえり〜」


ムウはその言葉を聞いて、一瞬足を止めてから、笑顔で答えた。


「うん、ただいま」


リンとしばらく遊んだあと、まだ幼いせいか、夜になるとすぐに眠くなってしまい、中年の女性が彼女を寝かしつけに連れていった。


「リンがあんなに楽しそうにしてるの、久しぶりに見たわ。ありがとう」


「いえ、私も楽しかったです」


そのときムウは、外で見つけてきたぬいぐるみのクマを部屋に持ってきた。


「これは……」


「こんなに綺麗な状態で残ってるなんて思わなかった。まるであの子のために残っていたみたいだね」


「……ありがとう」


「ここは客間よ。まさかまた使うことになるなんてね。もう掃除してあるから、ゆっくり休んでね」


女性は優しく言った。


「ありがとうございます」


部屋に入ると、中には机と椅子とベッドがあるだけだった。


ムウはギターケースを机の上に置き、黒猫はすでにベッドのそばで丸くなっていた。


「こんなに賑やかなの、久しぶり……なんかいいね」


ミュウは優しい笑みを浮かべながらも、その瞳にはどこか寂しさが滲んでいた。


「そうだよね。ムウ以外には、彼女の姿が見えないんだ」


弥紗はそのことを思い出し、また涙がこみ上げてきそうになった。

外はあんなに賑やかなのに、自分には関係のない世界みたいで――そういう時、孤独は余計に際立つ。


:作者、マジでプレイヤーを泣かせる気満々だな

:あまりにも切なすぎる


「大丈夫。俺がいるし、クロだっているよ」

ムウはまずは自分、そしてベッドの上の黒猫を指差して、そう言った。

「クロって、名前テキトーすぎない?」


ミュウは手を伸ばしてベッドの上の黒猫を撫でながら、その瞳の寂しさが少しずつ和らぎ、やがて笑顔になった。


「さあ、もう遅いから、早めに休もう」


翌日、青年は約束通りムウのバイクを修理してくれた。

ムウはエンジンをかけ、問題がないことを確認してからお礼を言った。


「ありがとう。本当に助かった」


「うん」


誕生日パーティーは昼に行われた。


「わあっ!今日なんでこんなに美味しそうなものがいっぱいあるの!?」


リンは目を輝かせて、いつもより豪華な食卓を見つめた。


「もちろん、今日はリンの誕生日だからね」


青年は優しくリンの頭を撫でた。


「さあ、お願いごとをしよう。言っちゃダメだよ、言ったら叶わなくなっちゃうから」


女性は、ムウが用意したフルーツ缶に火のついたロウソクを一本立てた。


「うんっ!」


リンは大きく頷き、目を閉じて願い事をし、勢いよくロウソクの火を吹き消した。


「甘〜い!」


フルーツ缶を食べたリンは、目を細めて嬉しそうに笑った。


「お兄ちゃんたちも食べて!」


「大丈夫、お兄ちゃんは他のもあるから。これはリンのだよ」


女の子は首を振り、しっかりと主張した。


「みんなで食べようよ」


「はいはい」


皆は少しずつ分けて、残りは全部リンに譲った。


食べ終えた後――


「じゃあ、次はお兄ちゃんたちからのプレゼントだよ」


青年はリンに、そっとぬいぐるみのクマを手渡した。


「わー!クマさんだ〜!」

リンは嬉しそうに抱きしめて離さなかった。


そしてムウはギターを取り出した。


「わあ、これなに?」


リンはクマを抱きながら、不思議そうに尋ねた。


「これはギターっていう楽器なんだよ」


ムウは音を調整しながら、笑って言った。


「この曲の名前は『スターダスト・カーニバル』」


「なるほど、合奏シーンはここにあったのか」


弥紗はようやく理解した。ムウはギターを弾き始め、

ミュウも相手に声が届くかどうかなど気にせず、ただ自分の想いを込めて、そっと歌い始めた。


「今回ミスしなくてよかった……この感動シーンで音外したら耐えられないわ」


演奏が終わると、リンは嬉しそうに飛び跳ね、そばにいた青年と女性も拍手を送った。

ムウはその後、以前に練習した何曲かも披露し、しばらくしてから別れの挨拶をした。


「もう行っちゃうの?せめて今夜は泊まって、もう一度お礼させて」


「お兄ちゃん、残ってくれる?」


リンはムウの手をぎゅっと握り、懇願した。


「……わかった。一晩だけね」


ムウは少女の瞳を見て、どうしても断れなかった。


「やったー!」


返事をもらったリンは飛び跳ねて喜び、また黒猫のところへ走っていった。


「でもね、リンの言う通り……もし良かったら、ずっといてもいいんだよ」


【うん、ここに残る】【いや、まだ行かなきゃいけない場所がある】


「これは……すごく重要な選択肢って感じだよね」


弥紗は画面の選択肢を見つめ、悩み始めた。


:左選ぶとそのままエンディングっぽいな

:残るべき?どうする?


「決めた。やっぱり右を選ぼう」


弥紗は物語を先に進める決断をした。


「そっか……わかった。でも、いつでも帰ってきてね」


自由探索が終わり、その夜。


「本当に行くの?」


ミュウはそう問いかけた。


「もちろん、約束したでしょ?」


「でも……うん、ありがとう」


翌朝、出発の準備をしていたムウは、青年に呼び止められた。

リンが笑顔で、クレヨンで描かれた絵を差し出してきた。


「これ、あげる」


「ありがとう……えっ?」


ムウは手に取った絵を見つめ、ミュウも興味津々に覗き込んだが、言葉を失った。

絵には、緑のコートを着たムウ、青年、中年の女性、そしてリン自身が描かれていた。


……それから、もうひとり。

白いワンピースを着た金髪の少女が、そこにいた。


「この子は……?」


ムウは金髪の少女を指さして尋ねた。


「このとき、お兄ちゃんの後ろにいるような気がしたの。

ママが言ってた、もしかしたらそれは天使かもしれないって」


「そうなんだ……ありがとう。じゃあ、行ってくるね」


「バイバイ〜!」


ムウは絵を大事に折りたたみ、胸ポケットにしまうと、バイクにまたがって出発した。


バイクを走らせながら、後ろに座る少女に声をかけた。


「見た?君の気持ち、ちゃんと伝わってたよ、天使さん」


「や、やだ……からかわないでよ」


ミュウは顔を真っ赤にしながらも、幸せそうに微笑んだ。


「……私、ちゃんと誰かの思い出になれたんだ」


その言葉に、ムウはただ黙って頷いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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