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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
五作目『灰燼から燃え上がる天使の歌』

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夕陽より、あなたが綺麗です

「次、どこ行こうか?」


絢音の問いかけに、瞳の頭には昨日調べた大量のデートスポットが浮かんでいた。


水族館、ショッピングモール……定番はたくさんあるけど、なんだかピンとこなかった。


(うーん、どれもありで、なんか違うんだよな……)




「ゲーム漁りに行かない?」


最後にそう言って、瞳は笑った。

(そうだね、これが一番我々らしいものだ)


「やったー!ちょうどネタも欲しかったし、一緒に見に行こ!」

絢音は嬉しそうに拳をあげた。


「まずは中古ショップから?」


「賛成~」



自然と手を繋いだまま、二人はいつもの中古ゲームショップへ向かった。




「なんか、レトロゲームをやりたいなぁ」



「はは、おじさんの影響かな?」


「そうかも。それに昔の名作、やらないともったいないじゃない?」


「確かに」


瞳は軽く頷いた。




昔のゲームは技術的に制限が多くて、今みたいなグラフィックはなかったけど、


そのぶん創意工夫にあふれてて、アイデアで勝負していた。


それが瞳にはすごく刺激になったし、今でも通用する名作も多い。




店に入ると、中には大量のゲームが積まれていた。

二人は手を離し、それぞれ自由にゲーム棚を見て回り始めた。



絢音は目をキラキラさせながら、夢中でゲームを探していた。


「見て見て、これ! ゲームのロゴ、有名なジュースブランドじゃん!」


絢音が一本のソフトを手に取り、パッケージを見せてきた。


「それ、知ってる。あのジュースの会社が宣伝用に作った高難易度ゲームだよ」


瞳は思い出して、紹介する。


「高難易度?……燃えてきた!」



絢音は目を輝かせた。高難易度ゲームは彼女の得意分野だし、配信でも盛り上がるジャンル。


「初期のゲームって本数少ないから、難易度でプレイ時間稼いでたんだよね」


「買います!」


「判断がはやい!」


「だって、ゲームを買いに来たんだからね」


「……まあ、確かに」




「これなんてどう?ホラーアクションの初代版。後のシリーズはやってたよね?」


「うわっ、ありがとう! それずっと探してたやつ! 初代は移植されてないから、超レアなんだよね」


「ってことは……」


「もちろん買う!」




瞳も棚を見渡した。この店は品揃えがよく、古いゲームもちゃんと並んでいる。

彼はストーリー性のあるゲームが好きで、ホラーでも推理でも、じっくりと物語を読むのが性に合っていた。


アクションは好きだけど、得意とは言えない。シューティングは苦手で、3D酔いもするから、あきらめた。

だから、瞳が作るゲームは大体ストーリー重視で、操作の難易度はあまり高くない。



「おっ、これちょっと気になるな」

瞳は一つのゲームを取り出した。


「どれどれ〜?」


絢音が身を乗り出してきた、興味津々で見る。




「これ、昔の猿を捕まえるゲーム。結構有名だけど……俺、本体持ってないんだよね」


「え、あ、それ私持ってるよ。興味あるなら、今度うちで一緒にやろ?」


絢音はにっこり笑ってそう言った。




「……じゃあ、お願いしていい?」


「もちろん」


「じゃあ、約束ね」


「うん、やくそく~」


瞳はゲームを棚に戻し、次の約束を交わした。




いくつかソフトを選んだあと、瞳は時計を見ると、もう何時間も経っていた。


「え?もうこんな時間?」

絢音はびっくりした。


「あっという間だったね」


「ほんとそれ。こういう店来ると、時間がすぐ飛ぶよね」


「そろそろ、帰る?」



絢音は少し名残惜しそうに答えた。


「うん、帰りましょう」




店を出ると、夕焼けが街をやさしく染めていた。


ビルのすき間から射すオレンジの光が、二人の影を長く伸ばしている。




それぞれ買ったゲームを手に持ち、空いているほうの手は、ぎゅっと繋がれたままだった。




「今日はほんとに楽しかった、ありがとう」


「俺のほうこそ。すごく楽しかった」




別れ道に差しかかり、二人は手をゆっくりと離した。




「ねぇ……」


絢音が何か言いたげに口を開いたが、すぐに閉じてしまう。


両手を背中に回し、目線をそらしながら、少し迷っている様子だった。




「瞳!」


突然、絢音が声を張り上げた。




「ん?」


瞳が顔を向けようとした瞬間――




右頬に、ふわっと柔らかい感触が伝わってきた。




「えっ……?」


驚いて顔を上げると、絢音の頬は夕陽よりも真っ赤に染まっていた。


「これはお礼ってことで。……じゃあね、また明日!」


絢音は満面の笑みでそう言い残すと、くるりと背を向けて走り去っていった。




その場に立ち尽くした瞳は、そっと右頬に手を当てたまま、空を見上げた。

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