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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
五作目『灰燼から燃え上がる天使の歌』

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探索と音楽

ゲームは再び、荒れ果てた街道をバイクで走るシーンに切り替わり、

絢音は自分がそのバイクを操作できることに気づいた。


バイクはムウが運転していて、バックパックは前方の両脚の間に置かれ、黒猫がその上に寝そべっている。少女はバイクに横座りし、ときおり鼻歌を歌っていた。


「見た目はほのぼのしてるけど、これ実はかなり危ないんじゃない?こういうのってリアルでは見たことないぞ」

バイクに乗ってる二人と一匹を見て、絢音は思わずつぶやいた。




「いくつか違うポーズを設計してあって、ランダムで切り替わるようにしてるけど、危険性とかは…画面の美しさのためには必要な犠牲ってことで」

瞳は真面目な表情で言ったが、すぐに付け加えた。

「でも、本当に危ないと感じるなら、変更もできるよ」


「はは、そこまで深刻じゃないよ。ところで、これはただ走ってるだけなの??それとも探索もできるの?」


「今はまだ固定の拠点しか探索できないけど、後で支線の探索も追加予定だよ」

瞳は少し申し訳なさそうに答えた。



「まあ、テスト版だしね」

絢音は、レストランのような建物の前に到着し、そこに「探索可能」のマークが表示された。

探索を選ぶと、ムウがバイクを停めて、後ろに座っているミュウに話しかけた


「今日はここで休もうか」

「やったー!」


バイクが止まると、画面は45度の俯瞰視点に切り替わり、絢音がムウを操作して探索可能な場所をクリックしていく。


探索の難易度を下げるため、瞳は調べられるものにハイライトをつけて、カーソルを合わせると「調べる」「拾う」などのヒントが表示されるようにしていた。


「うーん、これって逆に没入感を下げちゃわない?」絢音はハイライトされたアイテムを指差して言った。


「うん……確かにね。もう少し自然に見せる方法を考えてみるよ」

瞳は顎に手を当て、絢音の意見に同意した。


「もしくは、オプションでハイライト切り替え出来るようにするか」

「その方がいいかもね」


ムウたちは建物の中に入った。


「レストランか、食べ物か使えそうなものが見つかるといいな」

ムウはあたりを見回しながらミュウに言った。




「食料、必要なの?」

「うん、左上見て。空腹度と燃料が表示されてるでしょ?」

絢音は画面を確認すると、瞳の言った二つの数値に加えて、日付と時間も表示されていることに気づいた。


「つまり、資源管理もあるのね」

「でも、そこまで厳しいものではないよ。これはゲームの深みを出すための要素で、プレイヤーを困らせるためじゃないから」


瞳は最初から資源量を多めに設定しており、メインストーリーだけを進めても、十分な資源で物語を進められるようになっている。




「探索探索〜」


絢音は鼻歌まじりで、テーブルの上のチラシをクリックした。

チラシは『ネコ待ちカフェ』の猫のイラストが描かれていた。




「かわいい!」


「これは収集要素のアイテムで、後で世界観に合ったデザインに変える予定だよ」


「こういうの、サプライズ感があっていいね」




絢音はキッチンの奥でいくつかの缶詰を見つけ、倉庫ではガソリンの入ったタンクを発見した。




ハイライトのおかげで、絢音はすべてのアイテムを簡単に見つけられた。




「おっ!ここに引き出しがある」


絢音はムウを操作してレジカウンターの前へ向かい、引き出しを開けると、帳簿用のノートが入っていた。


ノートを開くと「テスト用」と字幕が表示された。




「これは、文字が書かれているアイテムを入手したときに、読みやすいように字幕が表示される仕組みなんだ。没入感のために字幕をオフにもできるよ」


絢音は設定を開き、字幕をオフにして体験してみた。




「うーん、字幕はない方が好みだけど、便利さを考えると、あった方がいいのかも」




「そろそろ時間だよ、ご飯にしよう」


ムウがプレイヤーに探索終了を知らせた。


食料は単独でも使用できるし、組み合わせて料理にすることもできる。プレイヤーにいろいろ試してもらうため、料理にした方が空腹度の回復量は高めに設定されている。




食事が終わると、ミュウをクリックして会話を始めると、彼女は笑顔でこう言った。



「じゃあ、約束通り、お兄さんにギター教えてあげるね!」


「そうね、よろしくね、ミュウ先生」




「先生なんて……へへへ」


ミュウは髪を指でいじながら、頬を赤らめて笑った。


そして、画面は演奏モードへと切り替わる。


画面中央には譜面枠が表示され、その下にはギターを弾く青年と、胸の前で手を組みながら歌う少女の姿が描かれている。




枠の上からは音符が次々と降りてきて、プレイヤーはリズムに合わせて対応するキーを押すことで演奏を進めていく。




音符には「羽」「灰」「光点」の三種類があり、それぞれ異なるタイミングと判定が要求される。




絢音はさっそくプレイしてみた。




「まずは、適当にボタン押してみて」


「え?どういうこと?……まあ、いいけど」


首をかしげながらも、絢音は言われた通りに、わざとミスするよう操作した。




失敗が重なるたびに、少女の表情が少しずつ変化していく。


最初は額に汗を浮かべながら困ったような顔を見せ、やがて演奏を完全にミスすると、ふくれっ面で画面を睨みつけた。




「……かわいい」


絢音は思わず声を漏らした。




「どう?悪くないでしょう?だいたいこんな感じでね」


「うーん……失敗した時の反応がしっかり作り込まれてて、プレイヤーもクスッとしそう。


 でも、もうちょっとバリエーションがあってもいいかも?」




「なるほど、ありがとう。じゃあ、表情のバリエーションはもう少し増やしてみるよ。じゃあ、今回は普通でやってみて」


絢音はもう一度試してみた。満点じゃなかったけど、サクッとクリアできた。



「ちょっと簡単すぎるかも。これだと、ガチ勢には物足りないかもね。あと、短すぎて、盛り上がる前に終わっちゃう気がする」


「なるほど、そこも調整しよう。こうして演奏を成功させると――ほら、こうやってCGに切り替わるんだ、背景の音楽はさっきプレイヤーが演奏したものになるようにしている」




ゲーム画面はCGに切り替わる。まだラフの状態で、少女はダイニングテーブルの横に座り、青年はそのそばでギターを弾いている。




「それ、けっこういい感じかも、私もこういうの好きなんだ」




「調整が終わったら、また手伝ってくれる?」




「もちろん、任せて!」


絢音は白い腕を曲げて、自慢げに二の腕をポンッと叩いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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