今回は音ゲーに挑戦だ!
「音ゲーか……」
家に帰った瞳の脳裏にまず浮かんだのは、ゲームセンターで見かけた歌奈の笑顔だった。
ちょうど次に何をするか迷っていた瞳は、真っ先に『自分も、誰かにあんな純粋な喜びの表情を浮かばせるような作品を作りたい』と思った。
瞳は無意識にパソコンを開き、空白のメモ帳をじっと見つめながら考え始めた。
「ただの模倣じゃ、意味がない」
もし一般的な音楽ゲームを作るなら、最初に解決しなければならないのは楽曲、しかも大量の楽曲だ。
これだけの楽曲を一人で用意するのは、どう考えても無理がある。
しかも、瞳は音楽にあまり詳しくない。
(七夜夢と協力すれば、この問題は解決できるかもしれないけど……)
瞳はそんな考えが頭をよぎる。
「……いや、それは逃げだ」
瞳は首を振り、雑念を振り払った。
確かに、それならゲームは完成するかもしれない。
もちろん、助けを求めるのは悪いことじゃないけど、すべての困難を他人に任せるようでは、自分が成長できない。
まずは自分で人を探し、動かなければならない。
だからこそ、このゲームはできる限り自分の力で完成させたい。
瞳にはひとつの習慣がある。
ゲームを作るときは、まず物語をしっかり構築すること。
この物語は、規模が大きすぎてはいけない。
そして、音楽とうまく融合している必要がある。
「音楽……音楽……」
瞳は頭をフル回転させ、音楽に関する知識を探った。
最初に思い浮かんだのは「音楽の天使」。
中学の音楽の授業で、先生が流したあの有名なオペラのことを、瞳はよく覚えていた。
「天使……そうだ!」
彼の指が動き、メモ帳に最初の一行が打ち込まれる。
蒼白の空の下、廃墟の街に、青年は音楽の天使と出会った。
この終末世界には、当然ながら終焉の原因があるべきだ。
「ちょっとありきたりだけど、戦争と天災の組み合わせにしよう」
対比を表現するために、主人公の青年は暗めの軍用ジャケットを着ている。
ヒロインは、世界の色合いに近い服装にしよう。
「ヒロインは白いワンピースの金髪少女」
瞳の頭の中に情景が浮かぶ。
灰色の空から雨が降る。
瓦礫の上に座る金髪の少女が、目を閉じて静かに歌っている。
その光景は息を呑むほど美しかった。
「よし、これをヒロインの登場シーンにしよう」
他人がどう思うかはわからないが、少なくとも瞳はこのシーンがとても気に入った。
古典的な「少年と少女の出会い」、そして物語が始まる。
「いや、待て……二人旅じゃ、ちょっと物足りないかも」
そう思った瞳は、一匹の黒猫を加えることにした。
自分の家では猫を飼っていないけど、猫は大好きだ。
「べつに絢音は喜びそうな理由ではないぞ」
絢音が自分のゲームを配信するとき、最も盛り上がるのは猫が出てくるシーン。
それもゲームに豊かさを加えるための演出であり、決して絢音のためではない。
「いや、俺は誰に言い訳してるんだ?」
物語はシンプルだ。
二人と一匹ネコが、楽器を持って目的地へ向かうロードムービー形式の旅。
「楽器は持ち運びやすいものでないと……ピアノとかはナシだな」
瞳は目を閉じて、どんな楽器を使うか考える。
瞳は信が軽音部に誘ってくれた時のことを思い出す。
「そうだ、ギターにしよう」
彼はギターを弾くポーズを取り、自分が音楽を奏でる姿を想像する。
「よし、とりあえずテスト版を作ってみよう」
瞳の胸は高鳴り、インスピレーションが次々と湧いてくるのを感じた。
テスト版は、このゲームがどのような形式で表現されるかを試すためのものだ。
そのため、瞳はまず出会いのシーンを用意し、公道での冒険、廃墟の探索、テーブルの上のチラシとのやり取り、引き出しの中の手紙を読むシーンまで準備した。
冒険に意味を持たせるため、瞳は生存要素を追加することにした。主人公は生き延びるために食料とバイクのガソリンを探さなければならない。
もちろん、生存のプレッシャーが物語の雰囲気に影響しないように、この部分は厳しくは設定しないつもりだ。
「でも、最も重要なのは音楽だな。」
瞳は眉をしかめて悩んだ。とりあえず、特定の場所に到達した後に少女と対話を選び、音楽を演奏することを学べるように設定してみた。
その後、画面は演奏モードに切り替わる。具体的には、画面の中央に四角が表示され、その下にはギターを弾く青年と、胸の前で両手を組んで歌う少女が描かれる。
音符は上から落ちてきて、リズムに合わせて適切なキーを押すことで演奏が行われる。
音符には、「羽毛」「落ちた灰」「光点」という三種類がある。
演奏が完了すると、CG画面に切り替わり、音楽の余韻と共にその章が終わる。
「音楽はとりあえず無料の素材を使おう」
瞳はインターネットで無料の素材サイトを検索し、いくつか適しているかもしれない音楽を見つけて保存した。
数日かけて、瞳はようやく簡単なテスト版を完成させた。
そして真っ先に、絢音に連絡を送った。
【絢音、今日って時間ある?】
すぐに返事が届いた。
【あるよ、どうしたの?】
【ちょっとテストプレイお願いしたくて。意見もらえると助かる】
【新作?】
【うん】
【すぐ行くね】
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