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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

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【絢音】君の巫女と天気雨

ようやく戻ってきた白禾は、簡単に佑真へお礼を告げたあと、突然こう言った。



白禾「もう時間がありません。黄泉の穢れをすぐに祓わなければ、この村は……滅んでしまうかもしれません」




「えっ、もうそんなにヤバいの!?」

巫女さんが戻ってきた嬉しさでいっぱいだった絢音は、一瞬事態の重さを理解できず、ぽかんとした声を漏らした。


:滅ぶ!?

:急だな





物語は、ここで一気に最終局面へ。

二人は最強の装備を身につけ、裏山へと向かった。


黒煙をまとった無数の怪異たちが、まるで波のように山から押し寄せてくる。


二人に絶望が襲いかかってきたその時。


好感度を上げて絆を結んだ怪異たちが、次々と姿を現した。



犬神「ガルルルルッ!!」




巨大な黒犬『犬神』が敵陣を突き破る!一撃一撃が地鳴りのように敵をなぎ倒す。




灰「アアアアアアーーッ!!」



灰狼の姉『灰』が吠え、十本の爪が空間を裂き、衝撃波を走らせる。


雪「借りは……ここで返すね~」


妹の『雪』が佑真にウィンクし、袖を振ると地面に光の結界が広がり、敵をまとめて圧殺!




白石「にゃはははっ!!脆い脆い!」




猫店長『白石』も人の姿となり、印を結びながら笑い声とともに強力な術を放つ!




「みんな……!!」



絢音は目を潤ませながら叫んだ。




:激あつ!

:王道すぎて泣ける

:こっちまで攻撃食らったんだが!?雪ちゃんの小悪魔め!



数えきれないほどの怪異を退けた後、ついに山神が現れた。



それは金色の角を持つ、神々しいほど巨大な白鹿だった。

しかしその姿は苦しげに吠え、身体には黒く光る穢れの霧がまとわりついていた。



白禾「……あれが黄泉の穢れよ。それを祓わないといけません」


白禾が指差しながら言う。




山神はラスボスに相応しく、ステータスも技もすごく強い。

しかしここでも、絆を結んだ仲間たちがそれぞれに支援してくれた。




状態異常を防ぐ者、ステータスを下げる者、そして隙を突いて攻撃する者。

それでも……苦戦は避けられなかった。


佑真「はぁはぁ、倒した?」



(やば……好感度ちゃんと上げといてよかった……これ、一人でも欠けてたら詰んでた)


絢音はハラハラしながら操作した。

幾度もの攻防の末、ついに山神が倒れた。




佑真「はぁはぁ、倒した?」

白禾「えぇ、後は任せて」


白禾が前に出て、黄泉の穢れを祓う儀式を行う。


儀式を終わって、ゆっくりと、山神は立ち上がる。




「え……まだ戦うの!? 二段階目とかナシでお願い……」


絢音は戦慄して祈る。


……が、優しい幼なじみはそんな鬼仕様にはしていなかった。


山神は静かに頭を下げると、そのまま深い山奥へと姿を消していった。



すべてが終わり、佑真はその場にへたり込んだ。


佑真「……これで、本当に終わったんだな」



白禾「はい。山神さまは、また静かに眠りにつかれました」



これでもう、毎日怪異を追いかける日々ともお別れだ。

安堵とともに、胸の奥に小さな寂しさが残る。



(もう……白禾に会いに行く理由も、ないんだな)


佑真「夏休みも、もうすぐ終わり。ようやくゆっくり休めそう……じゃあ、俺は帰るよ」




白禾「待って!」


驚いて振り返ると、白禾が服の袖をつかんでいた。

潤んだ目、真っ赤な顔……声が震えている。




白禾「……あの、その……」

白禾はおもむろに狐のお面をかぶり、顔を覆って呻く。




白禾「うぅぅ……どうしよう……」

何度ももじもじと身体を揺らしたあと、決意したように面を外し、叫んだ。




白禾「本当に……行っちゃうの!?」


佑真「え……」




ようやく、佑真は気づいた。

夏が終わるということは、

この町からも、そして白禾からも、離れるということだった。




白禾「……行かないで」

佑真「え?」

白禾「行かないで……!ここにいて。私のそばにいて……!」






: 告白キターーーー!!

: 抱きしめろよ!!!!

: 抱け!抱け!






佑真は言葉を失ったまま、ただ彼女の瞳を見つめた。

その瞳には、いつもの静かな光ではなく、押し殺してきた想いが、あふれそうになっていた。






【ごめん、家に帰らなきゃ】 【俺も好きだよ】




「こんなとき、左を選ぶひといる?」

絢音は瞳の選択肢のセンスを疑う。



:一応ね

:まあまあ、エンド全回収のだめにね






佑真「……白禾」

白禾「……あなたが来てから、私の毎日は、少しずつ、少しずつ……楽しくなったの」


白禾「ただ、怪異を祓うだけの巫女じゃなくて、誰かと笑い合って……小さな幸せを感じて……」

白禾「だから、もう……あなたがいないと、寂しいの……!」



静かだった森に、白禾の涙声がこだまする。


数秒の沈黙ののち。

佑真は、そっと白禾の肩に手を置いた。



佑真「俺も、同じ気持ちだよ」

白禾「……本当?」




佑真「最初はただ仕方なく、怪異を解決するために神社に通ってたけど。でも、気づいたら君に会うために神社へ行くのが日課になってた」



佑真「もう、理由なんかいらない。会いたいから、ここにいる」

そう言って、佑真は白禾をそっと抱きしめた。




白禾「……うれしい」




数日後。夏休み最後の日。

神社の境内に、二人の姿があった。

夏空が眩しいが、雲が少し流れていた



白禾「……決めたの?」

佑真「ああ。高校はここで通うよ。引っ越すって、母さんも許してくれた」


白禾「……そっか……よかった」




境内の風鈴が、涼しい音を響かせる。

蝉の鳴き声も、もうどこか遠く感じた。



白禾「じゃあ、これからも……ずっと一緒に、いてくれる?」

佑真「もちろん。だって、俺の巫女さんは、世界で一番大事だから」


白禾は顔を真っ赤にして、でも嬉しそうに笑った。



その瞬間、空が、鳴った。

さっきまであれほど晴れていた空が、まるで感情に共鳴したように、

突然、ぽつ、ぽつと雨を落とし始めた。



佑真「え……雨?」

佑真は驚いて空を見上げる。



でも、白禾は違った。



彼女は雨に濡れるまま、顔を上げ、

太陽よりも、もっと眩しい笑顔を浮かべた。




白禾「……雨も、悪くないね」


彼女の頬を伝う雫は、涙か雨粒か、もう分からない。


白禾「好きよ、大好き!」



~FIN~




:クリアおめでとう!

:綺麗!

:うわああエモい!!

:映画みたい……


「クリアおめでとう、ありがとう!楽しかった!めっちゃいい話だったね」

絢音は満足して頷いた。


「巫女さん以外のルードも見たいね」



:たしかに

:早速浮気ですか?w


「違います!それは……まあ、こんなことで、今回はここまで、おつるり~」




:逃げたw

:おつるり~

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