【絢音】君の巫女と天気雨
ようやく戻ってきた白禾は、簡単に佑真へお礼を告げたあと、突然こう言った。
白禾「もう時間がありません。黄泉の穢れをすぐに祓わなければ、この村は……滅んでしまうかもしれません」
「えっ、もうそんなにヤバいの!?」
巫女さんが戻ってきた嬉しさでいっぱいだった絢音は、一瞬事態の重さを理解できず、ぽかんとした声を漏らした。
:滅ぶ!?
:急だな
物語は、ここで一気に最終局面へ。
二人は最強の装備を身につけ、裏山へと向かった。
黒煙をまとった無数の怪異たちが、まるで波のように山から押し寄せてくる。
二人に絶望が襲いかかってきたその時。
好感度を上げて絆を結んだ怪異たちが、次々と姿を現した。
犬神「ガルルルルッ!!」
巨大な黒犬『犬神』が敵陣を突き破る!一撃一撃が地鳴りのように敵をなぎ倒す。
灰「アアアアアアーーッ!!」
灰狼の姉『灰』が吠え、十本の爪が空間を裂き、衝撃波を走らせる。
雪「借りは……ここで返すね~」
妹の『雪』が佑真にウィンクし、袖を振ると地面に光の結界が広がり、敵をまとめて圧殺!
白石「にゃはははっ!!脆い脆い!」
猫店長『白石』も人の姿となり、印を結びながら笑い声とともに強力な術を放つ!
「みんな……!!」
絢音は目を潤ませながら叫んだ。
:激あつ!
:王道すぎて泣ける
:こっちまで攻撃食らったんだが!?雪ちゃんの小悪魔め!
数えきれないほどの怪異を退けた後、ついに山神が現れた。
それは金色の角を持つ、神々しいほど巨大な白鹿だった。
しかしその姿は苦しげに吠え、身体には黒く光る穢れの霧がまとわりついていた。
白禾「……あれが黄泉の穢れよ。それを祓わないといけません」
白禾が指差しながら言う。
山神はラスボスに相応しく、ステータスも技もすごく強い。
しかしここでも、絆を結んだ仲間たちがそれぞれに支援してくれた。
状態異常を防ぐ者、ステータスを下げる者、そして隙を突いて攻撃する者。
それでも……苦戦は避けられなかった。
佑真「はぁはぁ、倒した?」
(やば……好感度ちゃんと上げといてよかった……これ、一人でも欠けてたら詰んでた)
絢音はハラハラしながら操作した。
幾度もの攻防の末、ついに山神が倒れた。
佑真「はぁはぁ、倒した?」
白禾「えぇ、後は任せて」
白禾が前に出て、黄泉の穢れを祓う儀式を行う。
儀式を終わって、ゆっくりと、山神は立ち上がる。
「え……まだ戦うの!? 二段階目とかナシでお願い……」
絢音は戦慄して祈る。
……が、優しい幼なじみはそんな鬼仕様にはしていなかった。
山神は静かに頭を下げると、そのまま深い山奥へと姿を消していった。
すべてが終わり、佑真はその場にへたり込んだ。
佑真「……これで、本当に終わったんだな」
白禾「はい。山神さまは、また静かに眠りにつかれました」
これでもう、毎日怪異を追いかける日々ともお別れだ。
安堵とともに、胸の奥に小さな寂しさが残る。
(もう……白禾に会いに行く理由も、ないんだな)
佑真「夏休みも、もうすぐ終わり。ようやくゆっくり休めそう……じゃあ、俺は帰るよ」
白禾「待って!」
驚いて振り返ると、白禾が服の袖をつかんでいた。
潤んだ目、真っ赤な顔……声が震えている。
白禾「……あの、その……」
白禾はおもむろに狐のお面をかぶり、顔を覆って呻く。
白禾「うぅぅ……どうしよう……」
何度ももじもじと身体を揺らしたあと、決意したように面を外し、叫んだ。
白禾「本当に……行っちゃうの!?」
佑真「え……」
ようやく、佑真は気づいた。
夏が終わるということは、
この町からも、そして白禾からも、離れるということだった。
白禾「……行かないで」
佑真「え?」
白禾「行かないで……!ここにいて。私のそばにいて……!」
: 告白キターーーー!!
: 抱きしめろよ!!!!
: 抱け!抱け!
佑真は言葉を失ったまま、ただ彼女の瞳を見つめた。
その瞳には、いつもの静かな光ではなく、押し殺してきた想いが、あふれそうになっていた。
【ごめん、家に帰らなきゃ】 【俺も好きだよ】
「こんなとき、左を選ぶひといる?」
絢音は瞳の選択肢のセンスを疑う。
:一応ね
:まあまあ、エンド全回収のだめにね
佑真「……白禾」
白禾「……あなたが来てから、私の毎日は、少しずつ、少しずつ……楽しくなったの」
白禾「ただ、怪異を祓うだけの巫女じゃなくて、誰かと笑い合って……小さな幸せを感じて……」
白禾「だから、もう……あなたがいないと、寂しいの……!」
静かだった森に、白禾の涙声がこだまする。
数秒の沈黙ののち。
佑真は、そっと白禾の肩に手を置いた。
佑真「俺も、同じ気持ちだよ」
白禾「……本当?」
佑真「最初はただ仕方なく、怪異を解決するために神社に通ってたけど。でも、気づいたら君に会うために神社へ行くのが日課になってた」
佑真「もう、理由なんかいらない。会いたいから、ここにいる」
そう言って、佑真は白禾をそっと抱きしめた。
白禾「……うれしい」
数日後。夏休み最後の日。
神社の境内に、二人の姿があった。
夏空が眩しいが、雲が少し流れていた
白禾「……決めたの?」
佑真「ああ。高校はここで通うよ。引っ越すって、母さんも許してくれた」
白禾「……そっか……よかった」
境内の風鈴が、涼しい音を響かせる。
蝉の鳴き声も、もうどこか遠く感じた。
白禾「じゃあ、これからも……ずっと一緒に、いてくれる?」
佑真「もちろん。だって、俺の巫女さんは、世界で一番大事だから」
白禾は顔を真っ赤にして、でも嬉しそうに笑った。
その瞬間、空が、鳴った。
さっきまであれほど晴れていた空が、まるで感情に共鳴したように、
突然、ぽつ、ぽつと雨を落とし始めた。
佑真「え……雨?」
佑真は驚いて空を見上げる。
でも、白禾は違った。
彼女は雨に濡れるまま、顔を上げ、
太陽よりも、もっと眩しい笑顔を浮かべた。
白禾「……雨も、悪くないね」
彼女の頬を伝う雫は、涙か雨粒か、もう分からない。
白禾「好きよ、大好き!」
~FIN~
:クリアおめでとう!
:綺麗!
:うわああエモい!!
:映画みたい……
「クリアおめでとう、ありがとう!楽しかった!めっちゃいい話だったね」
絢音は満足して頷いた。
「巫女さん以外のルードも見たいね」
:たしかに
:早速浮気ですか?w
「違います!それは……まあ、こんなことで、今回はここまで、おつるり~」
:逃げたw
:おつるり~
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