ケモ耳の巫女さんって最高じゃない?
マップの左上に、再び「昼間」の表示が現れた。
「おっ、選べる場所が増えたね!」
琉璃は画面を覗き込むと、目を輝かせながらマップ上に現れた神社、自宅、商店街の三つのアイコンを指差した。
「うーん、今日は商店街に行ってみようっと!」
画面が切り替わり、二頭身の少年がてくてく歩きながら商店街へと向かうシーンが映し出される。
【プレゼントを買う】【お菓子を買う】【服を買う】
「うわ、お菓子しか買えないか~」
琉璃は所持金を確認して、少し苦笑しながら【お菓子を買う】を選択した。すると、画面にスイーツがズラリと並んだ。
「ドーナツある! 私、ドーナツ大好きなんだよね。これにしようっと!」
:ドーナツは確かに美味しい
:私もドーナツが一番好き!
:明日コンビニでドーナツ買おう……
お菓子を選び終わった後、次に行く場所の選択肢が表示される。
琉璃は迷わず神社を選び、次のシーンへと進んだ。
神社の境内には、いつものように掃除をしている白禾の姿があった。
狐の面をつけ、箒を手にした彼女は、まるで時間が止まったかのように、いつもと変わらない姿で掃除をしている。
白禾「また来たの?何か用?」
白禾は顔を上げずに、静かに声をかけてきた。
佑真「昨日はありがとう。護身グッズ、すごく助かったよ。今日はお礼に甘い物持ってきたんだ」
佑真は少し照れくさそうに袋を掲げた。
白禾「……甘い物?」
その言葉に、微かに驚きの色が混じる。
琉璃はその反応を見て、画面越しにニヤリと笑った。
「お、反応がいいじゃん!」
:釣れたw
:これ、絶対食いつくわw
:白禾、甘党説!
白禾「でも……今はちょっと無理」
そう言って、白禾は狐の面に手を当て、目を伏せた。
佑真「そっか。じゃあ、ここに置いておくよ。後で、食べたくなった時にでもどうぞ」
佑真は袋を地面にそっと置き、振り返り始めた。
「えっ、もう帰るの!? せっかく来たのに、ちょっと喋っていきなよ~」
琉璃が文句を言ったが、佑真はそのまま帰っていった。
しかし、少し歩いたところで、佑真はポケットを探り、足を止めた。
佑真「あれ……財布がない!?しまった、袋の中に入れたままだった!」
慌てて振り返り、神社へと駆け戻る。
その瞬間、画面に映し出されたのは、仮面を外した白禾の姿だった。
ドーナツを手に持ち、大きくかぶりつく彼女の頬には、白い粉砂糖がうっすらとついている。
「……あっ」
:かわいい!!
:白禾、素顔めっちゃ美人
:これがギャップ萌えか……
白禾「あむ……っ!? い、いつからそこに……!?」
驚いて目を見開いた白禾。その瞬間、ふわりと狐耳が頭から飛び出した。
「ケモ耳!?」
琉璃が嬉しそうに叫ぶ。
:ケモ耳美少女、最高
:作者、わかってんね
:尊い……!
白禾は慌てて片手で耳を隠し、顔を真っ赤にしながら佑真を睨みつけた。
白禾「……見た?」
佑真「い、いや、なにも見てないっす……!」
佑真は恥ずかしさからか、敬語を使ってしまうほど動揺していた。
白禾はもう一度睨んだ後、ため息をついた。
白禾「仕方ない、私が気をつけなかったのが悪いわ。これ、君の財布でしょ。どうぞ」
白禾は手についた砂糖をぱんぱんと払い、財布を取り出し、差し出した。
白禾「ん? これは……?」
財布には、黄色いシベリアンキャットのキーホルダーが「瞳中之景」という文字を抱えていた。
「かわいい~! もし実物があったら絶対買う!」
琉璃はそのキーホルダーを気に入った様子で叫んだ。
:お金あげるから、早く出して
:私の財布持ってけ、だからくれ
:めっちゃかわいい!
佑真「それは、俺が好きなゲームのロゴだよ」
白禾「ゲーム……?」
佑真はスマホを取り出し、そのゲームについて説明し始めた。白禾は目を輝かせ、興味津々で画面を見つめていた。
佑真「今度持ってきて、一緒に遊ぼう」
白禾「うん!」
無邪気に頷く白禾の姿に、思わず佑真は微笑んだ。
「巫女さん、ほんとに可愛いな~。声が私と違ってたらもっと良かったのに……」
琉璃が少し辛そうに呟いた。
:いやいや、そのままでいいよ
:巫女さん最高
:好き!
そして、日常パートが終了し、時間は夜になった。
「やっと本番だね!」
琉璃は拳を握りしめ、目を輝かせながら言った。
「これでやっと怪談退治の始まりだ!」
:わくわく
:怪談退治の時間だ!
ゲーム内では怪談退治がミニゲームのように表現され、さまざまな怪異が登場する。
最初に登場した怪異は、道端でしゃがみ込んでいる少年だった。
佑真「あれが怪異なのか?」
白禾「気をつけて。『少年』は無害なタイプだけど、油断は禁物よ。一般の人には危険な場合もあるから」
佑真「なるほど」
少年が振り向くと、にっこりと微笑んだ。
「見た目はただの普通の少年だな……虫取り少年みたいだ」
琉璃は少し不安そうにその少年を見つめながら言った。
:確かに、虫取り少年みたい
:ちょっとヤンチャっぽい
少年が声をかけてきた。
少年「ねえねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、僕と石積みゲームしようよ!」
佑真が白禾を見ると、彼女は無言で頷いた。それを見て、佑真は少年の提案を受け入れることにした。
少年「やったー!」
少年は嬉しそうに両手を上げて喜んでいる。
佑真「その石積みゲームって、どういうゲームなの?」
少年は自信満々に答えた。
少年「えぇ、お兄ちゃん知らないの? 石積みゲームは、その名の通り石を積むゲームだよ。一度に積めるのは最大三つ。倒したら負けだよ。どう? 簡単でしょ?」
「ふむふむ、なるほど。わかったよ」
琉璃は迷わずボタンを押し、ゲームを開始した。
ゲーム画面が暗転し、石積みゲームがスタートする。
しかし、思った以上に難易度が高かった。
積む石の大きさがバラバラで、少しでもバランスを崩すと一気に倒れてしまう。
「む、これは……意外とシビアだ」
琉璃は眉をひそめ、真剣な表情で積み上げていった。
ゲーム内での難易度設定もあり、クリアすると「小判」やキラキラ光る石を手に入れることができる。最高難易度をクリアすれば「キャットニップ」をゲットできるとのことだ。
「これで稼ぐんだな」
琉璃はうなずきながら、ゲームのシステムを理解し、笑顔を浮かべた。
「でも、結構楽しいかも……!」
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