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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

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うちの白禾ちゃんは誰にも渡さないよ!

狐の嫁入りに遭遇した、あの不思議な夜から一夜明けて。


ゲーム画面の左上には『昼間』と表示されている。現在行ける場所は、自宅と神社の二ヶ所のみ。神社のアイコンには、二頭身の可愛らしい巫女キャラがちょこんと描かれていた。


「ちび巫女さん、かわいい~!」

画面を見つめながら、琉璃は頬を緩める。本来なら、夜になってから彼女に会いに行く予定だった。昨晩、怪談を一緒に解決するという約束を交わしたからだ。


だが、彼女の好奇心とテンションはもう限界だった。

「いや、もう無理、今すぐ会いに行く!」


琉璃は我慢できず、巫女を探しに神社へと向かった。


神社では、掃除をしていた巫女が手を止め、こちらを向いた。

巫女「……夜に来てって言ったじゃない? まあ、いいけど。何か用?」

その声はどこか素っ気なくも、どこか落ち着いていて、耳に心地よかった。



:琉璃の冷たい声、たすかる

:新鮮でいいね


「くっ、言わないで。できるだけ考えないようにしてるんだけど……」

琉璃は唇を尖らせたが、すぐに何かを思いついたように、目を輝かせた。


「そうだ! 彼女の声、消してもいい?」


:ダメに決まってんだろうw

:消さないでw

:ヒロインの声を消すなんて、斬新すぎる。


「ほら、このゲーム、キャラごとにボイス音量が調整できるんだよ。そしてネタバレ防止のために、まだ会ってないキャラは非表示になる仕様なんだよね」


琉璃はメニューを開いて説明する。



:ほほう

:便利

:神機能


「本当にだめ?もう、しょうがないな~」

コメント欄に寄せられたリスナーたちの反対を見て、琉璃は少し不満そうに肩をすくめた。結局、巫女の声を消すのはやめることにした。



巫女「……私の名前は最上もがみ 白禾しらか。見ての通り、神社で巫女をしている者です」


この時ようやく祐真は巫女の姿をしっかり見ることができた。

白い長髪が風に揺れ、その先端には小さな鈴が結ばれている。動くたび、澄んだ音色が耳元に響いた。


だが、彼女の中で最も目を引いたのは、胸元にそびえる、二つの圧倒的な山だった。


:でっか!?

:決めた!この巫女さんは俺の嫁にする!


「いや、白禾ちゃんは誰にも渡さないよ」



巫女「なんで仮面をしているのかって? ……ただの習慣。顔が見たい? ふん、そう簡単には見せられないよ」


鼻で笑うような仕草の裏に、少しだけ照れ隠しが混じっていた。声の調子からすると、祐真と年齢はあまり変わらないように思える。


巫女「用がないなら、お帰りください。まだ掃除が終わっていないので。でも、夜のことは忘れないでね」


渋々、琉璃は自宅へ戻ることにした。休むボタンを押すと、時計の針が進み、画面が夜に切り替わる。


マップが再び表示されると、神社と自宅の他に、新たな場所が『???』と表示されていた。


「ここはどこだろう?」と琉璃は好奇心からその場所をクリックしたが、入れなかった。



祐真は自分に言い聞かせるように呟いた。

祐真「一人で行くのは危険だな……まずは最上さんを探しに行こう」



:ただの餌になるだけ

:一人は危ない

:普通の人間は無理しないで



「確かに……それじゃあ、白禾ちゃんを探しに行こう!」


琉璃は頷くと、神社を再び訪れた。


夜の神社は、昼間よりもさらに神秘的な雰囲気に包まれていた。社務所の前で休んでいた白禾は、祐真に気づくと、静かに立ち上がった。


夜の神社はより一層神秘的に感じられ、白禾は社務所の前で休んでいたが、祐真を見ると自ら出てきた。


白禾「来たのね、それじゃ簡単に説明するわ。」

祐真「はい、お願いします」

白禾「今、あなたの体には私の霊力が染みついているから、あの怪異たちにとってあなたは格好の餌食になってしまうわ」

祐真「 怪異?怪談じゃなくて?」

白禾「同じ物よ。怪異というのは、様々な異聞や伝説に登場する超自然的な存在のこと。その存在たちが残した痕跡を、私たちは怪談と呼んでいる。」




白禾「あなたに来てもらった理由は、怪談を処理している時に、どこかで知らないうちに襲われたら困るからよ。」

白禾はそう言って、祐真に一つのお守りを手渡した。



白禾「これをあげるわ。低級な霊は祓えるけど、過信しすぎないでね」

祐真「ありがとうございます」



「優しい!」

琉璃は感動してる。



:やさしい

:なんでいい人だ


白禾「さあ、ついてきて」


白禾に導かれるまま、祐真はマップ上で「???」と表示されていた場所へと向かった。


それは小さな雑貨屋。

店の中で、ひときわ異彩を放つ存在がいた。

宙にふわりと浮かんだ二本の尾、

そして、艶やかなチャイナドレスに身を包んだ猫の妖怪。


猫店長「いっらしゃいませ~」

猫又はチャイナドレスを着ていて、二人を見ると空中で一回転した。



猫店長「お久しぶりですね、巫女さん、それにこの方は?人間の方ですか?」

猫又の声は低くて魅力的な女性の声で、首を傾げながら少し疑問そうに尋ねた。



「かわいいいいい!!抱っこしてもいい?」

猫又を見た琉璃は目を輝かせ、今日一番の大きな声をあげた。




:猫の店長か、いいですね

:かわいい!

:モフりたい



白禾「店長。彼に防身用の道具をいくつか用意してもらえるかしら?」


猫店長「かしこまりました。ただ……この方、完全に普通の人間ですね。少し考えてみます」


猫又はくるりと回ってカウンターの奥に入り、棚の中を探りはじめた。


白禾はその背中を見つめながら、静かに口を開く。


白禾「今回は私が代金を払っておくわ。けど今後、何か必要なものがあれば、ここで自分で買えるようにしておいてね」


そう言うと、白禾は袖から金色に輝く数枚の小判を取り出し、カウンターに置いた。


「小判……!?」



:猫に小判w

:すごい遊び心

:女神がおる……




白禾「これは“霊貨”。怪談を解決した報酬として得られるものよ」


祐真の問いかけに、白禾は補足するように説明を加える。


その間に、猫店長は準備を終えて戻ってきた。


猫店長「はい、こちらになります」


猫の店主は幾つかの道具を準備した。一つは、怪異が近づくと温かくなるネックレス、怪談から逃げるための呪符、そして怪談の力を減少させるブレスレットだった。


白禾「これで、最低限の備えは整ったわ」

祐真「ありがとうございます」

白禾はゆっくりと頷くと、祐真にまっすぐ向き直って言った。

白禾「明日から本格的に怪談を解決していきましょう」

彼女の声は静かだったが、その奥には決意と使命感が滲んでいた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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