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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

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狐の嫁入り

祐真は土の小道を歩いている。


眩しい太陽が照りつける中、額から流れる汗を拭いながら空を見上げた。


祐真「こんな天気、暑すぎる……え?」

話し終わるかどうかのうちに、突然、大粒の雨が降り始めた。


祐真:「天気雨か?……こんな天気に遭遇するなんて、運がいいのか悪いのか……」


明るい太陽の下に降り注ぐ土砂降りの雨。その極端な対比に、祐真は言いようのない違和感と不思議さを感じていた。




【家まで走る】【そこに何が見える、そこで雨宿りしよう】



琉璃はリスナーたちに尋ねた。

「ここ、どうする?」


:一旦セーブして試す?

:おうちに帰る!



「そうね、まずセーブしよう」

琉璃はコメントに従ってセーブし、【家まで走る】を選んだ。


そして一つ目のエンドを迎えた。


祐真「ただいま~」

母「大丈夫?すごい濡れてるよ、早く風呂に入りなさい」

祐真「はーい」


こうして、暖かいお風呂に入って、ちょっと特別な一日が終わった。



【エンド1 FIN】


「あり?」

30分くらいでクリアするとは、琉璃の予想外だ。



:終わったw

:ストーリーを進めなかったから....

:クリアおめでとう!w



「じゃあ、今回は右を選ぶね」




【そこに何が見える、そこで雨宿りしよう】


祐真は慌てて雨宿りを探したが、このような田舎には屋根がある場所がほとんど見当たらなかった。




祐真「お!あそこに神社があるっぽい。雨宿りできるかどうか分からないけど、ちょっと行ってみよう」

祐真は遠くの小山に赤い鳥居を見つけて、急いでそこに向かって走り出した。




祐真は急いで走りながら、拝殿で狐の面をつけた巫女が掃除をしているのを見かけた。

どうやら掃除をしている途中に雨が降り始め、仕方なく本殿で雨宿りをしているようだ。




「巫女さんだ!……あっ」

琉璃の目がぱっと輝いたが、何かを思い出したようで、すぐに暗くなった。




:巫女さん、キター!

:わくわく

:琉璃巫女きた!



祐真「あの、すみません、ここで少し雨宿りをさせてもらえませんか?」


巫女「人間……?どうしてこんなところに?」


巫女の声には驚きが込められていた。そして彼女は祐真の背後を見上げた。



巫女「まずい、もう来てる……!こっちに!」

巫女は慌てて手を伸ばし、祐真を本殿の奥へと引き入れ、自分の面を外して祐真に渡した。

祐真「なんだ?どうした!?」



巫女「早くそのお面をつけて!絶対に外さないでね!それと……絶対に顔を上げちゃダメ!」


巫女は一歩前に出て、祐真を自分の後ろに隠すようにした。

その必死な様子に、祐真は何も言えず、言われるがまま面をかぶった。

彼女の白く長い髪が、かすかに祐真の頬をかすめる。

祐真はうつむき、両手で面をしっかりと押さえる。




不安と、胸を締めつけられるような違和感が一気に押し寄せた。


頭の中は混乱していたが、不思議と彼女の言葉だけは信じられた。


鼻先にわずかな香りが漂い、それが祐真の心を少し落ち着かせた。

その香りはどうやら、この面の本来の持ち主のものだったようだ。


しばらくすると、遠くから音が近づいてくる。

賑やかな気配、楽器の演奏の音が次第に鮮明になり、規則的な鈴の音が響き渡る。


チリリン、チリリン。


祐真の視界の隅に、様々な服を着た狐の面をかぶった行列が徐々に近づいてくる。

笛を持つ者、琵琶を持つ者、太鼓を持つ者、提灯を掲げる者もいる。

そして、その隊列の中心には、赤い傘を差し、白無垢を着た狐面の女性が立っている。


その行列は神社の前で一瞬止まり、こちらを一瞥したのち、何も言わずに深い森の奥へと消えていった。




「わー、綺麗!」

琉璃は画面を見つめながら、思わずため息を漏らした。






祐真「狐の嫁入り……」

この時ようやく、祐真は自分が「何か特別なもの」に遭遇したのだと理解する。



噂によれば、狐の嫁入りを見た人間には、不幸が訪れる。

それに、自分だけでなく家族にも災いが降りかかるとも言われている。


巫女「大丈夫、もう安全よ。お面を返してくれる?」


祐真「あ、はい……ありがとうございました」

祐真から面を受け取り、再び顔に付ける巫女。


祐真「先のあれは一体?」

巫女「ただの婚礼の行列よ。人間にとっては、忘れたほうがいいわ」


巫女「もう帰りなさい、ここは普通の人間が長くいる場所じゃない」

祐真「はい、わかりました」


祐真が巫女の言う通りに家に帰ろうとしたその時。


巫女「……待って」


彼女は祐真を呼び止め、じっと見つめた。


巫女「やっぱり……少しだけだけど、君の体に私の霊力が染みついてるわね」


祐真「……何の話ですか?」


巫女「さっき面を貸した時、君の身体に私の霊力が付着したの」


祐真「それって、何か問題が?」


巫女「霊に襲われる可能性があるわ。今の君は……霊にとって格好の獲物よ。」

巫女はとても真剣な声で説明した。


祐真「えっ……!?」



祐真「それじゃ、どうすればいいの?解決方法はあるんですか?」



巫女「儀式で消すことはできるけど、少し時間がかかるわ。この期間、昼間は基本的に安全だけど、夜は……」

巫女はしばらく黙って考えた。



巫女「仕方ない、夜は私のところに来て。怪談を解決しないといけないけど、私の隣にいれば、一人にしてるより安全だ」

祐真:「……怪談?」


巫女「最近、この土地の霊的なバランスが少し不安定になってきてるの。それに伴って、怪談が浮かび上がってきた。放っておくと、ますます危険になるわ。


祐真「どうして不安定になってるの?」


巫女「詳しい説明はまだあとにして、とりあえず、明日一緒に怪談を解決しに行くわ。今日はもう大丈夫よ。」

巫女は祐真に守りの術をかけて、そう言った。


こうして、祐真の人生は──

予想もしなかった大きな変化を迎えることになった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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