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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

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テストが来てから思い出した。そう言えば、私たちって高校生だったんだ

クラスの空気が張り詰めている。みんな、どこか険しい顔をしている。


「休みの日、一緒に勉強しようね」

絢音は真剣な表情でそう言った。


来週からテスト期間になるので、そろそろ勉強しないとまずい。

元々進行中だったゲーム制作も、しばらくの間は中断せざるを得なかった。


「いいよ」

(やばい、顔をまともに見れないぞ)


前回映画を見たときのことが頭に浮かび、つい目をそらしてしまったが、できるだけ自然に答えた。


「ありがとう!そろそろテストなのに、まったく自信ないよ」

絢音は眉を寄せて、小さく肩を落とす。

「大丈夫だ、毎回の成績も悪くないだろう?」

「そうなんですけど、自信ないのよ」


瞳は成績が上位だが、絢音は中の上といったところだった。

だから毎回テストの時、絢音は瞳の家に来て一緒に勉強する。

なぜ絢音の家で勉強しないかというと、彼女曰く、「自分の部屋にいるとゲームをやりたくなるから」

それに、分からないところも瞳に訊ける。




週末。

学校から帰る前、絢音はカバンを持ちながら瞳に言った。

「また後でね」


「はいよ、お母さんにはもう言ってあるから、うちでご飯食べよう」


「やった!おばさんの手料理、久しぶりだから楽しみ!」

絢音は両手上げてバンザイした。



「やはり夫婦……」

「これで付き合ってないのは嘘だろう……」


その会話を聞いたクラスメイトがひそひそと話し合っている。




家に帰った瞬間、結衣がダダダと走ってきた。

でも瞳一人だけを見て、頭を傾げた。

「あれ?絢姉は?」


「荷物を持ってくるから、一旦家に帰ったよ」


「なんだ」

結衣はつまらなそうな顔をして、瞳から離れた。


絢音はこの時期になるといつも瞳の家に泊まり、勉強に集中します。

もちろん、瞳と一緒ではなく、結衣の部屋で寝ます。

だから、絢音と特別に親しい結衣にとっては、まるでお祭りみたいなものだった。



「君だけか、絢音ちゃんはまだ来てないの?」

エプロン姿の母が歩いてきて、結衣と同じ反応を見せた。


朝倉社長もすごいけど、長谷川母は目つきが特に鋭い。

それに瞳に負けない身長を持ち、強い圧力を感じさせる。


長谷川母は瞳を一瞥し、眉をひそめて言いました。


「一緒に行って荷物を代わりに持つも分からないなんて、ほんとに機転が利かないわね」

「はいはい、今行くよ」

「はいは一回」

「了解」


家に帰ったばかりの瞳は鞄を置いて、すぐに絢音の家に向かって歩き出しました。




途中でちょうど歩いて来た絢音と出会い、絢音は少し驚いた表情を浮かべました。


「どうして来たの?あ、おばさんですか?」

絢音はすぐに理由を推測しました。


「正解、さあ、荷物を持ってきてくれ」

「ありがとう」


彼女は遠慮せず、鞄を瞳に渡しました。

鞄はそんなに重くなく、基本的には教科書と服だけでした。




「でも、覗かないでね」

絢音は両手を背中に回し、体を少し前に傾けて、わざと瞳をからかうように言った。


「誰がそんなことするかよ」


「本当に見たいなら…少しだけ見てもいいよ」


「え?」


「冗談だよ、本気にしたの?」


絢音はにやりと笑った。わざと瞳の表情を見ようとした。


「馬鹿なことを言わないで、行くぞ」


瞳は顔をそむけ、ふんと鼻を鳴らして、絢音と視線を合わせなかった。


「はいはい」


「はいは一回」


「はーい」


瞳は顔を赤らめて、歩く速度を上げた。


「待ってよ」

絢音は後ろからついていき、瞳の背中を見ながら、笑顔を浮かべた。


家に帰った後、再び迎えられた。

「絢音ちゃん、ようこそ~」

瞳は母を見て、長谷川母は目を細め、穏やかな表情を浮かべた。

「待遇が違いすぎだろう」

瞳は小さな声で不満を言った。長谷川母はいつも絢音を実の娘のように扱っている。

自分と絢音が喧嘩したら、母はきっと絢音の味方をする、そう確信していた。


「絢姉!」

結衣も嬉しそうに駆け寄って、絢音の腕を抱きしめた。

「結衣!」

二人は本当に姉妹のように熱心に話していた。

「さて、手を洗ってご飯の準備をしようか」

「「はーい」」


夕食は簡単な家庭料理だったが、絢音はとても楽しそうに食べていた。

「おいしい、さすがおばさん」

母は絢音の言葉を聞いて、にっこりと笑いながら言った。

「おいしいなら、もっと食べなさい」

「ところで、おじさんは?」

「彼は出張中よ、まだ帰っていないの」

「そうなんだ」

食事を終えた後、瞳と絢音は部屋に戻り、勉強を始めた。

結衣は二人を気遣い、邪魔をしなかった


瞳の部屋には折りたたみのテーブルがあり、今回の勉強会のためにそのテーブルを出し、もう一つの椅子を用意した。

二人はテーブルを囲んで、それぞれの教科書を広げて勉強を始めた。

瞳は国語の教科書を取り出し、絢音は数学を開いた。

「うーん…うーん……」

絢音は眉を深く寄せ、真剣に問題を考えていた。

「うーん……ほんと、何度読んでも意味がつかめない……」

「見せて、ここでこの公式を使って、問題に書いてある数字を代入すれば……」

「なるほど、わかった、ありがとう」

絢音はわからないことがあればまず自分で頑張り、どうしても解決できない時に初めて瞳に助けを求める。

そんな感じで、二人は約2時間くらい一生懸命に勉強を続けた。

「もうダメ、ちょっと休憩する」

絢音は完全に元気をなくし、疲れた様子でテーブルに伏せ、両手を前に伸ばしていた。

瞳も教科書を置いて、立ち上がる。

「そろそろいい時間だし、飲み物を取ってくるね、先に休んでて。あ、それとも先に風呂に入る?」

「うん、お言葉に甘えてそうするわ……」


瞳はキッチンの冷蔵庫に行き、瓶入りのジャスミン茶を取り出して、二つのグラスに注いだ。

部屋に帰った時、絢音はすでに風呂に入っていた。

瞳は飲み物をテーブルの上に置いて、一つ手に取って、一口飲んだ

「ふう」

同年代の異性が自分の家で風呂に入って、冷静に考えるとすごいことだ。

「いかんいかん」

瞳は頭を左右に振って考えないようにする。


しばらくして、絢音はタオルで髪を拭きながら部屋に戻り、もう片方の手でドライヤーを持っていた。

「髪、乾かしてもらえる?」

「いいよ」

瞳は立ち上がってドライヤーを受け取り、絢音の後ろに立った。

彼女のまだ水気の残る肌を見て、思わず顔が赤くなり、胸がドキドキした。

「ありがとうね」



「じゃあ、再開するか」

その後、二人は約二時間ほど勉強を続けた。

「今日はここまでにするか」

「賛成」

絢音は物を片付けて、立ち上がる。

「じゃあ、結衣ちゃんの部屋に……」

「おう、おやすみ」

「そう思った?えい!」

絢音は瞳のベッドに飛び込んだ。

「おい、なにしてるの!?」

「にひひ、ちょっとおしゃべりしようよ」

絢音はベッドから頭を上げ、瞳を見つめてにっこりと笑った。

瞳はため息をつき、しばらくして口角が上がった。

「仕方ないなぁ、少しだけだぞ」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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