表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/116

ゲームは大好きだけど、偶にゲーム以外のこともする

「もしもし、今夜に時間ある?」


スマホに絢音から電話がかかってきた。

瞳は浅海先輩が依頼を受けた日以来、休まずゲーム制作に没頭している。

それでも、ストーリーはまだ半分くらいしか完成していない。

今はまさに一番忙しい時期だけど、絢音が相手なら、忙しくても時間を作れる。


「あるよ、どうした?」

「映画が見たい」

「映画か、いいね。何見るの?」

「もちろんホラー映画、気になるシリーズの最新作のBDが出たの!」


瞳と絢音は映画館にも行くけど、お互いの家で観る方が気楽で好きだ。

でもホラー映画なら絢音の家で見ることが多い。

妹の結衣ちゃんはホラーが苦手だから。


「じゃあ、ご飯の後でいい?」


「うちで食べてもいいよ、お父さんとお母さんは会いたがってるし」

お互いが幼馴染のおかけで、清水家の親とも仲がいい。


「いや、さすがにそこまで面倒掛けない、ごはんのあとにしよう」

「わかった、じゃあまた電話するね」

「了解」



夜。

ソファでコロコロしながらテレビを見てる結衣、瞳が出かけるのに気づいて、話しかけた。


「あれ?お兄は今から出かけるの?珍しいね」

「うん、映画を見に行く」

「絢姉と?」

結衣は少しニヤニヤしていたが、瞳はあえて無視して、逆に反撃する

「そうだ、一緒に行く?」


「ちなみにだけど……ホラー?」

結衣は瞳の態度から察した、恐る恐ると訊く。

「鋭いね」

瞳の口角が上がって、興味津々に妹を見てる。

「はは、二人で楽しんで~」


「はいよ」


絢音の家はそんなに遠くないところにあって、歩き10分程度でいけるからよくお互いの家に遊びに行く。

二階建ての一軒家の前に行って、ピンポンを押すと上品な女性がドアを開けました。


年齢が分からない整った顔立ちには、絢音の面影が少し見えます。

この女性こそが絢音の母親、清水由紀。


彼女は瞳を見て、優しい笑顔を浮かべました。

「あら、瞳くん、いらっしゃい」

「お邪魔します~由紀さん」

「ちょっと待ってね、絢音、瞳くんが来たよ~!」


「なに!瞳くん来たの!?」

絢音より先に、ダンディーな男性が出迎えに現れた。


瞳の背は175センチとまずまず高い方だが、絢音の父親、清水仙海は190センチ台の長身紳士だ。


「お!瞳くん!元気にしてた?」

「はい、仙海さん、元気です」

「一緒に一杯でもどう?」

仙海さんは杯を持ってるポーズをして、瞳に爽やかな笑顔を向けた。


「いや、まだ未成年ですから…」

「はは、冗談だ、お茶でもいいよ」


「だ〜め、瞳は私と映画見るんだから!」

奥の階段から絢音が降りてきて、顔がちょっとムスッとした。


「はは、仕方ないなぁ、今回は諦めて、また今度にしようか」

仙海さんは潔い諦めた。

「あらあら、仙海さん、あまり絢音をからかないでね」


「ほら、はやく部屋にいこう」

絢音は軽く背中を押して、2階へ誘導した。

「わかったから、押さないでよ」


「こっちこっち、さあ、映画を見るよ」


大きなモニターの前に机があって、飲み物とお菓子がきれいに並べられていた。



絢音と映画を見るときの一番の問題は何かと言えば、それは“距離感”かもしれない。

肩越しに微かに隣の温もりを感じたり、時々、向こうから柔らかな感触が伝わってきたりして、瞳の心臓はドキドキする。


映画にあまり集中できないけれど、後の絢音と話すために、瞳は無理やりにストーリーに集中した。

そして、見入れた。




今回見る映画は結構有名なシリーズホラー、B級ですか。


ストーリーに関しては、サメが空を飛ぶところから、瞳は考えるのをやめた。

でも楽しいか楽しくないかと聞くと、結構楽しい。

人はたまに頭を空っぽする時間が必要だ。


何せサメ映画だし、観てるだけでテンション上がるよね。

それに、隣の絢音のリアクションがいちいち可愛くて笑っちゃう。


「やるじゃん、人間」


絢音は時々敵側に回るような発言をして、「そっちに感情移入するんだ?」って瞳は思う。


「ひっ!」


絢音の体がビクッと震えた。

ホラー映画特有のジャンプスケアでまたびっくりした。

彼女は大きな音が苦手で、内容ではなく、ただ声でびっくりする。


1時間半くらいして、映画が終わった。


「は~楽しかった。」


絢音はそう言いながら頭を傾けて瞳に話しかけようとしたが、ちょうど瞳も頭を向けてきた。


ほとんどキスできそうな距離で、二人の視線が交わり、 時間が止まったように感じられた。


「ん」


何を考えているのかわからないけど、絢音は目を閉じた。


「!?」

瞳は目を大きくして、頭が混乱し始めた。


鼓動がうるさいほど響く。動けない。でも動きたい。


(違う、これって……そういう流れなのか?)


キスしていいのか、でも二人は幼馴染でまだ付き合っていないのに。


(でも絢音のまつげは長いなぁ、小顔だしかわいすぎん?)


瞳が考え過ぎて、気まずい空気が流れ始めたその時、救世主が現れた。

ドアをノックする音と共に、由紀さんの声が廊下から聞こえた。

「瞳くんと絢音~もらいもののお菓子あるの、食べますか?」

「あ、はい~!」


そのあと、二人の間に少し気まずくなった。

少ししたら、瞳はそそくさと帰った。


絢音はベッドに倒れこんで、サメのぬいぐるみを抱きしめた。

「バカ、意気地なし……」



その夜、二人ともよく眠れなかった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ★★★★★とレビュー、それにブックマークもどうぞ!

励みになりますのでよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ