よし!ギャルゲーを作るぞ!
瞳はこれまでに、ローグライク系カードゲームや経営シミュレーション、ホラーゲームなど、三本のゲームを手がけてきた。
まだ作ったことないジャンルで選ぶとしたら、ギャルゲーを決めた。
ただ、ギャルゲーには一つ大きな問題がある。
このジャンル、正直言って、すでに時代遅れになりかけている。
あまりこういう言い方はしたくないけど、ギャルゲーで稼ぐのは難しい。
昔の有名ブランドの多くも、すでに解散してしまっている。
今よく見かけるのは、最初にヒロインを一人だけ実装して、
もし反響が良ければ、他のヒロインも追加していく、
そんな「リスク回避型」のスタイル。
でも、そんな作り方で本当に自分の作りたいものが作れるのだろうか?
「絢音はどう思う?」
瞳は画面から目を離さないまま、背中越しに絢音に問いかけた。
「ふーん、そんなことで悩んでたんだ?」
絢音はベッドの端に腰かけながら、右手で瞳の枕をぎゅっと抱きしめていた。
白くて滑らかな太ももに、雪のように白い腕、瞳にとっては、少し目のやり場に困る存在だった。
だから視線をパソコンに釘付けして、極力見ないようにする。
幼馴染の絢音は昔からよく瞳の部屋に来て遊ぶ。
配信者になったから前より来る頻度は減ったけど、瞳がゲーム作りを始めると逆に頻繁に来るようになった。
絢音曰く「ゲームの作りが気になるから」。
瞳も時々彼女の意見を聞いてゲームの作りを調整したり、改良したりしている。
「そんなことで、こっちは真剣に悩んでるんだよ」
「失敗が怖いの?」
「怖くないって言ったら嘘になる。でも、今やることに意味があると思う」
絢音はそんな瞳を見て微笑む。
「ギャルゲーというものは詳しくないけど、瞳には理想のゲーム像、あるだろう?」
「優秀な作品を多く見たけど、自分で作りたいのはまだ決めてないなぁ」
「じゃあ、じゃあさ、最初に一番大事なことを聞くね。瞳はどういうヒロイン好きなの?」
心なしか絢音は少し緊張してる。
「君みたいな人だ」って言い返したかったけど、恥ずかしくて言えなかった。
「好きなものに一途な人かな」
「ふーん」
絢音は意味深な目で瞳を見てる。
「何よ?」
「いや、べつに~」
しばらくして、瞳がぽつりと呟いた。
「強いて言えば、ホラーか怪談の要素に入れてみたいなぁ」
「正気?貞子と恋するみたいな?」
「そうそう、そんな感じ」
絢音は想像してみて、頷く。
「うーん、たしかにそれは面白そう」
「よし、決めた。ヒロインは神社の巫女にしよう」
「巫女さん!いいね!私も好き」
「稲荷神社で、狐の面をかぶった巫女に出会う。そこから始める恋物語、これでどう?」
「いいじゃん、続きが気になる」
二人の話は盛り上がって、ゲームの形もどんどん固まっていく。
「よしよし、イメージが固まってきたぞ!」
瞳はパソコンに計画書を入力し始めた。絢音は興味津々でそんな彼を見ている。
ゲームタイトル:狐の巫女と天気雨
企画案バージョン:1.00
「天気雨?」
「キツネといえば、狐の嫁入りはそこそこ有名な話じゃない?」
「たしかに」
「それに、これは恋愛シミュレーションゲームだし」
ゲーム紹介:プレイヤーは様々な怪談を解決しながら、巫女との関係を深めていく。
恋愛アドベンチャーとホラー要素を組み合わせた独特の雰囲気が楽しめる。
ゲームジャンル:恋愛アドベンチャーゲーム × ホラー
対象プラットフォーム:PC、スマートフォン
ターゲット層:恋愛ADVやビジュアルノベルを好むライトユーザー
巫女、獣耳、狐面など「オタク的美少女文化」に親和性のある人
和風ホラー・怪談好き
「怪談はひとまず五つに決めるか」
「五つだけ?」
「あまり多すぎると本命の巫女さんが影薄くなるから、それに怪談を増やしたいなら後でDLCなり何なりと増やせるし」
「スマホもできるようになるのか?」
「今時のプレイヤーはスマホ愛用するから、技術面はそんなに難しくないはずだ」
ストーリー背景:
宮崎祐真は好奇心旺盛な高校生。
夏休みに両親と一緒に故郷に帰省することになり、
久しぶりに訪れることになった実家で暇を持て余していた。
近くをぶらぶらと散歩することに決めたが、晴れ渡った空の下で急に豪雨が降り始める。
雨を避けようと慌てて近くの建物に駆け込むと、そこが稲荷神社だと気づく。
そこで出会ったのは、狐の面をかぶり、巫女服を着た若い女性だった。
彼女は彼に向かって言った。
「あなた、どうやってここに来たの?早く隠れて!」
そして彼は、人生観を覆すような出来事に巻き込まれることになる。
世界設定: 近代的な村でありながら、説明できない霊的現象が存在する。
超自然的な存在がこの世界に実在している。
テーマ:恋愛、冒険、恐怖
売り:怪談の雰囲気を楽しみながら、巫女とイチャイチャできる。
「ふむふむ、ホラーと巫女さんね、私好きよ。獣耳があるならもっと良き」
「知ってる、何年の付き合いと思ってんの」
キャラクターデザイン
主要キャラクター:
最上白禾:
ヒロイン
オレンジ色の瞳、狐の面をかぶった白髪の巫女。稲荷神の使いであり、超自然的な能力を持っている。
主人公に怪談解決を依頼する。
現代社会に不慣れで、新しい食べ物やゲームが好き。
「要素が多すぎ、ちょっとオタク心をくすぐりすぎじゃないかな?」
「それは狙いだから」
宮崎祐真:
主人公
高校生。好奇心旺盛で、心霊現象に興味がある。
「雑、あまりにも雑!?」
「顔出ししない主人公なんだから、そんなもんでしょ」
ゲームプレイ
ゲームメカニクス:
小さなマップには神社、家、商店、怪談が発生する場所などが表示され、
ストーリーの進行とともに解放されていく。
怪談を解決したり、巫女と会話を重ねることで、二人の関係が進展していき、
最終的には交際に発展する。
プレイヤーの選択が物語の進行に影響を与え、エンディングにも変化をもたらす。
例えば、怪談の解決方法が主人公と白禾との関係に影響を与えたり、選択肢によって新たな探索ルートが開放されたりする。
操作方法:マウスとキーボード
「大体の操作はマウスでいける、スキップとかはキーボード。オートモードも付けよう」
「まあ、基本だよね」
美術とビジュアルスタイル
キャラクター:二次元風のキャラクターデザイン。
怪談のデザイン:童話風で異世界感のあるデザイン。
怖すぎないように工夫し、プレイヤーが恐怖を楽しむことができるようにデザインにする
「えぇ……私的もっとリアルで怖い怪異がいいのに」
「それじゃ客が減るでしょ!却下!」
「えぇ~、そんなぁ〜!」
シーン設計:
神社は田舎の小山の上に位置し、周囲には森林が広がっており、石の階段が続いている。
怪談が発生する場所は、それぞれ異なるデザインとなっており、
ミニゲームを組み合わせてゲーム性を高めている。
「じゃあそのミニゲーム、私がテストプレイしてあげる!」
「頼もしいな、俺のデバッグ要員」
「光栄です、ディレクター殿」
音楽と音響
音楽スタイル:
神社のバックグラウンド音楽は、日常的なシーンでは軽快な音楽が主体で、時にはホラーやミステリー風の音楽を使用。
怪談が発生する場所では、暗く陰鬱な音楽が流れ、怪談が発生する時には特別な効果音が鳴り、プレイヤーの注意を引きつけるように工夫している。
「ひどい、私が音でびっくりするって知ってるくせに、わざとこんな仕様にするなんて!」
「いや、こういうのはホラーあるあるだろう」
絢音は瞳の目が泳いでいることに気づいて、膨れっ面をする。
「あれ、最後のこれって……」
VTuber声優:
知名VTuberを起用して声優を担当させることで、話題性を増し、ファン層の獲得を目指す。
「もしかして、私?」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
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