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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
四作目『狐の巫女と天気雨』

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32/116

よし!ギャルゲーを作るぞ!

瞳はこれまでに、ローグライク系カードゲームや経営シミュレーション、ホラーゲームなど、三本のゲームを手がけてきた。

まだ作ったことないジャンルで選ぶとしたら、ギャルゲーを決めた。


ただ、ギャルゲーには一つ大きな問題がある。

このジャンル、正直言って、すでに時代遅れになりかけている。


あまりこういう言い方はしたくないけど、ギャルゲーで稼ぐのは難しい。

昔の有名ブランドの多くも、すでに解散してしまっている。


今よく見かけるのは、最初にヒロインを一人だけ実装して、

もし反響が良ければ、他のヒロインも追加していく、

そんな「リスク回避型」のスタイル。


でも、そんな作り方で本当に自分の作りたいものが作れるのだろうか?


「絢音はどう思う?」

瞳は画面から目を離さないまま、背中越しに絢音に問いかけた。


「ふーん、そんなことで悩んでたんだ?」

絢音はベッドの端に腰かけながら、右手で瞳の枕をぎゅっと抱きしめていた。


白くて滑らかな太ももに、雪のように白い腕、瞳にとっては、少し目のやり場に困る存在だった。

だから視線をパソコンに釘付けして、極力見ないようにする。


幼馴染の絢音は昔からよく瞳の部屋に来て遊ぶ。

配信者になったから前より来る頻度は減ったけど、瞳がゲーム作りを始めると逆に頻繁に来るようになった。

絢音曰く「ゲームの作りが気になるから」。

瞳も時々彼女の意見を聞いてゲームの作りを調整したり、改良したりしている。


「そんなことで、こっちは真剣に悩んでるんだよ」

「失敗が怖いの?」

「怖くないって言ったら嘘になる。でも、今やることに意味があると思う」

絢音はそんな瞳を見て微笑む。


「ギャルゲーというものは詳しくないけど、瞳には理想のゲーム像、あるだろう?」

「優秀な作品を多く見たけど、自分で作りたいのはまだ決めてないなぁ」


「じゃあ、じゃあさ、最初に一番大事なことを聞くね。瞳はどういうヒロイン好きなの?」

心なしか絢音は少し緊張してる。

「君みたいな人だ」って言い返したかったけど、恥ずかしくて言えなかった。

「好きなものに一途な人かな」

「ふーん」

絢音は意味深な目で瞳を見てる。

「何よ?」

「いや、べつに~」


しばらくして、瞳がぽつりと呟いた。

「強いて言えば、ホラーか怪談の要素に入れてみたいなぁ」

「正気?貞子と恋するみたいな?」

「そうそう、そんな感じ」

絢音は想像してみて、頷く。

「うーん、たしかにそれは面白そう」

「よし、決めた。ヒロインは神社の巫女にしよう」

「巫女さん!いいね!私も好き」

「稲荷神社で、狐の面をかぶった巫女に出会う。そこから始める恋物語、これでどう?」

「いいじゃん、続きが気になる」


二人の話は盛り上がって、ゲームの形もどんどん固まっていく。



「よしよし、イメージが固まってきたぞ!」


瞳はパソコンに計画書を入力し始めた。絢音は興味津々でそんな彼を見ている。



ゲームタイトル:狐の巫女と天気雨

企画案バージョン:1.00


「天気雨?」

「キツネといえば、狐の嫁入りはそこそこ有名な話じゃない?」

「たしかに」

「それに、これは恋愛シミュレーションゲームだし」




ゲーム紹介:プレイヤーは様々な怪談を解決しながら、巫女との関係を深めていく。


恋愛アドベンチャーとホラー要素を組み合わせた独特の雰囲気が楽しめる。


ゲームジャンル:恋愛アドベンチャーゲーム × ホラー


対象プラットフォーム:PC、スマートフォン


ターゲット層:恋愛ADVやビジュアルノベルを好むライトユーザー


巫女、獣耳、狐面など「オタク的美少女文化」に親和性のある人


和風ホラー・怪談好き


「怪談はひとまず五つに決めるか」

「五つだけ?」

「あまり多すぎると本命の巫女さんが影薄くなるから、それに怪談を増やしたいなら後でDLCなり何なりと増やせるし」

「スマホもできるようになるのか?」

「今時のプレイヤーはスマホ愛用するから、技術面はそんなに難しくないはずだ」


ストーリー背景:

宮崎祐真は好奇心旺盛な高校生。

夏休みに両親と一緒に故郷に帰省することになり、

久しぶりに訪れることになった実家で暇を持て余していた。

近くをぶらぶらと散歩することに決めたが、晴れ渡った空の下で急に豪雨が降り始める。

雨を避けようと慌てて近くの建物に駆け込むと、そこが稲荷神社だと気づく。


そこで出会ったのは、狐の面をかぶり、巫女服を着た若い女性だった。

彼女は彼に向かって言った。

「あなた、どうやってここに来たの?早く隠れて!」

そして彼は、人生観を覆すような出来事に巻き込まれることになる。


世界設定: 近代的な村でありながら、説明できない霊的現象が存在する。

超自然的な存在がこの世界に実在している。


テーマ:恋愛、冒険、恐怖

売り:怪談の雰囲気を楽しみながら、巫女とイチャイチャできる。


「ふむふむ、ホラーと巫女さんね、私好きよ。獣耳があるならもっと良き」

「知ってる、何年の付き合いと思ってんの」


キャラクターデザイン


主要キャラクター:

最上白禾もがみ しろえ

ヒロイン

オレンジ色の瞳、狐の面をかぶった白髪の巫女。稲荷神の使いであり、超自然的な能力を持っている。

主人公に怪談解決を依頼する。

現代社会に不慣れで、新しい食べ物やゲームが好き。


「要素が多すぎ、ちょっとオタク心をくすぐりすぎじゃないかな?」

「それは狙いだから」


宮崎祐真みやざき ゆうま

主人公

高校生。好奇心旺盛で、心霊現象に興味がある。


「雑、あまりにも雑!?」

「顔出ししない主人公なんだから、そんなもんでしょ」


ゲームプレイ

ゲームメカニクス:

小さなマップには神社、家、商店、怪談が発生する場所などが表示され、

ストーリーの進行とともに解放されていく。


怪談を解決したり、巫女と会話を重ねることで、二人の関係が進展していき、

最終的には交際に発展する。


プレイヤーの選択が物語の進行に影響を与え、エンディングにも変化をもたらす。

例えば、怪談の解決方法が主人公と白禾との関係に影響を与えたり、選択肢によって新たな探索ルートが開放されたりする。


操作方法:マウスとキーボード


「大体の操作はマウスでいける、スキップとかはキーボード。オートモードも付けよう」

「まあ、基本だよね」


美術とビジュアルスタイル

キャラクター:二次元風のキャラクターデザイン。

怪談のデザイン:童話風で異世界感のあるデザイン。

怖すぎないように工夫し、プレイヤーが恐怖を楽しむことができるようにデザインにする


「えぇ……私的もっとリアルで怖い怪異がいいのに」

「それじゃ客が減るでしょ!却下!」

「えぇ~、そんなぁ〜!」


シーン設計:

神社は田舎の小山の上に位置し、周囲には森林が広がっており、石の階段が続いている。

怪談が発生する場所は、それぞれ異なるデザインとなっており、

ミニゲームを組み合わせてゲーム性を高めている。


「じゃあそのミニゲーム、私がテストプレイしてあげる!」

「頼もしいな、俺のデバッグ要員」

「光栄です、ディレクター殿」




音楽と音響

音楽スタイル:

神社のバックグラウンド音楽は、日常的なシーンでは軽快な音楽が主体で、時にはホラーやミステリー風の音楽を使用。

怪談が発生する場所では、暗く陰鬱な音楽が流れ、怪談が発生する時には特別な効果音が鳴り、プレイヤーの注意を引きつけるように工夫している。



「ひどい、私が音でびっくりするって知ってるくせに、わざとこんな仕様にするなんて!」

「いや、こういうのはホラーあるあるだろう」

絢音は瞳の目が泳いでいることに気づいて、膨れっ面をする。

「あれ、最後のこれって……」


VTuber声優:

知名VTuberを起用して声優を担当させることで、話題性を増し、ファン層の獲得を目指す。


「もしかして、私?」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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