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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
三作目『退院』

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26/116

退院おめでとう!でも……また“誰か”が帰ってくるだろう

テケテケをまいた後、琉璃と天歌は少し休憩した。

そして、琉璃はさきほど手に入れたノートを開いて読んだ。


ノートは誰かの随筆のように見える。

「ここの読み上げは天歌に任せるね」

「わかった、えっと…」

天歌はノートに目を落とし、読み始めた。


【あいつから儀式を教わった後、目的を達成するには、生け贄を捧げる必要があると知った。】


「え?なに?私たちって、生け贄として捕まったのかな?」

天歌の声は少し震えている。

「ああ、だからシオンちゃんの服があんなにボロボロなんだ」

琉璃は冷静に推測した。


【儀式には霊力のある特別な場所が必要だ。でも、そんな場所には心当たりがない。

幸いにも、あいつが直接場所を教えてくれた。

千峰病院、かつてあいつが所属していた教団によって設立されたらしいが、何かの理由で廃院になった。】


:教団って?

:ここはやばい所だなぁ

:あいつって誰?


「へーここが千峰病院だったんだ」

琉璃は「ふむふむ」と頷いた。

「廃院の理由って何だろう?知りたくないけど、すごく気になる」

「気になるよね、それに教団も謎がいっぱい」


【儀式はすでに設置完了、生け贄も準備できた...最近、意識がしばしば途切れ、頭の中で何かの声がずっと話しかけてくる。

ダメだ、ここで倒れるわけにはいかない、まだ叶えていない願いがあるんだ...】


ノートの文字は後半に進むほど、どんどん乱れて狂気を帯びた筆跡に変わっていった。



「お兄ちゃん、ホラーゲームって、必ずこういう『ノート的な物』が出てくるけど、不自然じゃない??」

結衣は思わず愚痴をこぼした。

毎回、黒幕みたいな人が日記を書いて、出来事の経緯を説明している、まるで、自分のやったことを誰かに知らせたいみたい。

「まあ、ストーリーを進めたり、雰囲気を作るには、これが一番手取り早い方法だからさ」

瞳は目をそらして、「ははっ」と乾いた笑い声を漏らした。


琉璃は途中で罠にかかって何度かやられたが、探索は順調に進んでいた。


そして、二度目に出会うテケテケ。

急に廊下に出たテケテケは一瞬止まり、ものすごい勢いで突進してきた。

「出たー!」

天歌は高い声で叫んだ。

「また出た!……え、なんか前より速くない?」

琉璃はキャラクターを操作して振り向き、走り出した。

階段を駆け下り一階に到達した時、真っ正面から、大斧を持った巨人が迫ってきた。

まさに前門の狼、後門の虎。


「もうダメだ……これで終わりだ……!」

天歌は絶望的な表情を浮かべた。

「いや、まだだ!」

琉璃は諦めず、前後からの挟撃の中で生き残る道を探し続けた。

巨人は右手で斧を高く掲げ、力強く振り下ろした。


「えっ……?」

何故か、シオンではなく、斧はテケテケの身体に深く突き刺さった。

テケテケは悲鳴を上げ、一瞬苦しんでもがいた後、動かなくなった。

その隙にシオンは現場から逃げ出した。



テケテケも倒され、いよいよストーリーは終盤に近づく。


「木の板、何かの足場になれそう?うーん、どこだろう?」

琉璃は新たに拾ったアイテムのテキストを読んで考えた。

「たぶん、右の階段なんじゃないの?」

天歌はそう言った。

「よし、行ってみよう!」

琉璃は天歌の言う通りに右の階段に行って、崩落した階段上に木の板を置いた。

板が橋になり、道が通れるようになった。


「できた、天歌ちゃん、天才!でもこれでどうかした?」

琉璃は首を傾げた。右側の階段が通れるだけで、何が変わるんだろう?


その答えは、すぐにやってきた。


背後から響く巨大な咆哮。

気づけば、巨人がシオンの背後に迫っていた。


「やばい、来てる来てる……!」

「大丈夫、逃げられる」


琉璃は冷静にシオンを操作して、木の板を使って逃げることにした。

巨人は迷うことなく追いかけてきたが、

木の板を踏んだ瞬間、巨人の重さに耐えきれず、板が割れた。


巨人はそのまま落下し、鋭い石柱が胸を貫く。

絶叫と共に、手をシオンへと伸ばすが、途中で力尽きたように垂れ下がった。


「……死んだ?」

天歌は恐る恐る尋ねた。


「さすがに死んだじゃない?」

琉璃は巨人の死体に近づく。


【正門のカギ を手に入れた】


「カギだ!やったー!ついに出られたーっ!」

天歌は両手を上げて嬉しそうに叫んだ。


「いや、まだ安心できない」

琉璃は正門に行って、カギを使った。

正門が開いた、やっと廃病院から脱出できる。


:クリアおめでとう!

:クリア?


「クリアおめでとう、ありがとう!お?」

タイトルに【すべての始まり】という選択肢が増えた。


「よし、作業を始めようか」

ここまで見て、瞳は琉璃の配信流しながらパソコンのソフトを起動した。

琉璃は今から事件の真実を探究する。


俺の名前は佐藤勤。

しがないサラリーマンだ。

人生には一つ誇りに思えるものがあるとすれば、俺はあの子の父親だ。


:だれ?

:知らないおじさんだ


「この人は一体?」

琉璃と天歌は首を傾げる、

佐藤勤という中年男性は、これまでのストーリーに一度も登場していない人物だ。


でも、運命は残酷で悪趣味だ。

嫁に止まらず、俺からあの子を奪われた。

まるで悪夢を見ているかのような葬式の時、あいつに出会った。

「娘を生き返らせたいか?」

もちろんだ。娘が戻るなら、何でもする。

「なら、少し手助けしよう。何、簡単なことだ」


:だめだ、それは悪魔の囁きだ!

:このおじさんまさか......


そして、操作キャラクターは佐藤勤に切り替わった。

そこからはまるで別のゲームだった。


まずは病院に忍び込み、娘を轢いた運転手をさらう。

次はストーリーに登場した廃病院で儀式を準備する。


「やっぱり佐藤さんは...」



儀式が完成したとき、佐藤勤はもはや人ではなかった。

彼は巨人となり、右手には運転手を処理したときの斧を握っていた。

最後の意識で、娘からできるだけ遠くに離れようと、病院の奥へと姿を消した。



琉璃は辛そうに読み進めていた。彼女はこういう親子の話に弱いのだ。

天歌もすすり泣いている。


:お父さん;;

:泣いた

:これは、雨だ……涙じゃない


「お兄ちゃん、人の心ってものがないの!?あまりにもひどすぎるよ!」

結衣は不満そうに瞳を睨んでいる。

「でも、ゲームだからさ。この展開、印象に残るでしょ?」

「ふん!お兄ちゃんのバカ!」

「ごめんって、でも娘さんは助かっただろう?」


ゲームのエンディングの最後に「Thank you for playing」、タイトル画面に戻る時に、一瞬ノイズが入り、廃病院の前に立つシオンが一瞬だけ目が赤くなった。

「まだ何があるの?」

結衣は気になって聞いた。

「いや、これで全部。あれは伏線の演出だよ。続編で使うかどうかは未定だけど」



「これで完全クリアかな?楽しかった……っていうのはちょっと違うけど、

天歌ちゃんの悲鳴、たくさん聞けたから私は満足!」

琉璃の顔はすごいニコニコしてる。

「ひどい!?琉璃ちゃんのドS!」

「へへ、それではまた次のホラーコラボにお会いしましょう!締めの挨拶はどうする?」

「次もホラーに決めたの!?私は嫌だよ、えっと、おつセイラるりで?」

「いいね、じゃあ!」

「「おつセイラるり~!またね~」」


「終わった、ってお兄ちゃんは新しいゲーム作ってる?」

「ううん、『ネコ待ちカフェ』のDLCだよ。ゲームモード、ネコの種類、動き、あと新しいお客さんも追加する予定」

これは前作のDLC。プレイヤーからの熱い要望と黒崎さんからの期待もあり、瞳は制作を決めた。


「おお、結構追加するね。でもこれ、お高いでしょう?」

「いや、無料で出そうと思います」

「無料?」

「無料」

「おお、太っ腹だね」

「じゃあ、私お風呂入ってくる。寝るときまた来るからね」

「おう」


結衣はホラーが苦手なので、毎回ホラーを見た、必ず一緒に寝たがる。

なぜ苦手なのにホラーを見るのか?それは絢音の配信だから、

決して、瞳のせいじゃないのだ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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