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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
六作目『異星の下:ラ=ライエの召喚』
100/100

いつも、あなたの一番でありたい

ゲームをプレゼントするなら、まずは形にしないといけない。


瞳はモニターに向かい、ひたすら作業を続けていた。

今回のゲームは二つのパートで構成されている。

本編のホラーアドベンチャーに加え、VTuberとしてデビューしたばかりの先輩のために、VTuber用のキャラメイクシステムも実装する予定だった。

ライブ配信で自分なりのVか、配信者のモデルを導入できるようにして、没入感を高める――それが瞳の狙いだ。


だが、背後からじっと注がれる視線が瞳を集中させない。

怨めしそうなほどの視線だった。


「……どうしたの?」

振り返ると、絢音がベッドの上で自分の枕を抱きしめて座っていた。

特に怒っているようでもないが、どこか拗ねたような表情をしている。


「別に、なんでもないよ」

絢音はそう言うが、目線は逸らさない。


瞳はしばらく見つめ返したが、何も言ってくれそうにないと判断し、

「わかった。もし俺にできることがあったら、ちゃんと言ってね」

そう言って再び作業に戻った。


「……そんなの、言えるわけないじゃん。」

枕に顔をうずめながら、絢音は小さく呟いた。

「瞳のゲーム、いつも一番に遊びたいなんて」


「そうだ、ゲームはまだ途中だけど、先に先輩に連絡しておこうかな」

瞳がコードを打つ手を止めて言った。


「晴香先輩に? なんて言うの?」

「もちろん、ゲームのこと。せっかくだから先輩に先行配信してもらおうと思ってる。

新しいゲームの配信で視聴者を集めるのもいいけど、やっぱり本人の気持ちも大事だし」

もしかしたら、本人は嫌かもしれないし


「なるほどね」

絢音がうなずく。


瞳は浅海先輩にメッセージを送り、「VTuberを題材にしたホラーゲームを作っていて、配信してもらえたら嬉しい」と伝えた。

すぐに既読が付き、返ってきたのは――「?」の一文字。


その直後、スマホが震え、電話がかかってきた。

画面には「浅海先輩」の名前。

「先輩、こんばんは」


「こんばんは、長谷川くん。さっきのメッセージ、どういう意味?」

受話器の向こうから聞こえてきた声は、実際の外見よりもずっと若々しく、まるで少女のようだった。

「先輩、最近VTuberとしてデビューしたじゃないですか?」

「……知ってたの? まさか配信まで見たの?」

「えっと、はい。いけませんでしたか?」


少しの沈黙。息を整えるような音が聞こえてきた後、

「……まあ、いいわ。続けて」


「はい。絢音がスーパーチャット送ってたの見て、自分も何かしたいなって。

それで、先輩にこの新作を初めてプレイしてもらえたらと思って」


「そんな、大げさな……別に気にしなくていいのに」

「いえ、狐の巫女のときも先輩にはすごくお世話になったので」

「それは普通の依頼だっただけよ」


瞳は首を振るように言った。

絢音の頼みで、忙しい中キャラデザインを引き受けてくれた恩を、彼は今も忘れていなかった。


「……で、そのゲームって、ホラーなの?」

「はい。VTuber要素を盛り込んだホラーゲームです」

「……それが、私への“お礼”ってわけ?」


小さく何かを呟いたが、瞳には聞き取れなかった。

「え? 今、何か言いました?」

「ううん、なんでもない。気持ちは嬉しいわ」

「それならよかった」


少しの間が空いたあと、浅海先輩の声が柔らかくなった。

「……長谷川くん」

「はい?」

「もしよければ、絢音ちゃんと一緒に配信してもいいかしら?」


「えっと、僕は構いませんけど……本人にも聞いてみます」

「えっ、絢音ちゃん、今そっちにいるの?」

「はい」

「こんな夜に?」

「……はい?」

「ふーん、なるほどね。それじゃ、聞いてみて」


瞳は後ろを振り返り、

「絢音、先輩が一緒に配信したいって。どう思う?」


「えっ、一緒に!?」

目を丸くした絢音は、次の瞬間、勢いよく身を乗り出した。

「もちろん! 大歓迎だよ!」


「先輩、絢音も賛成です」


電話の向こうから、抑えきれない笑い声が混じった声が返ってきた。

「わかったわ。じゃあ詳細はまた今度ね。今は……お邪魔しないでおく」


「え? お邪魔って、先輩? ちょっと待っ――」


通話はそこで切れた。


「どうかしたの?」

絢音が首をかしげる。


「うーん、なんでもない。……ゲーム作り、続けるよ」

「うん!頑張ってね~」


キーボードの音が部屋に戻る。

その後ろで、絢音の鼻歌が小さく響く。

その穏やかな声に、瞳の口元が自然と緩んだ。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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