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木木交交
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木々の色
悲喜交交に移ろいて
泣いて笑って請いてまた泣き
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泰然自若として聳える木々は
その実とても情緒纏綿だ
春になれば葉を茂らせて花を咲かせ
全身で生命との出会いの喜びを表現するし
多くの生命が眠りにつく秋ともなれば
涙の代わりに葉を散らし
寒くないように地に温もりを掛ける
感情的故に恋もする
陽が傾いて
太陽の視線が合うようになると
途端に木々は紅く色づく
切なく寂しい秋などは
より良く自分を見せるためなのか
イチョウは黄金色に輝くし
桜や紅葉は恥ずかしがって頬を赤く染める
別れ難くて中々その手を離さずに
一枚の葉が枝に揺れる姿などは
よく見る光景だ
冬にもなればただひたすらに
新しい出会いを夢見て春を待つのかと思えば
雪が降れば手をつなぎ、
雨が降っても氷柱を手にして
いつも誰かと共にいる
気が多いのか
愛情深いのか
数多の生命が木々に依って立つのも
そんな木々の性格を知っているから
かもしれない
【補足】
泰然自若:おちついていてどんな物事にも動じない様
情緒纏綿:愛情が細やかな様。情が深くて離れられない様




