初めての春
初めての春、新しい学年が始まる日。校門前の道路には、生き生きとした気配が漂っていた。朝日がそっと顔を出し、街全体が明るさに包まれる中、新一年生のための新たな冒険が幕を開けようとしていた。
歩道には元気いっぱいの新入生たちが集まり、制服姿が華やかな雰囲気を醸し出している。リュックサックを背負い、制服のボタンをきちんと留め、彼らはわくわくとした期待に満ちた表情を浮かべていた。
その中に、しっかりとした表情をした紗矢もいた。彼女は友達と話しながら、新しい友情が芽生える予感に心躍らせていた。道路には笑い声と歓声が響き、新たな一歩を踏み出す喜びが感じられた。
校門の前に立つと、先輩たちが笑顔で出迎えてくれた。彼らの存在が新入生たちに安心感と温かさをもたらしている。校内へ足を踏み入れる瞬間、緊張感と興奮が交錯して、胸が高鳴った。
交差点の向こうからは、慌ただしく近づく車の音が聞こえてきた。紗矢はその音に気づいて足を止め、不安な表情を浮かべた。道路を渡る際、紗矢は一瞬、車と目が合い、心臓が高鳴った。
そして突然、車が制御を失い、紗矢に突っ込もうとしていることに気付いた。周囲の声が一つに結集し、歓声と叫び声が交錯する中、紗矢は体を動かして避けようとしたが、時すでに遅く、車との衝突が避けられなかった。
その瞬間、激しい衝撃と痛みが紗矢を襲った。体が空中に放り出され、地面に叩きつけられるようにして倒れた。周囲のざわめきと混乱が彼女の耳に入り、視界が歪んでいくような感覚が広がっていった。
痛みに耐えつつ、紗矢は必死に意識を保とうとした。しかし、その時、突然、彼女の名前が呼ばれる声が聞こえた。それは母親の声だった。彼女は交差点の向こうから駆けつけ、息子を心配する視線を紗矢に向けていた。
「紗矢! 大丈夫!?」母親は叫びながら慌てて紗矢に近づき、彼女の体を支えた。紗矢は母親の温かい手に触れ、安心感が胸に広がったが、その後、衝撃と痛みに再び襲われ、意識が徐々に薄れていった。
母親の声が遠ざかり、周囲の光景がぼやけていく中、紗矢は意識を保つことができずに闇の中へと沈んでいった。