第一話 偏屈祖母からの突然の便り
誤字脱字報告どうもありがとうございます! いつもたいへん助かっています!(すみません汗)
感想やご評価も嬉しいです! ありがとうございます!
蝋燭を1挺、2挺、3挺……と数えることがあると知って、それがなんか印象に残り、蝋燭を小細工に異世界恋愛・ざまぁモノ書いてみました。
【ウバクロネ様】から本作へ素晴らしいイラストを賜っております!<https://37616.mitemin.net/i734778/>
【ウバクロネ様のマイページはこちら】<https://mypage.syosetu.com/1733287/>
【ウバクロネ様のみてみんページはこちら】<https://37616.mitemin.net/>
急に、ほとんど会ったことのない祖母から連絡が来た。
私がこの祖母にほとんど会ったことがないのは、私の母が実母であるこの祖母を極力避けているからだ。
祖母はカローレス侯爵である祖父に嫁ぎ、私の母とその姉に当たる伯母の二人を産んだが、すぐさまこの二人の娘を養女に出した。理由はなぜだか分からない。そのうち男児を産まなかったという理由で祖父と離婚したということだ。しかし祖母は実家には帰らず、離婚の際に得た財産で細々と一人暮らしをしているという話だった。
母や伯母は成長した後も、産んだ母のことがそれなりに気にかかり連絡を取ろうとしたのだが、祖母は頑なに会おうとはしなかったようだ。何度連絡してもなしのつぶての祖母に対して、そのうち母も伯母も嫌な気持ちになったようで、ある時を境に祖母のことは全く縁を切ることにしたらしい。
祖母の方はとっくに縁を切ったつもりだったのだろうが。
その後も祖母は人付き合いを厭い、社交界に出た噂を聞くことはなかった。
そんな話を断片的に聞いて育ったため、私は祖母は心のない人なんだろうと思っていた。
母方の祖父の方はと言えば、実は私の母と伯母のことは手元で育てたかったらしく(つまり実質的には祖母が私の母と伯母を手放したということだ)祖母と離婚した後娘たちを速やかに手元に戻し、カローレス侯爵家の令嬢として大切に育てた。
その後祖父は再婚をしたが、新しい奥方は気持ちの良い人で、私の母や伯母のことを可愛がってくれたそうだ。念願の男児も生まれたがそれで母と伯母への待遇が変わることはなく、家族はまあうまくいっていたらしい。
私も祖父はとても大好きだ。温和で明るい。
祖父と義祖母、私の母、叔父に当たる人、そして私の関係は良好だ。
この明るい家族に祖母の影はない。
一度だけ、私を甘やかしてくれる祖父に子どもの頃何気なしに祖母がどんな人だったのか無邪気に聞いた事がある。祖父は言葉を選ぶように「心を閉ざした人だ」とだけ言った。幼い私には意味は分からなかったが、何となく「本当の祖母は駄目な人」という印象が植え付けられた。
そんな祖母から『私』宛てに手紙が届き、「お願い事があるから寄ってくれ」と言ってきたのだ。
私はこんな謎めいた形式上の祖母からいきなり会いたいと言われて、たいそう驚いた。
「なぜ私なの」
と私は母に聞いてみた。
なぜ母ではなくて私なの、という意味だ。
母は困った顔をして「小さい頃から連絡を取りたいと言ってきた私を散々無視したあの人ですからね。さすがに今更向こうの都合で私を呼びつけるなど虫が良すぎると思ったんでしょうよ。それくらいはわきまえているのね」と厭味っぽく言った。
自分の返事があまりにも厭味っぽ過ぎたのを恥じたのか、母は気を取り直すようにコホンと咳払いをして、
「それはそうと、あなたの従姉のアンリエッタのところにも声がかけられたみたいよ。でも体調不良とかで会うのは断ったらしいわ」
と付け加えた。
アンリエッタというのは伯母の娘。アンリエッタ・グレンフィールド侯爵令嬢。
気が強い美人で頭もよいため、そこそこ宮廷でも名の通った令嬢だ。
アンリエッタが体調不良……。
私はアンリエッタのいつも溌溂とした顔を思い浮かべた。
体調不良だなんて絶対嘘だ。何か不利益を感じて会いに行かなかったに違いない。
私はアンリエッタに相談することにした。
たまたま翌日時間があるということで私がアンリエッタに会いに行くと、アンリエッタは従姉妹ならではのくつろいだ様子で、私室の方へ私を案内してくれた。
「アレの件?」
アンリエッタはうっすらと私の用件を勘付いていたようだ。
私が肯くとアンリエッタは少し意地悪そうに笑った。
「私がなぜおばあさまの呼びつけを断ったかってことよね。叔母様はあなたに何にも言ってないの? あの人、けっこうヤバい人みたいよ」
「ヤバい?」
私は祖母が『ヤバい』と言われるほどの人だとまでは思っていなかったので、少し慌てて聞いた。
アンリエッタは秘密を話すときの仕草で私の耳元に近づいた。
「そうよ。おばあさまの実家が公爵家だったことくらいは知っているでしょう? おばあさまって今の国王陛下の婚約者だったそうなのよ」
「えっ!?」
私は驚いた。全く知らなったからだ。噂さえも聞いたことがなかった。
まあ確かに、現在夫婦仲睦まじく孫までいる老齢の国王がご成婚前に誰と婚約していたかなんて、今更誰も口にしない。だから私が知らないのも無理はないかもしれなかった。
しかし、それにしても。
祖母が国王陛下の婚約者だったなんて。婚約破棄されたということだろうか。
もしそうなら、当時それはよっぽどのスキャンダルだったに違いなく、何となく祖母の人嫌いの理由が分かる気がした。
「なるほどね。アンリエッタはよく知っているのねえ」
私は納得の声を出した。
アンリエッタは少し得意気に微笑んだ。
「私は古参の公爵夫人のサロンとかにも顔を出しているもの」
「でもなんでおばあさまは国王陛下と結婚なさらなかったの」
「国王陛下が別の方を好きになったんですって」
「ああ、それが今の王妃様ね」
私は仲睦まじい国王夫妻の顔を思い浮かべた。
しかしアンリエッタは苦笑しながら否定した。
「違うわ。王妃様の前に一人いらっしゃったそうよ」
「え? ちょっと待って。王妃様じゃない?」
「そうよ。おばあさまと国王陛下の婚約破棄の理由になった方は別の方。そしてねえ、なぜだかその方は後に修道院に入れられたそうよ」
私は少し頭がこんがらがった。
「どういうこと!?」
「その方はおばあさまに色々言いがかりをつけて国王陛下との婚約を破棄させたそうなのですけど、言いがかりが色々捏造だった挙句、国王陛下に近づくために悪いことにも手を染めていらしたそうで。すぐに国王陛下がそのことに気付いてその方を断罪、修道院送りにしたそうよ」
「では、なぜおばあさまは国王陛下と再婚約なさらなかったの。いいがかりは捏造だったのでしょう?」
私は悔しくなって聞いた。
私の脳裏にはまた仲睦まじい国王夫妻の像が浮かんだ。あの王妃のポジションにいたのは私の祖母だったのかもしれないのだ。今となっては誰も良い噂をしない人嫌いのあの祖母が。
「なんでおばあさまが国王陛下とよりを戻さなかったのかは知らないわ。でもまあ国王陛下はそののち今の王妃様に出会い、そしてこの仲の良さよ。祖母のことなど蒸し返してもいいことなんか何一つないわ。それより祖母の名前が出ることで、王妃様の心証が悪くなるかもしれないじゃないの。私が祖母に会っただなんて王妃様に知られたら二心あるように思われちゃう。今のこの王宮は王妃様の親族が牛耳っているようなものなんだから、少しでも疑われるような真似しちゃだめよ。あなただって今後縁談の話とかに支障が出るかもしれないわよ? おばあさまには会わないことよ」
アンリエッタは断じた。
私はなんだか腑に落ちなかったけれど、聞かされた話がとんでもない爆弾だというのは何となく分かったので、半自動的に頷いた。
本作に興味を示してくださりどうもありがとうございます!!!
とっても嬉しいです!!!
全10話です。
短めのお話ですので、すでに全話UPさせていただいております。
次話、祖母が女主人公を呼び出した理由が判明します。
もし少しでも面白いと思ってくださいましたら、
下のご評価欄☆☆☆☆☆や感想などいただけますと、今後の励みになります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。