#01 初心者の迷宮にいこう!
「こ、こんにちわ」
ある日、ギルドに新しいお客さんが入ってきた。当ギルド切手の美人受付嬢エルミーラさんの話によると彼女は新人冒険者で、まだパーティーも組めていないひよっこだそうだ。
何度かここに来たことがあるらしい金髪をショートボブにした少女は、今日は面談をしに来たらしい。
面談とは担当のギルド職員と読んで字の如く面談をして今後の冒険者としての活動方針を決めていくというものだ。少女は冒険者ギルドに加入してまだ日が浅いということで、初めての面談になるとのことだった。
ほぉほぉと頷きながら話を聞いていると、「丁度いいからデュクスくんあの子の面談の場所に一緒について言ってくれないかな?」と話していたエルミーラさんに言われたので、少女が通された面談室へと足を運んだ。エルミーラさんはこのギルドの看板受付嬢であると同時に受付嬢内で最も序列が高い。すなわち偉い人なのだ。なので逆らえない。さっさと面談室へ向かうとしよう。
エルミーラさんに言われるままに面談室に入ると、金髪の少女に訝しげに見られた。しかし、少女はすぐに視線をそらすと、お願いしますと担当ギルド職員であるアルファさんに向き直った。とりあえず行き場のなくなった俺はアルファさんの後ろに立って話を聞くことにした。エルミーラさんに言われてきたと言ったらアルファさんは何も言うことはなく、そこにいてくださいと言ってきたので、俺は棒立ちで二人の話を聞くことにした。
面談は何が起こるわけでもなく淡々と進んでいっった。
彼女の名前はニーヤ=アストライヤと言って、ここらへんの大地主をやっている家の一人娘らしいのだが、両親の金遣いが荒く実家は破産、借金返済の日々に嫌気が差したニーヤは冒険者として生きていくことに決めたらしい。こんなに辛い人生を送っていてまだ18歳というのだから驚きだ。
特技は土魔法で、中級程度までなら使えるらしい。冒険者の最初で中級まで使えるのならばそこらへんのパーティーで引っ張りだこだろう。しかもまだ18歳なだけあって伸びしろもあると来た。しかし、そんな優良物件な彼女だが、この面談に来るに当たって一つ悩みがあるらしいのだ。それが・・・
「わ、私、男性恐怖症なんです!!」
冒険者としては致命的な欠点がそこにはあった。
なにせ冒険者という職業は実力社会だ。腕力や魔法力が物を言う。もちろん女冒険者で名を馳せている奴らもいるにはいるのだが、そいつらのような一部を除いて冒険者のトップランカーたちは皆男だ。しかも俺のような男のギルド職員にも話しかけられないとすると、モンスターを倒してきた素材などを売却するときや、依頼の達成報告をするときなどに困るだろう。
すると、俺の前に座って話を聞いていたアルファさんが急に顔をバッと上げニーヤの方をじっと見つめ始めた。
「えっ?な、なんですか?は、はずかしい・・・です。」
じっと見られて恥ずかしがるニーヤをよそにアルファさんはこちらに振り返って、俺に向かってこう言ってきた。
「デュックスくん。君いき給え。」
「え?」
「だから、ニーヤくんに足りないのは実力でも、資格でもないのだよ。男性になれることこそが大切なんだ。君ならばわかるだろう?冒険者をやっていくのに男性恐怖症なのはこっち側が困る事態に発展しかねないからね。キミと一緒に行動して男性に慣れてもらおう。」
アルファさんは早口でそうまくし立てると、「ニーヤくんだって、直したいとは思っているんだろう?」とニーヤにも同じようなことを早口でまくし立て、まぁ、はい。と言わせるまでに至っていた。
じゃあ決まりだ!と、アルファさんの圧に押された俺とニーヤの二人は、最初のダンジョンと呼ばれる“初心者の迷宮”まで来ていた。
「あーっと、ニーヤ。今回はこの初心者の迷宮の真相まで潜ってみるということを目標にやっていくけど大丈夫かな?」
俺がニーヤにそう問いかけると、ニーヤはプルプルと震えながらもコクコクと頷いてくれた。
「じゃあ行くか。」
俺はニーヤに絶対に後ろから離れないようにと釘を差したうえで初心者の迷宮へと足を踏み入れるのだった。
設定開示
本作の主人公デュックスは現在28歳です。冒険者ギルド“ユニゾーン”に雇われたのが25歳のときなので今年で4年目の中堅社員です。