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決闘? そんな次元じゃありません!

当日というものは当り前に訪れるわけで、急に事が展開したわけではない。ほんのわずかながらの期間で準備が出来るわけではない。


頭で分かっていたとしても、止められない成り行きもあるという事だ。運命やさだめめなんて微塵の良心を感じられない道しるべに何を託す必要があるのだろうか。ただの結果として受け入れる他にないからだ。


だから、私の目先に動かないシルルの姿がある。こうべを垂れ、自分の選択に自問する。



『本当にこれでよかったのか?』



半刻前、私たちは指定の場所に赴いた。廃坑となった鉱山跡地が戦いの場に選ばれる。


「どうじゃ、雰囲気があるじゃろ?」

「いや、先輩。こちらは命がかかっていますから、場所がどうのこうのと言っている場合ではありませんよ?」

「分かっておる。相手も殺意むき出しで待っておるじゃろう」


不安の要素は拭えないほどあるが、二人に賭けるしかない……いや、ここは守るべきだろうか? 一方的な命の奪い合いになる戦いになんの得がある。


「どうした、元気がないのう」

「当り前ですよ、こんなにも弱者をいたぶる決闘……決闘にもなりはしないでしょうね。それを平然と認めるあなたは敵と認識しても間違いはないでしょう」

「やれやれ、危なかったら仲裁に入る。それは約束しよう。我が責任者でもあるからな」

「約束? はっ、悪魔が対価もなしに約束など守ることがありますか? 答えは言わずもがな……」


けっして明るい話というわけではない会話をしている私の後ろに二人の決闘者いる。


表情は緊張し冷凍されたように固まっている。歩き方もどこかぎこちない。当然だろう、勝てない相手との勝負なのだから。


「先輩、私は試合に望む前に考えてたことがありますよ」

「なんじゃ?」

「本当に殺したいと思っているのは先輩なのではないですか?」

「藪から棒ないいようじゃな。根拠がないぞ?」

「理由ならいくらでもあります。まずはこの決闘が突然過ぎたこと。そして、人間やシャムシェと戦わせるという馬鹿げたものであること。先輩、あなたはシャテラとレイビーに火を焚きつけた。違いますか?」

「だとしたらどうするのかの?」

「私は全力でこの決闘に割り込みますよ」

「それはレイビーや、我とルトバルルを含めて相手をするのか?」


私はその言葉を訊き、足を止めた。


その時の私には肉眼でも確認出来るほどに殺意をむき出しにしてただろう。


「えぇ、なんなら6大悪魔を全員相手する覚悟ですよ? 階級や身分なんて関係なく」

「……そうか」


先輩が一瞬だけ息を詰めた? 何かがあるという事は理解したが……カルメラちゃんが死んだ時の再現か? 私の感情を破壊し殻をでも砕きたい思惑があるのかもしれない。


「まあ、心配するな。約束を破れば、左目でもえぐってお前にくれてやろう」

「気持ち悪いので遠慮します」


そうこうと話していると、目的の場所につく。そこには当り前のように殺意をむき出しなシャテラとレイビーの姿があった。


威圧するにしても、もう少しは平静さを保ってほしいものだ。こちらは狩られる立場にあるのだから――。いや、その言い方ではカルメラちゃんとシルルに悪意がある。


「到着しましたか。メイサこちらは何時でも準備は出来ていますよ」

「でしょうね、そこまで殺意と威圧を同時に飛ばせるほどに狂った強者いるならば、ここで私が潰して差し上げましょうか?」

「それはルール違反だ。これは6大貴族の公認した決闘、どのような理由があろうとも承諾したからには厳守を」

「そのふざけた決闘になんの意味がある!! 悪魔自身の本来の姿の露呈か!? 例え、あなたが父親であろうとも凶事に割さく時間などない!!」

「まつにゃ!」


私は抗おうとした。だが、シルルの一言に意識は揺らぐ。その言葉の答え。シルル、あなたはこの状況でも逃げずに戦う決意を?


「おっさん、ウチらが勝ったらいいにゃんにゃ?」

「えぇ、メイサから出された特殊な条件がクリアされれば、あなた方の勝ちです。その後に何が起きようとも、私が二人をお守りします」

「ならいいにゃ」


そう言って、シルルは前に歩き始める。怖いと思うのは久しぶりだ。だが、私以上に怖いのはシルル達だろう。


悔やむ中でシルルは横を通り過ぎる際に、耳元に「メイサ、大丈夫にゃ」と、告げる。


右手を高く挙げ、自らを鼓舞する様子にも言葉はでなかった。止めることも、逃げることも……。


「あら、猫が相手なのねぇ……」


重く、圧を感じる言葉に危険を感じ取った。『確実に殺しにくる』そう確信した。


「ウチはおまえを倒すにゃ」

「そう……手足がいくつ胴体から切り離されのかしらぁ……うぬぼれるなよ妖怪」


笑顔から放たれる怒りのこもった台詞。何も起こらないという保証は消し飛んだ。本当に先輩や親父と戦う覚悟を私も決めなければ……城に残られた姫様、私たちが還らぬ時は――。


「用意がいいなら、いつでも仕掛けてよいぞ。シルルとかいうシャムシェ、死んでくれるなよ」

「ふん、ロリババァに勝つことしか考えてないにゃ!」

「いい覚悟じゃな」

「きなさい、この泥棒猫」

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