ちょっと雑談、階級って?
翌朝、朝食を目の前にし、私は皆が食べている最中でも考え事で食べることを忘れていた。
このまま戦えば、二人の命の補償はない。蘇生ずる方法があっても、以前のカルメラちゃんのように魂を接着剤代わりに使用できる事など稀だ……ふぅむ。
「メイサ、食べないの?」
考えの最中に姫様は私の事を気遣ってくれてか、食卓から身を乗り出し、小さな手でパンを掴み、私に差し出してくれる。
おお、なんとお優しい方なのだ! と思いつつも思考はパンよりも事態の改善に向けられる。
「食べないやつはほっとくにゃ」
「でも……」
「シャレル、師匠は考え事に集中しているから邪魔したら駄目よ」
「何を考えてるの?」
「そうね……多分だけど私とシルルさんの事だと思うわ」
「えぇー、ずるいー」
「シャレル……そんな私事で何かを考えているわけじゃないと思うの、私たちのために何かを考えているのは確かな事」
「ウチもそう思うにゃ」
「うーん、みんなの事を考えてるんだね」
姫様には悪い事をしてしまっているとは分かりますが、すみません。思考が姫様の厚意までもをないがしろにするほどに、私の意志を奪うのです……パンにかぶりついて、スリスリしたかった……。
まあ、食べ終わったころには大分にまとまりましたけどね。
食事が片付けられ、私は結局何も食べないまま、食後の紅茶を啜る3人に話しかける。
「皆さん、事は重大だと認識していますか?」
カルメラちゃんとシルルは、紅茶を啜るのをやめると顔つきが鋭くなり、優雅なひと時の終わりを教えてくれる。
「はい、理解しています」
「勝てばいいにゃ」
「だから、勝ち負けじゃないつってるだろがバカ猫!」
「ふふんにゃ、ウチはバカから進化したにゃ。強くなって負ける気がしないにゃ」
「バカからアホに進化したのです? 悪魔が下級でもどれだけ強いと思ってるのですか、相手は中級の下位階級第10位と第12位ですよ?」
「その階級は何を表したものでしょうか?」
「強さと賢さの度合い、あとは親の威光もありますね」
「なるほど、参考までに師匠の階級をうかがってもよろしいですか?」
「参考になりますかね? 私は中級中位階級第6位です。ちなみにレイニス先輩は上級上位階級第1位になります」
「あのロリババァはそんなに強いのかにゃ!?」
「そりゃ、6大悪魔の最高位にいる方ですからね。あなたなんて指先ひとつですよ?」
「その第1位と互角に……」
「互角とはいいませんし、本気でいたかもわかりません。あの時は2割以下だとは思うのですが」
まあ、先輩と半日戦えるなんて異常だと学院側も焦っていたでしょうし。
「お前もそれなりに強いにゃ」
「ええ、それなりに。上級階級は爵位持ちからですから姉は中級上位階級第2位ですね。妹は知識だけですから中級下位階級第5位ですね」
「おま、妹がいたのかにゃ!?」
「いますよ、知識だけは優秀な妹は」
「へぇ、妹さんがいらしたのですね」
「力は自体は弱いですけどね。賢さはあるので学院ではそれなりの成績かと……って話が違います」
「例えばですが、私たちを悪魔の階級で表すとしたらどうなのでしょうか?」
「そうですねぇ。カルメラちゃんは外級中位3位、シルルは外級第2位くらいでしょうか。下級もありますが、二人はどちらにも属しません。判定が難しいので外級扱いですが、認められると下級くらいには入り込めますね。そうなると『現世階級持ち』となります」
「『現世階級持ち』? 聞きなれない言葉ですね」
「下界、つまりは自然界で生きる者が、突如として多大な力を有したときに、悪魔が階級認定をおこないます。その時に下級の称号を受けられると『現世階級持ち』と呼ばれるようになります。いまの自然界には存在しない事柄ですが」
「昔はいたと?」
「悪魔が人間に転生する事象もあり、過去に数名の『現世階級持ち』は存在していました。しかし、寿命も人間基準ですから短命で気付かない者が多く。活躍したという経歴は存在しません。もしかすれば大魔法つかいはその部類だったのかもしれません」
「なるほど」
「外級が中級に勝てるほどあまくはありませんから、その辺は気を引き締めてください。という事でカルメラちゃんはエリッサに指導を受けてください。魔法陣の事を知っているので、シルルは私が物理的に叩き込みます」
「わかりました、時間がありませんもんね」
「うにゃぇ、お前の指導を受けるのかにゃ? お先真っ暗にゃ」
「おう、てめぇ、足腰の骨砕いて、生まれたての子羊みたいにしてやんよ」
そう言い、今後の方針は定まった。姫様には申し訳ないが、メイド達に面倒を見てもらう事にしましょう。あと2,3日の時間しかありませんからね。
すみません、書き寝落ちしてました…申し訳ありません。