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戦いは続く! でもフラグが!?

まだ、10分も経ってはいないだろう。高速戦闘の特徴は戦闘を早期に終了させる事が目的として考案したもの。その他に、強者に対しての対抗策としての考えもある。


五分五分の実力者の対決の結果は引き分けになるのが普通だ。これも予測の範疇。そして、戦うカルメラちゃんとシルルにもそれは当てはまる。実力は五分五分、互いに長所と短所を補う目的があるからだ。


戦闘を観ながら、考えにふけ込む。


双方の実力での戦闘に結果というのは出ないだろう……まあ、実戦に近い戦闘が一番の近道ですから文句はありませんが。


そんな事を考えていると、後方から私と彼女たちに向けらる声を耳にする。


「ほう、派手にやっておるな」

「先輩! どうしてここに?」

「ははは、我も興味があってな、ルトバルルから聞いたのでな、なんでも面白いことをしていると」

「ん? このことは内密にしていたはず……あ、エリッサ! あなたでしょう!」


かしこまる素振りも見せず「お嬢様の動向を報告するのはわたくしの務めで御座いますので」と、とくに気にしていない様子。


「ふぅ……まったく……それでレイニス先輩は興味本位で?」

「まあ、そうじゃな。しかしあのカルメラとかいう娘は特殊じゃな」

「無詠唱が普通に出来ている事には疑問を持ちますが……なにかが?」

「ん? メイドーサ。あの娘はお前の魂を貰っておる。何も疑問に思うことはないじゃろう?」


そうか、カルメラちゃんは私の魂を……忘れていました。こうなるとカルメラちゃんが優勢か、その理由は先輩が語りだす。


「あの娘、精霊を使役している。メイドーサの魂の影響じゃろう。精霊も主として従わねばならぬ存在と認知している。無詠唱はその結果じゃ」

「参りましたね……五分五分どころかシルルは劣勢ということでしょうか?」

「いや、あの猫も妖怪種。そう簡単にはゆかぬ存在であることには変わりはしない。それにしてもお前はあやつ等にアレを教えたのか? 大問題じゃぞ?」

「断罪される理由にはなりませんよ。悪魔が自然界の生き物を卑下して見ている現状に誰が脅威と恐れますかね?」

「まっ、それは言えたものじゃ。じゃがな我の倶楽部の何人かは本気で殺そうとしている」

「ほお、では私が直々に手を下しますか」


それは聞き流せない内容ですね。カルメラちゃんもシルルも下界で行動を共にしている仲間。


「誰です?」

「一番の嫉妬深い奴はレイビーとシャテラじゃな。だが、安心しろ。対決させることで納得させた」

「今なんて?」

「戦っている二人と戦わせる。それが条件という事じゃ」

「あなたは痴呆でも発症したのですか? あの二人は下界の民ですよ? どうやってもレイビーとシャテラが勝つに決まっているではありませんか」


バカげた話だ。乗る必要性もない。


「しかし、ルトバルルもそれならと承諾させている」

「どういうことですか?」

「後日に説明しよう。いまは我が監視している。レイビー達には手は出させん」

「なら、いいのですが……」


さて、戦っている当の二人は互いの身体能力と技を駆使し、まだ戦っている。


「ふぅ……ふぅ……」

「にゃんにゃ、カルメラは息があがってるにゃ」

「少し呼吸を整えてるだけです」


確かにカルメラちゃんは肩で息をしている。逆にシルルはまだ余裕を見せているが……虚勢でも張っているのか? 肉体は限界に近いはず。


「過重……これで終わりにゃ」


シルルは腰を低く落とし、拳をかまえる。これで終わる気配がしない……。


フッと姿を消したシルル、向かう先はもちろんカルメラちゃん。目標を定め、渾身の一撃を打ち込むだろう……ふむ、意外な勝者か。


「へへ……」


刹那の瞬間、私はカルメラちゃんの不気味な微笑みに気付く。思わず『シルル危険です!』と叫びそうになる。


シルルがカルメラちゃんの目の前に現れ、拳を腹部にめがけて打ち込む瞬間。


ドンッ! メキィ……。


鈍い打撃音、そして、あばらが折れる微かな音に目の前の光景に息を呑んでしまう。


強打され、顔を驚きと苦痛の表情でうつむかせ、唾液をボタリと地面に滴らせる。


「がぁ……」


何が起きた? 腹部に強打を受けるのはカルメラちゃんだったはず……この私でも理解できない。


「あの娘……次元魔法まで使うのか」


レイニス先輩の顔が渋みを見せる。


『次元魔法』それは上位悪魔の得意とする高等な魔法。私ですら覚えられずに終わったというのに……なんて弟子だ。


次元魔法の理屈は通常の魔法とは違う。普通の魔法は詠唱という動作が特徴的だが、次元魔法は無詠唱の最高到達点。その名の通りに次元に干渉し、空間を歪める。その作用は様々だが、カルメラちゃんはシルルの強打を鏡のように反射し、次元を歪めた。


反射したシルルの攻撃は、自らに返ってくる。自爆したというわけだ。


反射鏡ミラーか……第2階級のヘナティアの得意技じゃ」

「すでに人間ではないと思っていますね?」

「そこのメイド、このことはルトバルルに報告はするな、第一階級の長としての命令じゃ」

「かしこまりました」


苦痛に耐え、膝を地面につけるシルルと、前のめりにそのまま倒れるカルメラちゃん。


 「メイドーサ、どちらが勝者だ?」

「さあ、意識があるのはシルル。しかし、意識を失う寸前で大悪魔の技を披露したカルメラちゃん。難しいですね」

「引き分けにするのにも惜しい戦いじゃ、じゃが勝者はいない……面白い余興じゃった」


そう言うと、先輩はさっさと姿を消してしまう。やれやれ、本当に自由な人だ。しかし、あの土壇場でどのようにあの技を?


疑問の残る戦いだったが、二人の介抱が優先だ。私は急いで二人のもとに駆け寄った。

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