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鍛錬試合! 意外な展開!?

さて、風の吹く平原。風の流れに身を任せザワザワと揺らぐ草花たち。観客はいない、そんな中で二人の闘者が互いの動向をうかがう。


真剣な表情で互いを見つめる。その表情に迷いはない。いままで行動を共にしてきた仲間という認識は捨てたと思わせる。


「すぅー、ふぅ……手加減はしません」

「ウチもそのつもりは無いにゃ」


今にも激突しそうな雰囲気。私は……私は姫様の刺繍に夢中だ。


「あぁん、姫様お上手!」

「ほんとう!?」

「流石はエリッサ、褒めてつかわす」

「もったいなきお言葉」


状況の腰を折るのは得意ですよ? なんですか? 文句ありますか?


緊迫した空気を台無しにされた二人は、少々ですが戦意が失われてますね。これはいかん。


「イチャコラするにゃら他所でやれにゃ!」

「いやいや、審判も兼ねてますのでそれはそれですよ?」

「ったく、このロリコン!」

「誉め言葉よりも、はいはい戦ってくっださいっな」

「褒めてにゃい!!」

「動かないあなた達が悪いんです。さっさと始めてくださいよ。戦いにそんな余裕はないですよ普通は」

「師匠にそう言われると、そうなのですが……すこしは……」


何かを期待しているわけではない。当然ですよ。酷いようですが、練習試合い程度に興味は一欠けらもありませんから。


カルメラちゃんはクルクルと杖を回し、戦闘態勢に入る。もちろんシルルもその動きに警戒し、腰を落とす。


「活性……」

「……過重……瞬速」


互いに覚えたての活性化を口に出す。カルメラちゃんは意識的な活性化。シルルは言葉を口に出して、イメージを増大させる。


勝負は二人の姿が残像を残した状態で始まる。


互いの中央で、ドンッと何かが破裂する音と風圧が発生する。


シルルは『過重』と『瞬速』による身体全体の強化、カルメラちゃんも瞬間的な筋力の活性化。同時にぶつかりカルメラちゃんは杖で、シルルの突き出された右拳の一撃に耐える。


「重い一撃……なるほど……」

「まだ本気じゃないにゃ」


睨み合う二人は互いに次の手を考える。しかし、シルルよりカルメラちゃんの思考の活性化には敵うことはない。私の見立てでは、カルメラちゃんは幾つもの選択肢を用意しているはず。それに対し、シルルは直線的な単純な戦いを仕掛ける。


「ほぅ」

「瞬速!」

「く、防壁展開!!」


素早くカルメラちゃんの周りを飛び回るシルルに対しての対抗策ですか。ふぅむ、カルメラちゃんは風系統の防壁。何かを考えていますね。


飛び回るシルルはカルメラちゃんの隙をうかがう。だが、カルメラちゃんは冷静だ。シルルの動きを防壁を触覚のように使い動きの流れを掴む戦法。


「鉄甲!」

「召喚!!」


シルルが背後からの一撃を撃ちかますが、カルメラちゃんは岩山を召喚し、シルルの一撃をしのぐ。


粉砕された岩山にむけ「消滅、風よ!」と粉砕された岩山を一瞬にして消し去り、暴風でシルルを吹き飛ばす。


「にゃ!?」

「逃がしません!」


後方に吹き飛ばされるシルルを増強した筋力で跳躍して後を追撃する。


「岩のつぶてを!」


暴風の中で岩のつぶてを召喚し、暴風に巻き込まれるシルルの動きを封じる。シルルは「過重!」と叫び向かってくる軌道の読めない岩のつぶてをさばく。


やはり、シルルに思考の活性は必要ありませんでしたね。あの野生児の独特の感性と、動体視力などの身体能力なら無難にさばける。


「轟け雷鳴!!」

「瞬速!」


落ちる雷撃をギリギリで本能でかわし、間合いを詰めるシルル。だが、カルメラちゃんは残像を残し、シルルを翻弄する。


「鉄双! 手応えがないにゃ!?」


見事に騙されたか、ギリギリでの跳躍で残像を分身のように見せた……でも、カルメラちゃんは跳躍すれば空中での身動きは……。


雷針らいしん!」


そう言い、カルメラちゃんは杖に何かを仕込み、地面へと投げつける。シルルは狙われたのかと「瞬速!」即座に後退し、「過重!」と言って跳躍する。


「氷の刃拡散!」

「にゃ! 鉄甲!!」


カルメラちゃんに向けて跳んだが、無数の氷の雹鉄を破壊し、動きを封じられる。その瞬間「雷光!」とカルメラちゃんは、自身に雷属性を付与する。その瞬間、残像を残すこともなく一瞬で地面に着地し、地面に刺さる杖を手に取る。


ほぅ、杖を避雷針にし、自らを雷として磁石のように杖にくっついたと。なかなかの戦法。シルルも戸惑っていますね。


「く、どうするにゃ!?」


一枚上手はカルメラちゃんか。でもな、こんな戦い普通に自然界でしてたら仙人の域よ。猛者とかって次元じゃない。この二人をこのまま下界に還すのは問題がありますね。


「火よ! 燃え盛れ!」


これを狙っていたかと言わんばかりに、自分よりも二回りも大きな火球をシルルに向けて撃ち放つ。


このままシルルに直撃かと思われた。だが、シルルは「過重! イメージ……『風雲脚』!」と何かを織り交ぜる。その瞬間、シルルの身体はきりもみし、風を発生させ、高速で地面に向けて強引な着地を決める。


「逃がさないにゃ」


ここにきての新しい技か! いや、確かドラゴンの時に『マカリ流』とかなんとか言ってたな……武術には心得がある。それを進化させたのか。


どちらも一番無防備になる浮遊状態からの脱出策を編み出した……最初はどちらも普通の少女と、普通のシャムシェの猫だったのに。


「ふぅ、やるにゃカルメラ」

「シルルさんほどではありません」


互いにけん制し合い技術を高めるか……昨日の今日でこれは異常。二人共の戦闘センスは恐ろしく高い。


 ただの殴り合いになるかと予想してたが、これは予想外ですね……二人はまだ余裕を残している。

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