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わぁ! 天性の才ですか?

とりあえず、カルメラちゃんに詳細を説明しなければ理解は難しいでしょう。


「カルメラちゃん、何が起こったのかを想像できますか?」

「いえ、ただ目もくらむような眩しい光が発した後に爆散したことしか……」

「そうですか」


ふむ、今は詳細よりも肉体の活性化について教えた方がよさそうですね。単純に説明しても伝わらないでしょうから。


「ではカルメラちゃん、肉体の活性化を覚えましょう」

「はい!」


瞳を輝かせて、熱い視線を私に向けるとはなんたる求愛行動(違う)でしょう。


悶々とした想像にふけりたいが、今はやめておこう。なぜか? そりゃ、床についてのお楽しみだからだよ!


―― まぁいいや。


「それでどうすれば?」

「そうですね……どんな生物にも内気功と呼ばれるものが存在します。これは股間部からお腹と昇っていき頭のてっぺんまでの天穴てんぼうと呼ばれる内部気功の力の流れがあるのですが、肉体の活性化には股間部の『ウビュア』という天穴を解放します」


と、説明してもカルメラちゃんの頭には『?《はてな》』の記号が飛び回る内気功はこの際は省きましょうか。


「ではまず……目を閉じて、身体の中に流れる魔力と肉体の力の流れをつかみます」


そして、カルメラちゃんは目を閉じて、静かに呼吸する。


私は催眠をかけるように「暗闇の中で感じてください。自分の中に存在する魔力の根源と、肉体の躍動を」と語りかける。


「……すぅー、ふぅー」

「そう、心と精神を落ち着かせて、暗闇の中に漂う流れを感じて、見えてくるはずです二つの気の流れが」

「感じる……これは魔力の流れ……肉体の流れは見えません……」

「なるほど、体質的には9割を魔力に依存してますね」


カルメラちゃんは目を開けると「どういうことですか?」と、疑問を投げかける。


「私は半々といったものですが、カルメラちゃんの身体は9割を魔力の蓄積に使っている根っからの魔法職といえますね。潜在的には、本物の魔法師ということです」

「では、肉体の活性化は不可能だと?」

「いえいえ、逆です。活性化を起こしやすい体質といえます」

「では、どうすれば?」


なるほど、完全な魔法に長けた構造を持っている。ならば肉体に負荷をかける事はあまりない……。


「暗闇で見えた魔力の流れに、身体全体に電流を流すイメージをしてみてください」

「電流を……流す……」


再び目を閉じ、カルメラちゃんは呼吸を整え、深く息を吸い込む。


「身体全体が暖かい……」

「足に意識を集中してみてください」

「足に……イメージ……足が熱く熱せられたような感覚が……」

「今です! 空を舞う鳥になったような身軽な自分を想像して地面を蹴るのです!」


タッターン


その瞬間、カルメラちゃんは残像を地に残し、30メートル以上は跳躍する。私も後を追うように跳躍し、目を閉じるカルメラちゃんのそばに寄り添う。


「目を開けてください」

「え……ひっ!? ええぇ!」

「大丈夫です、落ち着いて」

「私、こんなに高く跳んでる!?」

「成功ですね、では私につかまってください」


カルメラちゃんはギュッと力強く私に抱きついた。たまんねぇな、役得ぅ!


そして、ゆっくりと下降し、地面に着地する。あまりのことで驚いている様子ですが、まだ小一時間も経っていないのに……恐ろしい子ですね。


「師匠! できたのですか!?」

「成功です。さてさて、人間という種族でこうも簡単に成功させるとは驚きです。カルメラちゃんは仙人かなにかでしょうか?」

「え、いえ……普通の人間です」

「才能は未知数、成長が楽しみですね」


私はニコリと微笑むと、カルメラちゃんは後頭部に手をあて、頬を染めてうつむいていた。ところでシルルは大丈夫でしょうか? エリッサがいるとはいえ不安ですね。



一方でシルルは岸壁を拳が壊れるほどに殴り続けていた。打撲や、拳が壊れる毎にエリッサからの回復の治療を受けている。


「なんでにゃ――!」

「まぁまぁ、焦らずとも上手くいくものです」

「いにゃ、手が痛いし、ヒビもはいらないにゃ……強くなりたいにゃ……」


気を落とすシルルに対し、エリッサは優しく説明してくれる。


「シルル様の身体に流れる魔力の流れをつかまなければ活性化は不可能で御座います」

「それができにゃいにゃ!」

「それは困りました」

「ところで、この方法って二人の他は知らないのかにゃ?」

「いえ、論文を読まれた6大貴族様と」

「メイサとエリッサだけにゃんにゃ?」

「左様でございます」

「そこまで秘密にする必要があるのかにゃ? この方法を知っていれば、強くなれるのにもったいないにゃ」

「問題はそこに御座います。誰もが強くなれる方法だからこそでございます」


知られてはならない、それを知ることは、世界の均衡を変えてしまう危険性を含んでいることにシルルは気付くことはなかった。

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