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海水浴! ここは戦場か!?

海岸のリゾート地に下車した私達は、早速目的のプライベートビーチに向けて歩いて行った。


砂浜に足跡をつけ、その場に立ち止まり、私は空を見上げる。透き通る青い空、日差しが眩しい。これはいい保養所ですね。


砂浜では、キャッキャッと騒ぐ二人の少女、シルルはかがみこみ、鼻を立て、スンスンと匂いを嗅ぐ。


「なんか匂うにゃ」

「どうしましたシルル?」

「んにゃ、なんか生臭いというか、ツンと鼻にくるにゃ」

「まぁ、海なんてどこでもそうでしょうね」

「そうなのかにゃ?」


シルルの疑問に答えつつ、私は先輩に誘導され、たどり着いた場所に驚愕する。


驚く理由は単純だ。目の前には傘を幾本も砂浜に突き立て、10人程度の執事やメイドが待機している。気温は熱すぎず、かといって寒いというわけではない。そんな気候の中で待つのは酷とも言えるだろう。


「あちらは準備ができておるようじゃな」

「あぁ、先輩が手配したという」


すると、待機していた使用人たちは声を揃えて「お待ちしておりました、メアモトス公爵様」と腰を低くし、一同は頭を下げる。


「うむ、ヘナティアは着ておらんかの?」


先輩の言葉に一人の執事が反応する。「御多忙なゆえに、申し訳ないと賜っております」と先輩に返答する。アレが取り纏め役か。


「そうか、そりゃ残念じゃ。さて、皆は着替えぬのか?」

「着替え?」

「水着じゃ、水着」

「いや、持っていませんよ」

「わたしもないよ?」

「私も持っていませんが……」

「ウチもにゃ」


そりゃ、皆持っているわけないですよね。急に海に連れてこられて、そんな準備をする暇もなかったわけですから。


だが、それも先輩の策略のうちの一つであることに気付くのは、先輩の不敵な笑みを浮かべる顔を見た後のこと。


「なんじゃぁ、仕方ないのぉ」


すると先輩はパンパンと両手を響かせ、使用人たちに合図を送る。するとメイドが一人一人に近寄り、「失礼します」と身長や胸囲、股下などを計測し、サササッと潮が引くよりも速い速度で、離れていく。


そんな中、執事はその間に簡易更衣室を組み立てている。これは、あれですか? 強制的に着替える方向に……?


「メイドーサ様、ご用意が整いましてございます」

「え、あ、いや……私は泳がないので」

「いえ、これもメアモトス公爵様の命令で御座います」

「拒否権はないと?」

「メイドーサ様、どうか我々に責務を果たさせて頂けませんでしょうか……」


う、これは(はなか)ば脅迫にでも近い言葉でもかけられたのだろう。メイドさん達には罪はないもんね。ここは受け入れますか。


「わかりました」

「では、改めてご案内させていただきます」

「しかし、苦労をかけてしまいすみません」

「いえ、いいので御座います。メアモトス公爵様がお喜びいただけましたら本望です」


先輩に脅されてるのは明白だな……やれやれ、断れば先輩からのお叱りと、主人であるヘナティア公の機嫌を損ねる。逃げられないという立場は少々可哀相にも思えてくる。


簡易更衣室に置かれていた水着を試着すると……サイズはピッタリ……おい、まてあのロリババア。なんでサイズを知っているんだ? 確かにさっきは何か測定していたがご都合主義にもほどがあるだろう。


その時、私は『メイドーサ倶楽部』の組織的な恐ろしさを知る。あの倶楽部の中では私の個人情報は周知され、把握されてしまっている……ということは私の過去の情報も収集されているということかッ!? なんと恐ろしい倶楽部よ……。


さて、私は意外と普通のスポーツタイプのシンプルなもの。ジャケットを羽織り、外に出る。


ふむ、先輩のことだから際どい方向で攻めてくるかと思ったのだけれども、拍子抜けだ。


「お、メイドーサは着替えて来たのか」

「えぇ、先輩はもうきがえ……!?」

「うむ!」


『うむ』じゃねぇーよ? なんでふんどしにサラシを巻いた状態でいるのか一句の説明を頂きたい。

「なんですかその格好は?」

「幼児体系には映えるじゃろ?」

「ギャップは凄いとだけ言っておきます」

「なんじゃいなんじゃい! もちっと興奮せぬか! ビシッと決めて来たのに」


決まっているのは頭か? いや、目に潤いを与えてくれるのは確かなのだけども偽ロリじゃぁなんか(たぎ)れない。


さて、他はどうなのでしょうか?


と、思っていた矢先、目の前に現れる一人の天使。それは姫様だった。姫様はフリルの付いた白いビキニスタイル。子供っぽい姿ではあるが、おへその見える姿は絶景。それ以外に例えられる語句があるとでも?


「メイサ、変じゃない?」

「おおおおう! ナイスなチョイス!」


思わず心の叫びが口から飛び出してしまう。これは犯罪では? モジモジと恥ずかしそうに微笑する天使……く、悔いはない。(何に?)


「メイドーサが好きそうなものを選んだが……鼻血を堪えておる状況をみると刺激が強いか」

「私がこの程度でダメージを受けるとでもお思いか!?」

「その割には鼻血が噴出しておるぞ?」

「持病です。興奮しているわけではありません」

「重病じゃのう……我とそこの娘にそんな大差があるものか?」

「あるでしょう。天然と養殖の違いくらいに」

「じゃが、そこの娘でそのダメージならあれはどうじゃ?」


先輩は明日の方向を指さし、そこにはカルメラちゃんの姿が。一瞬、私は今日が命日かと覚悟してしまった。


カルメラちゃんは黒の紐ビキニ……もともと肉付きのよい健康体が紐で締め付けられるその破壊力、きわどい又筋のラインにやんわりと主張する小胸を護る狭い布面積。


姫様は純情系で攻めるビキニに比べて、カルメラちゃんは脳内物質を破壊するほどに攻める遊び人系。


2人の水着姿の効果は抜群だ。


「う、ぐふっ!」

「師匠!」

「メイサ!」

「ははは、メイドーサでもアレは回避できまい!」

「お、おのれ……ここが戦場ならば絶命していたかもしれない……いや、絶命寸前か」


私は砂浜に膝をつき、心配したのか駆け寄ってくる二人の少女。


見える、姫様の華奢な身体に吸いつく水着が浜辺効果でキラキラと輝き、カルメラちゃんは、走り寄ってくる際に締め付けられる揺れる肉欲美。(どこの言葉ですか?)微かに揺れる、主張しないその胸……私には見える……グフッ……。


「メイサ、死んじゃやだぁ!」

「師匠……鼻血がこんなにも……」

「ふふ……二人とも美しいですよ……ゴフッ」


バカな喜劇が繰り広げられる中で、シルルは黒のホルダーネックに着替えて登場し、こちらを冷めた眼差しで見ている。


「また煩悩が破裂したのかにゃ?」


すると、先輩はシルルに近づき、「ま、想定内通りじゃな」と冷静に言う。


「ロリババアには反応しなかったのかにゃ?」

「ババアはよせ、特別にレイニスと呼ばせてやる」

「貴族は面倒にゃ」

「まぁの、土地柄で呼べとか、名前の呼び方が複数ある。猫には少し難しいか?」

「ウチはシルルにゃ」

「で、なのじゃが……泳ぐ前からあの状態では海に入るのも時間がかかりそうじゃ」

「そうにゃね。それにしてもレイニスもきわどい……それは水着というのかにゃ?」

「古い文献を参考にしたのじゃがな、ちとチョイスを間違えたようじゃ」

「何を参考にしたらそんな水着を選択するにゃ? 魔界に来てから変態がいっぱいにゃ」

「はっはっは、人間の文化を勘違いして解釈している者が多いからな。変な方向にも向くことはあるじゃろうな」


その頃、鼻血が止まらず、メイドさんたちに救護を受ける体裁の悪い私の姿があった。


いや、いくらなんぼでも破壊力がと譫言(うわごと)のようにつぶやく姿。海水浴がこんなにも危険なミッションだとは思わなかった。


でもね、二人の天使が両手を握れば握るほどに鼻血が止まんないの。それにギュウギュウと身体を押し付けられて悪化するの。


「私の命運はここまでか……」

「メイサぁ!」

「師匠――!」

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