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いざ、新大陸へ! 次回なんですけどね

昼間の事、私は親父に姫様たちを別の大陸に案内したいと申し出る。


「なるほど、メイサの故郷のみでは不満もありそうですね」

「あ、いや……『蒸気機関』が見たいと」

「メイサ……」


いや、親父が困った表情をするのもわからなくもない。親父は顔に手をあて、眉間をさすり、私が提示した許可証にサインをする。


 「今回だけですよ? 人間に蒸気機関という代物を見せるのは、私としては避けたいのです。その理由はメイサも承知でしょう?」


 「まぁ、聖霊関係ということだけは……」

 「人間の文明を衰退させるのが閣下の意志です。ですが、蒸気文明に聖霊が反応したわけではありませんので」


ん? 親父は妙なことを……? 蒸気文明が世界を破滅させる要因と思っていたのだけども、違うのか?


「ちょっと聞いても?」

「えぇ、どうぞ」

「蒸気文明があったからこその破滅じゃなくてと?」

「蒸気文明は1000年以上も前の人間からしたら陳腐なものです。聖霊が破壊したのは、それよりも進んだ文明社会です」


はて? 学院ではそんな事は教えられなかったが……。とにかく聖霊は蒸気機関の文明よりも進んだ文明社会に憎悪したということか。私の知る史実とは違う。


「とにかく、 南東の大陸『ベスパ』のパプキス伯の国であります『フロイゾル』への転移の許可をします。くれぐれも無茶と失礼のないように」

「はぁーい」

「不安ですね。ロリーも保護者として同行させましょうか」

「いやいや、大丈夫!」


ここでローリ姉さんが同行することにでもなれば……うぅ、考えただけでもゾッとする。


私は最後まで断り、親父の書斎から出る。なんとか許可が下りた事を安心したのか、ドアの前で「ふぅ」と胸を撫でおろす。


さて、許可が下りた事でも報告しに、部屋に戻りましょうか。



「メイサほんとう?」

「えぇ、許可が下りましたので、他の国へ行けますよ」


私の笑顔に反応する姫様。それにカルメラちゃんも喜びの声をあげる。


「うわぁ! 魔界の他の国にも行ける!」

「嬉しそうですね」

「だって師匠! 人間が魔界を来ることができるだけでも凄いのに、他の国へ行けるなんて喜ばずしてはいられません!」

「そうですか、それは良かった。ですが、転移装置の調整に一日を(つい)やすので、今日は部屋でのんびりと……」


私の視界の先にあるのは、私のベッドで惰眠をむさぼる猫の姿。こいつは……。


「姫様、シルルがお眠でございます」

「え、はっ! シルル!」


姫様は必殺の駄々っ子パンチで、ポカポカとシルルのお腹を何度も軽く叩く。だが猫の反応は薄い。


ムっと、姫様はしかめる顔をシルルに向けると、耳元に近づき、なにやらボソボソと耳の中に言葉を流し込んでいる。


催眠状態にでも(おちい)ったのか、シルルは寝ぼけ眼で、むくりと上半身を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。


「うにゃ? ステーキどこにゃ?」


何を言われたのだろう? この猫にとっては食べ物に関しては相当な悪食なのだろうとは思う。流石は姫様だ。その辺をよく理解している。さながら猛獣使いでしょうか?


「あの、師匠」

「なんでしょうか?」

「転移装置は私たちが使っても問題はないのですか?」

「ご心配なく、次元を移動する装置ではありませんし、ただの移動手段です。ちなみに我々が使う転移装置は商人達が使うものと異なります」

「特別な装置なのですか?」

「いえいえ、装置自体は他とあまり変わりません。ですが、商人が大陸や国を行き来する場合は、お金を摂られます。いわば通行税といったようなものです」

「でも、あまり違わない装置で移動するのであれば、多少の問題もあるのでは?」


ふむふむ、カルメラちゃんは転移事故を恐れている。


「私は先ほど、あまりと言いましたが、貴族などが使う転移装置と商人の使う転移装置には、移動に使う転移線が違います」

「転移線?」

「上線と下線に別れており、上線は上流階級専用。下線は中流階級や下流階級の平民専用です」

「色々とあるのですね」


感心した様子でうなずくカルメラちゃん。魔界に来てからも勉強熱心なのは将来が楽しみですね。


「ところで、話は変わりますが、姫様とカルメラちゃんは城下に行ってみてどうでしたか? 何もない田舎の街だとは思うのですが」

「すごい人がいっぱいいたよ?」


姫様は両手を大きく円を書くように広げて、何かを伝えようと頑張っていた。姫様の目には街は広くて賑やかだったのかもしれませんね。


「あの、疑問が……」

「ん?」

「あの城下町の方々は(みな)さんは、悪魔なのですよね?」

「ん――、低級から中級と様々ですね。容姿は人間と大差はなかったと思います。低級はそうでもないかなぁ」

「えっと……小鬼みたいな……」

小鬼(ブリムル)ですね、どこにでもいる種族です。我々悪魔は本来の姿を隠して生活しています。なので、外見は人間と変わらなくとも、本当の姿は怪獣だったりと様々です」

「怪獣さんがいるの!?」

「おられます。それも姫様が喜ぶような」

「おぉ! 見たい!」

「それは難しいかもしれません。悪魔が本当の姿に戻れるのは自然界という低次元の空間で生きる方法ですから。魔界ではその必要はないので」

「え、でもメイサはずっとそのままだよ?」

「これでも子爵級の力はありますのから、低次元でも人間の姿を維持できるのです」


姫様は頭を右に振ったり、左に振ったりと悩む様子。お人形の振り子のようでかわいい。


それでも私の本当の姿は化け物だからなぁ……。正直見られたくはないのが本音だ。親父たちみたいな6大貴族の当主ともなれば、話は違うけども。

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