知るかー!! 私は幸せなんです!
夕暮れ、あぁ……空が淡いって、いきなり厨二病的な世界の話を聞かされてしるかぁ――!! こちとら姫様とのラブラブ(死語)大作戦を計画中なのだぞ!? 『世界の命運が、悪魔界の事がどうとか知るものか――!!』ぜぇぜぇ……。
うん、そもそも聖霊なんてぶっちゃけどうでもいい。親父の話もどうでもいい、むしろ構わないでくれと言いたい。世界が危ない? はっはっは、あたしゃ知らんよ。どうでもいいよ。それでは主人公失格だと? 主人公が世界を救うのか!? 主人公はかっこよくなければならないのか!? ど・う・で・もいい!! え、メタいと? 関係ないね。姫様をちゅっちゅしたり、カルメラちゃんから『お姉様……アタシ……もうっ』なんてしたいし、言われたい!
煩悩の塊? おぉ! 結構結構。なんぼでも言われたいね!! ……ふぅ。アー、すっきりした。『俺は運命を変えてみせる!』そんなセリフが似合うと思いますか? 似合わないことは百も承知です。それにそんな真面目なお話じゃないのですよ? コレ大事。
私は1人で大きな岩の上で座りながら黄昏ているところに3人の人影が。
「ん? 皆さんどうしました?」
「いにゃ……お前が親父さんと話した後に1人で消えるからにゃ、二人が心配してたにゃ」
「それは嬉しいお言葉ですね。でも何の心配もいりませんよ。大人の事情というヤツですから。ささ、2人とも座ってはどうです?」
すると正面から右に姫様がちょこんと座り。反対側にカルメラちゃんが静かに座り込んだ……何これ、左右から甘いかほりが、なんとも香しい。やだぁん、自然とにやけちゃう。それに気付いたのはシルルだった。さすがは野生児。
「幸せなところもうしわけにゃいが、何の話をしていたのにゃ?」
「あぁ、世界が滅ぶって話ですよ。ありがちですよね」
「ふむふむ……どにゃえぇ!?」
私以外の三人は驚いた様子で私の顔をみるけども、私は特にこれといった焦りはなかった。だって知ったこっちゃないもん。
「お、お前、そんな大事な話をしてたのかにゃ!? せ、世界が滅ぶって大変にゃ」
「師匠!! 悠長にしている場合ではないですよ!?」
2人は焦っている様だが、姫様は『滅ぶ』という単語に反応しただけで、そこまで深くは理解していなかった様子。『?』が頭からポンポンでてくる仕草は愛らしい。
「そこまで慌てなくてもいいことですよ。大袈裟に騒いだところで相手はフォレヴォ神の聖霊。それともアレですか? あなた方は悪魔32貴族と一緒に戦いに参戦したいのですか? 入る隙間はありませんよ?」
「にゃけども……滅んだら皆が困るにゃ」
「確かに困るかもしれませんね、ですが私達は蚊帳の外です。気楽に旅を楽しもうではないですか。私はその方がいいと断言できますけど」
「師匠はこの世界が滅んでもいいということでしょうか?」
「人間がそのように選択をしたのならば、それを意固地になって介入するほど野暮な考えは持ち合わせていないのが私の答えです」
「師匠は人間が嫌いなのですか?」
「そこまで跳ぶような話をしているわけではありませんよ。カルメラちゃんに出会えた巡り会わせには感謝しています。今回の話に私はそこまで絶望もしてなければ悲観もしていません。この先にまだ出会いがあると考えれば、世界が滅びることを考えることよりも前向きで楽だと思いますし、楽しみもあるじゃないですか」
「ア、アタシは師匠に出会えて嬉しいと思っています。でも……世界が滅びてしまったら、師匠に会えなくなってしまう!」
今にも泣き出しそうなカルメラちゃんと姫様の頭に手をのせて、自分の胸元に2人を引き寄せる。
「いいじゃないですか、世界が滅んでも。それで会えなくなるということは絶対にありません。私はお2人と繋がっていたいと考えています。それだけが私の幸せ。多くは望みません。ですが、今は世界がどうなるかより自分達の足元を見て、前を向いて歩きましょう。小石に躓かぬように」
「うぐ……師匠……」
おや、姫様が静かですね? と思ったら気持ちよさそうに寝ていますか……。可愛い寝顔ですね。ぐふふ、本当だとスリスリしたいのですが、空気を読んで止めておきましょう。
「ウチは入ってないのかにゃ?」
「あなたは……いえ、入ってますよ」
「今の間はなんにゃ!? どうせ捨て猫のシャムシェにゃよ!」
「自暴自棄になるのは何かの嫉妬ですか?」
「ウチだって皆と出会えて嬉しいし、楽しいにゃ。でもにゃ、お前は『世界が滅んでもいい』みたいな考えにゃ。滅んでしまったらそれまでにゃんよ!?」
「だぁかぁらぁ、私達では止める事ができないから、その間の人生を楽しみましょうと言ってるんです。脳ミソがスカスカですかあなたは?」
「……うにゃ」
「物語の主人公でもあるまいに、世界をどうこうしようだなんて逆に厚かましいですよ、自然体で生きていけばいいんです。等身大の幸せが丁度いいくらいです」
「師匠……」
「まっ、それでいいにゃ! 悩みすぎるとハゲるにゃ!」
「そそ、そういうことです。話は変わりますが、2人は気付いていますか?」
「なんにゃ?」
「どうしましたか師匠?」
「前の街でもそうでしたが、今の人間社会は食料難という事態に陥っています。これは魔物がいなくなったためです」
「そんにゃ感じはしにゃかったけども……」
「都会でそういった話はきいてません」
「そうですか。いずれは気付くかと思います。私のかんが正しければ、王都に近い村や集落などは飢饉が迫っているように思えます」
あの街で食料が不足している事を考えると小さな村や集落の食糧事情は著しく悪い。世界が聖霊の出現で滅ぶより、食料の確保を優先とした国家間の略奪は目に見える。
「あ、そうです」
「どうしましたカルメラちゃん?」
「いえ、私が王都を出る際に聞いたのは農家に対しての課税を強化していくと」
「それは有力な情報ですね……だとすると、農家は重い税をかけられ農村などは壊滅的な被害が出るでしょうね」
「ご飯が食べられないのかにゃ!?」
「まぁ、この話が本当ならばそうなりますね」
「それは困るにゃ! ウチは3食のご飯が一番の楽しみにゃ!」
「知りませよそんな個人的なこと」
さて、この先は何が待っているのかは、ある程度の予測はつきますね……食料の問題、魔物が消えてしまったことの弊害。人間は自然と滅ぶ道を歩んでいる。領土を拡大して農地を耕すとしても人手がいる。だが、その為には領土を奪わなければならない。そして人口が減り農民が減る……悪循環もいいところだ。