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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第六章 ロッテントーク大陸
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預言者に見惚れる


 私を中心とした、円状の人集り。 

 しかも全員跪いている図。


 いやいや、だから、どうしてこうなるのか……

 既にこの状況だけで胃が痛くなりそうだ。


 私の目の前、丁度民族衣装の白と黒とで人が左右に分かれた真ん中、一歩前に出ている人がいる。

 着ている服も他の人より華やかさがあり、白と黒両方を取り入れた様な色合い。

 身につけている装飾品も多く、明らかにこの中で一番偉いです感が出ている。


 私が駕籠から降りて、恐らくその一番偉い人が「ようこそ」と声を掛けてくれたんだと思う。

 しかし、それから一向に言葉が飛んでこないし、皆さん頭を下げままなんだが……

 私にどうしろと?

 何か発しなきゃダメって事かな?

 取り敢えず自己紹介か?


「み、皆さん、初めまして。そ、創造神様から依頼を受けました、ととと、トウコと、もも、申します。宜しくお願いし……ま、す」


 この場に何人いるか数えられないが、百人以上である事はわかる。

 沢山の人前で話すことなんて初めてだから、緊張して噛み噛みだよ。

 最後の方なんて声が小さくなってしまった。

 取り敢えず挨拶をして、ペコっと頭を下げる。

 私が頭を下げても、全員が頭を下げたままだから、気づかれてすらいないけどね。


「御使様、発言を許可頂けますでしょうか」

「あっ、そうでした! 皆さん、ごめんなさい。頭を上げて楽な姿勢を取ってください! それと、発言どうぞ!」


 そうだった、発言は許可制だったのを忘れてた!

 バオさんとの初対面の時も同じようなやりとりがあったじゃん!


「お初にお目にかかります、ハン族をまとめており、“預言者”の職を賜りましたファンと申します。この度は、他大陸よりご足労頂き、誠にありがとうございます」


 ファンさんが預言者か!

 しかもハン族をまとめていると言うことは、族長って事かな。

 そりゃお偉いさんですね。

 しかし、そのお偉いさんがまだ跪いたままなんだが……

 気まずいよ。


「ファンさん、皆さん、どうぞ楽な体勢になって下さい。あと、私の連れはどこに……あっ、ヒースさん! ここです!」


 みなさんがまだ跪いたままだったから、奥から来たヒースさんを見つけられた。

 ちょっと遅れて到着しただけだったみたいで良かった。

 

 私がヒースさんに声を掛けると、ファンさんが立ち上がった。

 それに倣い、ファンさんの後ろの人から波のように人々が立ち上がる。

 ちょっと圧巻だ。


「御使様、お連れ様、今後について我が屋敷にて詳しいお話をさせて頂けますでしょうか」

 

 立ち上がる人の波に呆けていた私に、ファンさんが話しかける。

 声からして、ファンさんは男性のようだ。

 背も高い。

 バオさん達と似た仮面をつけているので顔は見えないが、声質から少し年配の方かなと思う。

 仮面はバオさん達と違い、実用的というよりは華やかさ重視で彫りが細かい感じだね。

 目元の穴が、他の人より小さいから視界が狭くないのかなと思ってしまった。


「あ、はい。お願いします」


 そう私が発すると、ファンさんの後ろにいた白と黒の衣装の人達がバッと左右に分かれ、道が出来た。

 

 はっ?

 私はモー○か?


「ユエ、これはまた、なかなかだな」

「……ハハハ」


 いつの間にか横に来ていたヒースさんも、この光景にはビックリ。

 私は笑うことしか出来なかったよ。


♢♢♢


 ○ーゼの海割りならぬ、人割りの中心を歩きファンさんの屋敷に案内された。

 木造の大きい平家だ。


 歩いて気づいたが、恐らくハン族の方々は獣人と呼ばれる人達のようだ。

 男性は全員仮面を付けているけど、女性は付けておらず顔が見えたからだ。


 バオさん達と同じ藍色の衣装を着ている女性は、黒や茶の毛で覆われていて、耳が頭上から生えている。

 犬耳のような猫耳のような可愛い耳。


 白色の衣装の女性達は、白や淡いピンクの毛で覆われていて、長い耳が特徴的。

 可愛いうさ耳みたいだなと思ったよ。

 

 ここは、パラダイスか?

 小さい子は仮面を付けていないんだけど、つぶらな瞳や小さな体がめちゃくちゃ可愛い。

 無性に抱きしめたい。

 でも、そんな事したら捕まる。


 あぁ、ここはパラダイスでは無く地獄か。

 こんな可愛い達が溢れた場所で、生殺し。

 精神を鍛えろという神からの試練なのか。


「……どうした?」


 ファンさんの屋敷の一室に案内され、お茶を用意してくると言われ、待っている今、隣に座ったヒースさんが私に声を掛ける。


「えっ? どうもしてませんよ?」

「……」


 何だ?

 何か言いたげなヒースさんの顔。

 私顔に何かついてた?


 バステト様はヒースさんの膝の上で丸まっている。

 ああ、ここに可愛いの神が。

 

「虚空を見つめていると思ったら、今度はだらしな」

「えっ? 何です?」

「何でもない」


 今まただらしない顔って言いそうだったよね?

 バステト様を見たらしょうがないじゃん。


「お待たせ致しました」


 ファンさんの声がして、扉の方を見ると、そこには仮面を取ったファンさんが立っていた。

 そして、その姿に私は見惚れボーッとしてしまう。

 

 先程の人集りでは、皆黒や茶、白や薄ピンクのどれか一色の毛色だったが、ファンさんは黒と白両方の毛色なのだ。

 しかも、綺麗に左右に分かれて色が違う。

 長く揃えられた髪の色もだ。

 そして、極め付けは目の色が金色で美しいの何のって。

 神秘的な雰囲気で、見惚れずにはいられなかった。


「はぁぁ……キレイ……」

「確かに美しいな」


 普段あまりそんな事は言わないヒースさんも、私のため息混じりの言葉に同意してくれた。


「勿体なきお言葉」


 そう言って頭を下げるファンさん。

 顔つきから年齢は感じるものの、五十代ぐらいかな?

 絶対今でもモテモテ間違いなしだね。

 いや、むしろ美し過ぎて高嶺の花かもしれない。

 預言者と言う職業になる人は皆これ程までに神秘的なのか。

 職は体を表すのか。


 私たちの対面にファンさんが座り、白色の衣装を着た淡いピンクの毛色の女性がお茶を出してくれた。

 垂れたうさ耳が可愛い女性だ。

 その女性は、私たちにお茶を出し一礼すると、扉の脇に移動した。


「御使様、早速ではご」

「ファンさん、話を遮ってごめんなさい! その……御使と言うのをやめて貰えたら嬉しいです。バオさんにも伝えましたが、トウコでお願いします……」

「配慮が足りず、失礼致しました。では、トウコ様と呼ばせて頂きます」

「ありがとうございます。出来れば他の方にも伝えて貰えますか? あと、難しいとは思うんですけど……あまり仰々しいのが苦手なので、普通に接していただけると嬉しいです……」

「畏まりました、善処致します」


 ま、すぐにとはいかないよね。

 追々変わってくれたら嬉しい。


 それからファンさんと世界樹についてや、ハン族、ロッテントークについて話を聞いた。


 ハン族は、黒い衣装を着た黒ハン族と、白い衣装を着た白ハン族の二つの部族で構成されている。

 男性は外に出る場合、仮面を付けるのが慣わしなんだとか。

 黒ハン族は身体能力が高いので、主に戦闘面や力仕事を担い、白ハン族は魔力が高く器用なので、道具作成や内政を担っているそうだ。

 特にファンさんの一族は聖属性に適性がある人が多いので、世界樹の浄化を担っているとか。

 ただ、やはりこの大陸でも聖属性に適性がある人は少ない為、日替わりで世界樹の浄化を行なっていても、瘴気の発生量の方が多く、追いついていないのが現状。

 日に日に瘴気が濃くなっているので、今では採ってきた食物全てに“クリーン”をかけてからでないと調理ができなくなってきているそうだ。

 それに、魔物もどんどん瘴気を受けて強い個体が生まれているとか。


 え?

 結構末期じゃない、この大陸。

 創造神様、急がないとか言ってたけど、急ぐ必要あったじゃん!


「日々溜まる瘴気に嘆いている折り、創造神様より神託が下ったのです」

「ああ、あの神託ですか……聞いた感じだと、雑でしたよね?」

「とんでもない! 預言者の職を得て初めて神託を受けましたが、あれ程心に響いた言葉はございません。神はこれ程までに声が美しく、慈悲に満ちたものかと涙が出るほどでございました」

「えぇぇ……そんなにですか」

「はい」


 ファンさんの目つきがヤバい。

 熱狂的信者と言う言葉が当てはまるぐらい、目がキラキラしている。

 ま、眩しい……


 こりゃ、創造神様を実際に目にしたら倒れてしまいそうだな。

 

「浄化……頑張ります」


 こんなファンさんの目を見てしまったら、プレッシャーが半端ないんだが。


「明日、世界樹の元へご案内致しますので、本日はこの屋敷でゆっくりお寛ぎ下さい」

「ありがとうございます」

「失礼を承知でお聞きしますが、トウコ様とヒース様はご夫婦または交際関係にあるのでしょうか?」

「!? 友人です」


 そうだよね、男女で来ていたら交際しているかもと思うよね。

 しかし、こんなイケメンとなんて畏れ多いよ。

 

「畏まりました。では、お部屋は別で宜しいでしょうか?」

「はい、ご面倒かけますがそれでお願いします……」

「面倒などとんでもない! トウコ様をお迎え出来ることほどの名誉はございません」

「……ハハハ……」


 ダメだ。

 きっと、この感じは変わらないな。


「ユンよ」

「畏まりました」


 先程お茶を出してくれた、うさ耳の女性がユンさんと言うようだ。

 なんかできる秘書って感じ。

 そして、ユンさんにより今日泊まる部屋に案内してもらった。


「こちらがトウコ様のお部屋でございます。必要なものがございましたら、このベルでお呼び下さい。食事のご用意が出来ましたらお声がけ致しますので、それまでお寛ぎ下さいませ」

「ありがとうございます。ヒースさんは近くの部屋ですか?」

「はい、お隣の部屋をご用意致しました。それでは、失礼致します」

「じゃ、ヒースさんまた後で」

「ああ」


 バステト様はヒースさんについてくれているので、この部屋には私一人。

 木で出来た机と、対の椅子。

 足の無いベッドが一つととてもシンプルな部屋だけど、ベッドにかけられた布の刺繍がとても綺麗だった。

 それに大きな窓につけられたカーテンや壁に掛けられたタペストリーも、色々な柄の刺繍が施されている。

 衣装からもそうだが、伝統的なものだと窺える。


「はぁぁ……」


 ベッドに腰を下ろし、ため息をつく。


 ファンさんに聞いた、この大陸の現状。

 思ったよりも酷い。

 時間を掛けてここまで瘴気が溜まってしまったのだろうけど、私になんとか出来るものなのかね?

 実際来て見て体感したけど、魔物は強いし、瘴気に覆われてるし、クリーンを掛けないと食べられない食材って。

 カマック様は全力で魔力を注げば大丈夫的なこと言ってたけどさぁ。


 はぁぁ、やれるだけやるけどさ。

 気が重いなぁ。




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