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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第六章 ロッテントーク大陸
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同じ言葉しか発していない気がする…



「ギュォォォォ!!」


 えっ?

 何この生き物。

 ちょっとこの急展開について行けないんだけど。


 いきなり現れたのは、根がウヨウヨと動いた巨木。

 推定体高五メートル程。

 しかも、上部の方には大きな口の様な空洞があり、長く生えた枝をしならせながらこちらに向かってきている。

 

 えっ?

 木って動くんだっけ!?


「ちょ、ちょっと、アレなんですか!? ってかもう目の前!!」

「ッシィッ!!」


 動く巨木がもう目の前まで来た時、ザンっと言う音と共に、肩にバステト様を乗せたままのヒースさんが巨木の向こう側に移動していた。

 そして、徐々に巨木の体が斜めにズレていき、ドォーン!! という大きな音を出して上部が横に落ちた。

 巨木の動きも止まる。


「……はい?」

「トレントか、一体だけとは限らんな」


 そうヒースさんが言うと、森の至る所から「ギュォォォ」とあまり聞きたくない鳴き声が聞こえてきた。

 まだ姿は見えない。

 しかし、さっき倒したトレントと呼ばれる魔物の鳴き声にきっと反応したんだ。


「ヒ、ヒースさん! 急いでここを離れましょう!!」

「そうだな。ヒューマニアのトレントと比較にならない程硬い個体だった」

「えっ!? 私には難なく倒していた様に見えたんですけど」

「いや、瘴気が与える影響がわからなかったのでな。全力を以ってあたったが、以前対峙したトレントとは比べようもない。ミスリルの剣が少し欠けた程だ」

「えぇぇ!?」


 さっき倒したトレントを放置して走りながらの会話で、衝撃。

 軽く切っている様に見えたけど、ヒースさんが全力とは。

 しかもミスリルの剣も欠ける程なんて……


「「ギュォォォ!!」」


 って、そんな事を考えながら走っていたら後ろから複数のトレントが追いかけてきたんだけど!

 しかも思った以上に早い!

 いや、私の足が遅いだけか!


「ヴァオォォォー!!」

「まさか、エルダートレントか!?」


 今度は私たちの進む先に紫色の巨木が現れた。

 しかも、さっきのトレントとは比にならないくらいの体高。

 二倍はあるんじゃ無いだろうか。

 明らかに邪悪な雰囲気を醸し出している。

 極め付けにはヒースさんの驚きの声。


 絶対厄介な魔物でしょ!

 

 そして、私たちは歩みを止めざるを得なかった。


「囲まれたか」

「ど、ど、どうしましょう!?」


 進む先にはエルダートレントと言う紫の巨木。

 それからあっと言う間に私たちを囲むトレントの群れ。

 ただ、どことなく獲物を追い詰めて満足している感があり、すぐには手を出してこない様子。


「ユエ、落ち着くんだ。済まないが、ユエのスキルを行使してもらえないだろうか」

「はっ! そうか!」


 一瞬、“隠匿操作”スキルで気配を消そうと思ったけど、まぐれでも魔物の攻撃が当たる可能性がある。

 そうすると、今はヒースさんに“予定”スキルで【怪我をしない】を組んでいないから、私は大丈夫だとしてもヒースさんが危ない。

 なので、スマホを取り出し“予定”スキルに【私の周りに結界を張る】と入力した。

 もちろんバステト様とヒースさんも加えて。

 結界は見えないけど、実行可能ポップアップがされたから、実行されているはず。

 そして、まだトレント達は攻撃を仕掛けてこない。


「取り敢えず攻撃は防げそうです。ここからどうしましょう」

「流石にこの大陸のエルダートレントには歯が立たなそうだ」

「えっ!? ヒースさんでもですか!?」

「ああ、恐らくこの剣も保たないだろう」

「エルダートレントってそんなに強いんですか……」

「ヒューマニア大陸に生息しているエルダートレントであれば、辛うじて討伐は出来るが、このエルダートレントから感じる強さは、私の遥か上だ」

「マジですか……」


 強さがヒースさんの遥か上って……

 

 そうこうしていると、トレント達の攻撃が始まった。

 だが、全て結界が弾いてくれる。

 トレントには目がある様には見えないけど、私達のことは認識できているようだ。

 しかし、攻撃が全て弾かれてちょっと戸惑っているような雰囲気を感じた。

 すると、一際大きいエルダートレントが動き出した。

 ドシンドシンと私たちに近づく度、地面が揺れる。

 そして、何本もの枝を集めた様に太い枝を作り上げ、それを私たちに振り下ろす。

 が、


「ヴァッ?」


 エルダートレントが振り下ろした枝は、もちろん私たちを守る結界が弾く。

 えっ? みたいな戸惑った様な鳴き声をあげたエルダートレント。

 同じ様に何度も振り下ろすが、全て弾かれる。

 それから枝を伸ばして私たちを締め付けようとしているが、結界を覆うばかりで私たちを掴めない。


「ヴァァァ! ヴァァァァ!!」 


 何だかエルダートレントの根が、駄々っ子の様に地団駄を踏んでいるように見えるのは気のせいだろうか?

 めちゃくちゃ地面が揺れるのでやめて欲しい。


 カシャッっと隣から音が聞こえたので、そちらを向くと。

 デジカメをエルダートレントに向け、写真を撮っているヒースさん。

 その肩には丸まって目を瞑っているバステト様。


「……」


 この光景、ちょっとシュール過ぎないか?

 そして今撮っている場合では無いですよ、ヒースさん……


 ちょっと現実逃避をしたくなった私だが、それはブゥーンと言う音で現実に連れ戻された。

 音がして数秒、私から見て右のトレントが鉄のような槍に貫かれ、倒れた。


「えっ? 何!?」


 それを皮切りに、沢山の槍がトレント達を貫いていく。

 トレントを倒している槍は全体がシルバーの色をしていて、長さは二メートルはありそうだ。

 幸い全てトレント達に命中しているから良いが、それがいくつも飛んでくるからちょっと恐ろしい。


 いつの間にかヒースさんはデジカメをしまっていて、一点を見つめている。

 それは、エルダートレントの後方。

 私には何も見えないが。

 

 そして、ドギャン!! と言うような大きな音が聞こえると、いきなり目の前のエルダートレントのど真ん中を何かが貫いた。

 それからゆっくりと、エルダートレントが私たちに向かって倒れ込んでくる。

 もちろん私たちの結界に弾かれ、横に倒れているトレント達の上に倒れ込むエルダートレント。

 もう、動く事は無かった。

 

「……はい?」


 ものの数分で私たちを囲んでいたはずのトレント達は一匹も動かなくなった。

 見渡す限り一面トレントの死骸。

 私の間抜けな声だけが響いた。


「何者だ!?」


 エルダートレントの後方からこちらに向けてなのか、男性の声が響いた。


「ヒューマニア大陸から来た、人間です!!」 

「ユエは今何と言ったか分かったのか?」

「? わかりましたよ?」

「……そうか。私には理解できない言語であった」

「え? なんで分かったんだろう……」

 

 私が大声で答えてからは向こうからの返答はない。

 しかし、ヒースさんが理解できない言語を何で私が分かったんだ?

 いや、そもそもこの世界の言語を知らないのに、召喚当時からワンド国の人達の言語を理解できていたじゃん?

 そう言う事か。


「忘れてましたけど、私この世界の言語知らないのに、召喚された当時から理解出来ました。だから理解出来るのかも?」

「多種族の言語まで理解出来るとは、召喚者とは……」


 ちょっと呆れ気味というか、少し羨ましさを含んでいるように目を細めて私を見たヒースさん。

 そんな事を話していると、前方からザッザッと複数の歩く音が聞こえ、こちらに何者かが近づいて来ているようだ。


「あの! 敵対するつもりはありません!」


 まだ彼らを人影程度でしかとらえられていないけど、取り敢えず敵意はない事を大声で伝えた。


 ってかこれだけ距離が離れているのに、的確にトレントを撃ち抜いた投擲精度ってヤバくないか?

 しかもヒースさんがヒューマニアのトレントよりも硬いと言ったトレントを、一撃で倒すほどの威力……

 ヤバい、彼らが近づけば近づくほど手に汗を掻いてきた。


 そして、彼らを認識できるまで距離が縮まると、その姿にビックリした。

 全員、目の部分を大きくくり抜いた木製の仮面を付けていたからだ。

 人数は五名で、人型に見える。

 服装は南アジアの少数民族衣装を思わせ、全体的に藍色、ところどころに色のついた刺繍が施されている。

 そして五人の中央にいる人は、大きな槍を背負っていて、それ以外の人たちは手に先ほどのシルバーの槍を抱えている。


「何!?」

「「ッ!?」」


 私たちを認識して、驚きの声を上げた現地民。

 そして、真ん中に居た人がいきなり片膝をつき、(こうべ)を垂れた。

 それを見た他の四人も同じ動作をする。


「……はい?」


 今日ずっと、同じ言葉ばかりを発している気がする……



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