雑な神託
遅くなりました。。
しかも詰め込み過ぎた感が否めません。
清々しい朝だ。
昨日は前日と違い、魔物の襲撃を受ける事なく平和な夜を過ごした。
夕食後二時間ほどヒースさんはタブレットをイジっていたけど、ちゃんと就寝前に充電する為私に預けてくれた。
今日はデジカメの充電も満タン。
だからと言って、長時間使用できるかと言うとそうでは無いのが悲しいところ。
まあ、それはヒースさんも分かっているだろうから、運用はお任せしよう。
朝食も食べ終え、出発の時間。
バステト様が本気モードに変化され、背中に乗せて頂く。
「バステト様、今日もよろしくお願いします。でも、いよいよロッテントークに上陸ですか……はぁ、緊張する」
『多分、ここからはそんなに時間はかからないの』
「お昼前には着きそうですか?」
『もうちょっと早いの』
「そんなに早く着くんですか……」
結局心の準備は出来ていないまま。
それから、バステト様の体がフワッと浮き上がり、あっと言う間に高度は上昇する。
小島から上昇し見えたものは、昨日と変わらない真っ黒い靄。
「ヒースさん、ロッテントークでは迷惑をかけると思うんですが……よろしくお願いします」
「ああ、問題ない。精一杯力を尽くそう」
「頑張ります……。あっ、バステト様、【預言者】さんには本名のトウコで名乗ったらいいですか? それとも偽名のままユエで名乗るべきですか?」
『どっちでも良いの』
「どっちでもって……カマック様はなんてお伝えしたんですか?」
『「ユエ、いや、トウコだったか。そんなような名前の黒猫を連れたやつが世界樹の浄化をしに行くからよ。世界樹の近くに小屋でも作っとけや」って伝えたの』
「……はい?」
「……」
バステト様がするカマック様のモノマネは似てるようで似てないけど、問題はそこじゃない。
何ですか、その雑な神託は。
ヒースさんも固まっちゃってるよ。
『だから、名前はどっちでも良いの』
「ちょ、ちょっと、カマック様のお告げの仕方おかしくないですか!?」
『そうなの?』
「『そうなの?』じゃないですよバステト様! 神託ってそんな感じでいつも伝えるものなんですか!?」
『うーん、いつもはアポローンが担当だからわからないの。今回初めてカマックが神託をしたの』
「えっ!? それって……告げる時に神様の名前とかって言うものなんですか?」
『「ああ、俺創造神な」って言ってたの』
「「……」」
『神託に変わりは無いから大丈夫なの』
「……変わりは無いかもしれないですけど……何か思ってたのと違った……大丈夫かな……」
「……ユエ、諦めよう。既に神託はされているのだから」
ヒースさんが振り向き、悟りを開いた様な顔をしてそう言った。
ヒースさんの言う通りなんだが、どうも不安だ。
もはや名前うんぬん言ってる場合じゃなかった。
神様からお告げがあったと思ったら、そんな雑な感じって【預言者】さんはどう思っただろうか?
しかもそれが創造神のカマック様って。
そもそも、その【預言者】さんは何回目の神託だったのだろうか?
カマック様は暫くぶりって仰っていたけど。
「バステト様ちなみに、いつ振りの神託だったんですか?」
『うーん、忘れたの!』
「……えらい前って事だけはわかりました」
神様が忘れるくらい前って事は、もしかしたら今の【預言者】さんは初めての神託の可能性がある。
前に読んだ本の中で、この世界の種族の事が載ってたけど、一番長生きの種族で確かハイエルフの千年前後だった。
その【預言者】さんがハイエルフの種族だったら前に神託を受けた可能性はあるけど、そうで無かったら初めての神託が創造神カマック様であった上にあの雑な感じ。
はぁ……大丈夫かなぁ。
そんな私の心配をよそに、今日もバステト様はグングン進む。
そして、遠くに見えていた黒い靄がどんどん近くなってきた。
何だろう?
全体的に黒い靄が大陸を覆っているような感じなんだけど、一箇所だけ盛り上がっている様に見える。
遠くからだから、黒い山のような感じ。
「ヒースさん、遠くから見ると黒い山みたいですね」
「恐らくだが、あの中央の一際高い場所に世界樹があるのではないか?」
『そうなの』
マジか。
ここからでも分かるくらいの高さって大き過ぎじゃ無い?
近くで見上げたら首がどうにかなっちゃいそうじゃない?
いや、そこじゃない。
その大きな世界樹でも浄化できない程の量の瘴気って、この世界大丈夫か?
代々【預言者】の家系が世界樹の浄化を行なってきてるって聞いたけど、その一族だけに任せてるのも酷じゃない?
「バステト様、ロッテントークには聖人や聖女の職業の人はいないんですか?」
『今はいないの。この大陸の瘴気が濃くなってからは授けられないの。だから他の大陸から来てもらうしか無いけど、ここまでは遠いし、加護がないと無理なの』
「そうなんですか……私、頑張ります!」
今更だけど、やる気が出てきた。
カマック様はこの依頼受けても受けなくても良いって仰ってたけど、この大陸を覆う瘴気を見たら流石になんとかしないとって気になったよ。
だって、この世界の瘴気を集めて浄化してくれてるんでしょ?
他人事でいられる程、薄情では無いつもり。
結局自分に返ってくることと考えたら、やる気も出るってもんよね。
そんな話をしていたら、あっと言う間にロッテントーク大陸が間近に。
ってか、近づけば近づくほど瘴気が濃く見えるんだけど……
『じゃ、もう入るの』
「えっ!?」
ギュゥンっと、いきなりスピードがアップしたバステト様。
「ちょ、ちょっと早く無いですか、バステト様!」
「更にスピードが上がるとは……」
『さあ、入るの!』
そう言った瞬間、黒い靄の中に突入した。
「うわっ、ぺっぺっ……って、暗らっ!」
「瘴気の所為で日差しが届きにくいのか……」
結界が張ってあるから、瘴気をもろに吸った訳でも無いのに、入った瞬間ぺってしてしまったのは、何となくだ。
しかし、暗い。
海上ではあんなに晴天だったのに、今は曇天と言うのが正しいくらいに暗い。
一応昼間であるのはわかるくらいの明るさはあるけど、これがずっと続いているなら、植物が育つのか心配だ。
絶滅した種もいるって仰ってたから、過酷な大陸である事は間違いない。
そんな中で生き残ってきた種は、かなり強いんじゃないかと推測出来る。
それを考えたら、世界樹を守る一族はどんだけ強いんだろうか。
そんな事を考えながら大陸を見渡すと、一番初めにそれは目に飛び込んできた。
大樹って言葉で言い表せない程大きな樹。
大きいだろうなとは思っていたけど、これ程までとは……
普通の木の高さが、精々二十メートルから五十メートルとしても、世界樹は別格。
百倍はあるのではないだろうか?
二、三千メートルの高さといっても良いと思う。
周りに高い山もないから、余計に際立っている。
とてつもなく太い幹に、生い茂ったたくさんの葉っぱは遠くからでも圧巻の一言。
よく枯れずに茂っているものだと感心する。
「バステト様、世界樹が凄過ぎます……この力強さは凄まじいですね」
『うん、彼女も頑張ってるの』
「……彼女?」
『そうなの』
「えっ、世界樹にも性別ってあるんですね……」
『当たり前なの。あと、そろそろ【預言者】がいる集落近くに着くの』
ちょっと情報過多だ。
いきなりこの大陸の暗さに驚き、世界樹の大きさに衝撃を受け、更に性別までもあったとは……
樹に性別があるなんて知らなかったよ。
突っ込むのはやめにしよう。
バステト様からしたら、世界樹に性別があるのは当たり前みたいな感じの仰り方だったからね。
そして、もう着くらしい。
時間を見たら、小島を出発してから三時間も経ってなかったよ。
流石バステト様。
本当にヒューマニア大陸からロッテントーク大陸まで三日程で着いてしまった。
船で来てたら何ヶ月かかったのだろうか。
考えただけで辛いからやめた。
もう着くとバステト様が仰ったので、世界樹から目を離し、下を見ると、森の少し先に開けた場所が薄っすら見える。
あそこが集落なのか。
集落を目視したと同時ぐらいに、バステト様にゆっくり下降してもらい、集落から少し離れた場所に降り立った。
流石に本気バージョンのバステト様のままではマズイと言う判断だ。
「バステト様、ここまで本当にありがとうございました。あともう少しお付き合い下さい」
「にゃぁ〜」
もう既に子猫バージョンに戻られている。
いつもは私の肩に乗って下さるが、今回はヒースさんの肩に着地。
ヒースさんを瘴気から守って下さるのだ。
「バステト神、世話を掛けるが宜しく頼む」
「にゃっ」
イケメンと子猫の相性って何でこんなに良いのだろうか?
こんな瘴気まみれの場所でも、彼らの周りだけ癒し空間に早変わり。
ああ、ずっと見ていたい。
「……ユエ、まただらしのない顔になっているぞ」
「……ごめんなさい」
さあ、気を引き締めよう!
ここからは徒歩なので、私はスマホを取り出し、地図アプリを起動した。
地図アプリにNAVI機能はないけど、道筋は分かった。
ここから集落までは一時間位で着けるのではないかな。
そして、私達は集落に向かって歩き始めた。
「この辺りは枯れ木が増えてますね……」
「そうだな。やはり厳しい環境だと言う事だ」
ロッテントークに入ったばかりの時に見えた森の初めあたりは、まだ緑の方が多かった。
だけど、今私達が歩いている場所は枯れ木の方が多い様に見える。
世界樹に近付くほど瘴気の影響を受けていると言う事なのだろうか?
そんな事を考えながらトボトボ歩いていると。
「ギュォォォォ!!」
えっ?
何この生き物。
ちょっとこの急展開について行けないんだけど。
お読み下さりありがとうございます!
上達しない文章力。
頑張ります。。




