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いざっ!

少し長くなりました。


 とうとうワンド国脱出を決行する日が来た。


 今日を迎えるまでに一度だけ、やけに城中が騒がしい日があった。

 外でも大声やいろんな音がしていたけど、一番びっくりしたのは宰相が私の部屋に来て、召喚者三人の誰かに会ったか? と聞かれた事だ。

 もちろん会っていないと答える。

 本当に会ってないし。

 でも宰相が私の部屋に来るってことはその三人に何かあったって事だろう。

 恐らく行方をくらましたんじゃないかと思う。

 誰だろ?

 今日までの三人の動向なんて一切こっちには流れてきていない。

 食堂で食べている時だって、私の周りには誰も寄り付かないから会話の内容なんて聞き取れない。

 物語の中の人は、良く食堂とか酒場で耳をそば立てて情報収集しているイメージだけど、あれ結構難しい。

 近くで話しているか、かなり耳が良い人じゃないと会話までしっかり聞き取るのは難しいんじゃないかと思う。

 現に一番近くで会話していたメイドとの距離が軽く五メートルは空いてたからね。

 ガヤガヤした中で聞き取るなんて至難の業よ。


 話は逸れたが、もし誰かが逃げ出してるなら今日わかるはず。


 今日はその騒ぎがあってから三日位しか経っていないが、私は脱出を決行すると決めていた。

 何故なら、絶対殴り飛ばしたい国王、宰相、エドゥアルド、スー、ルーベン、エヴァの六人全員が同じ場所に集まる事を知ったからだ。

 勇者が魔族との戦いに初めて参加するため、その激励会が今日開催され、そこに件の六人全員何かしらの名目で参加するらしい。

 ついでに激励される側の参加者を見れば、誰がいなくなったとかわかる。


 と、言うことで脱出の為の予定を組んで行った。


ーーーーー

イベント:怪我をしない

日時  :開始 終日

     終了 ーー

場所  :なし

繰り返し:毎日

アラート:なし

ーーーーー

【消費魔力は日毎に「100」です。実行しますか?】

【はい】


 これはもしもの保険。

 魔力消費は大きいけど、何かあっては困るので“はい”一択。

 怪我をしないとか、病気にならないとかは予定設定できるのに、何かを倒すとか、殺すとかはこれまで一切実行出来なかった。

 むしろ出来ない設定にしてくれていたことに感謝すら覚える。

 怒りのあまり、予定を組んで人を殺す様なことはしたくない。

 試しに入力した後に後悔したし。


ーーーーー

イベント:ワンド国より銅貨百枚、大銅貨百枚、銀貨百枚、金貨百枚、大金貨百枚を慰謝料として受け取る

日時  :開始 3152年6月25日 17時00分

     終了 ーー

場所  :現在地

繰り返し:なし

アラート:五分前

ーーーーー

【消費魔力は「5」です。実行しますか?】

【はい】


ーーーーー

イベント:装着された隷属の腕輪を外す

日時  :開始 3152年6月25日 18時00分

     終了 ーー

場所  :現在地

繰り返し:なし

アラート:五分前

ーーーーー

【消費魔力は「5」です。実行しますか?】

【はい】


 現在時刻は十六時。

 今私は第三倉庫で魔石を選別中。

 激励会は十八時開始。

 十七時には皆そちらに参加する為仕事を終わらせ向かうはずだから、国庫のドアにも見張りはいるだろうけど、中にはいないと予測を立てて組んでみた。


 この世界の貨幣価値は調べた限り国によって異なるが、この国がある大陸では大凡一緒の様だ。


 鉄貨1枚  ≒ 10円

 銅貨1枚  ≒ 100円

 大銅貨1枚 ≒ 1,000円

 銀貨1枚  ≒ 10,000円

 金貨1枚  ≒ 100,000円

 大金貨1枚 ≒ 1,000,000円


 大金貨の上に白金貨という硬貨があるが、なんと一枚一千万相当……

 ほとんど一般には出回らないそうなので今回の慰謝料としては控えておいた。

 貰っても使い所がなかったら勿体無いしね。

 トータルの慰謝料を日本円にすると大凡、一億一千万程。

 貰いすぎ?

 確かに日本で一億円の慰謝料なんて有名人の離婚問題でしか聞いた事がない。

 もちろん普通に生きてきて、そんな額を拝んだ事もない。


 ただ、全く違う世界に拉致されて、元の世界には命をかけたとしても帰れる保証はなくて、賃金も払われず働かされて、これから知り合いもいない世界に一人旅立つんですよ?

 (私が勝手に出て行くんだけどね)

 国の税金から貰う事になるけど、もう、人の事を気にしている場合じゃないんでね。

 気にしない!


 それと、私に充てがわれた部屋のベッド、テーブル一台、椅子二脚も頂戴した。

 後で部屋に誰か入ったらびっくりするだろうね、ほとんど何もなくて。


 さ、そろそろ時間が迫ってきた。

 魔石の鑑定を終了し(こんな日までやらなくていいと思ったけど、習慣でやってしまう)、倉庫に設置されている椅子に座り時間を待つ。


 ピロンッ


【5分前:予定時刻17:00】

【イベント名:ワンド国より__】


 ドキドキする。

 これが実行されればもう後には引けない。


【予定時刻です】

【イベント名:ワンド国より__】


 シュンッ

 ジャラジャラジャラジャラーー


 時間になると共に、目の前のテーブルに色や形の異なる硬貨が大量に現れた。


 うわっ。

 これが、大金貨貨……

 金貨が五百円玉くらいの大きさなんだけど、その一回り大きくなったものが大金貨。

 刻印されている文字も違うけど、重量感がまた違う。

 これ一枚で百万……ゴクリッ。

 だめだ大金に見入っちゃうからテーブルに散らばった硬貨を急いで袋にしまう。

 銅貨十枚、大銅貨十枚、銀貨十枚と念の為の金貨一枚を別の小袋にしまい、持っている鞄にしまう。

 それ以外は全てストレージへ。

 ストレージの中に入れれば何枚あるかも自動集計してくれるのでありがたい。


 日本から召喚された時に持っていた鞄は斜めがけのキャンバス地。

 まあ、この世界の人からしたら変わった形かもしれないけど今は仕方ない。

 そのうちどこかの街で一般的なバッグが買えたらいいな。

 その鞄を斜めにかけ、これで準備完了。

 隠匿操作スキルで完全に気配を消し、倉庫から出る。

 次の行き先は、激励会が開催される城のダンスホール。

 その手前の人気のないところで十八時まで待機。


 やばい、これまたさっきとは比べ物にならないくらいドキドキする。

 ようやくこの腕輪とおさらば出来るんだ。

 取れたら宰相に投げつけてやる!


ピロンッ


【5分前:予定時刻18:00】

【イベント名:装着された__】


 さっきまでいろんな人がホールへ出入りしていたが、十八時から開始だからか五分前にホールの入り口が閉まり始めた。

 急いで中に滑り込む。

 ドアの脇には騎士がいるので少し離れて人がいないところへ移動。

 もちろん誰にも気付かれていないと思う。


 ホール内を見ると多くの人が談笑している。

 ホール奥には一段高いステージがあり、豪奢な椅子が五脚、それよりも豪奢な椅子が一脚用意されている。

 そしてステージの端には宰相が立っていた。


【予定時刻です】

【イベント名:装着された__】


 カシャン


 おっと、腕輪を取り落とすとこだった。

 外れた腕輪をしっかりキャッチして、宰相の顔を見る。


「ッ!?」


 かなりびっくりした顔をしてオロオロし始める宰相。

 ただ、それと同時に王族の入場がホール全体に告げられ、辺りは静まり返る。

 なので、宰相はそこから動くことができない。


 私はそんな様子をニヤニヤしながら眺め、ステージ脇に移動を開始する。

 まずは国王をぶっ飛ばす。

 初めに国王をぶっ飛ばさないと騒ぎが起きた時点ですぐ護衛が集まってしまうから。


 国王が初めに登場し、続いて王妃、王子、王女、勇者のアガツマくん、聖女のテラツカさんが入場してきた。

 そして各々の椅子の前に立ち、国王がタラタラと何かを述べ始めた。


 うん、逃げ出したのはカジさんだね。

 まだ逃げ出したと断定できないけど、この場にいない時点で可笑しい。

 

 アガツマくんはこれでもかってくらい勇者らしいキラキラした鎧のような防具をつけ、これまたギラギラした剣を脇に刺している。

 テラツカさんも細かいレースがあしらわれた上等な白いドレスを纏い、王女よりキラキラしてるけど大丈夫か? と思ってしまう。


 私はそっとステージに上がり国王の元へ向かった時、


「陛下!!」


と、大きな声でステージ下から上等な騎士服を着た男性が叫んだ。

 振り向くと既に国王の元に彼は向かっている。

 やばい、気付かれた!?

 見えていないと油断してた。

 急げ!!!


 彼の方が私よりかなり国王と離れていたはずなのに……


 ガツンッ!


 先に国王にたどり着いたのは私だった。

 国王を殴ると同時に騎士の彼が到着し国王を支えた。

 それと同時に国王を背中に匿い抜刀する。


 ギャーーッ!

 前髪スレスレで剣を振るわれて腰が抜けそうだったけど、なんとか持ち堪えて宰相の元に向かおうと、剣を抜いた彼を見据えたまま後ずさる。

 どうやら私の位置まではわからないようで、探っている様子だ。


 ジリジリ離れ距離を取ることが出来た。

 もう、冷や汗だくだく。


 宰相の周りにも護衛が集まり始めているけど、なんとか宰相の後ろに回り込み、蹴りを入れてやったらゴロンと転がる巨体の宰相。

 びっくりした顔にガツンと腕輪を投げつけてやった!

 ノーコンじゃなくて良かった!


 もっと国王と宰相の情けない顔を見ていたいけどそんな余裕がない。

 次はエドゥアルド。

 と思ったら近くにスーとルーベンが集まってきてたので、二人の顔を順に殴る。

 いきなり殴られた二人。

 殴られたことに一瞬わからないようで、頬を押さえてフリーズしてた。

 いい気味だ!


 次はエドゥアルド、ホールの真ん中あたりにいたので走っていく。

 走った勢いのままエドゥアルドの腹に頭突きをする。


「グホッッ!!」


 ぶっ飛ぶエドゥアルド。


 次はエヴァ。

 なんだけど、見つけられない!

 あっ、メイドだから配膳の準備か!


 今ホール内は襲撃者の確保に躍起になっている。

 使用人入り口は手薄だ。

 急いで入り込む。

 広い配膳室の中に彼女を見つけた。


「ホールが騒がしいわ、ブホッ!」


 エヴァの顔面を思い切り殴った!


「エヴァ!?」


 メイドたちがエヴァに集まってくる。


 全員に一発ずつお見舞いできてスッキリした!

 よし、捕まる前にとっととここからずらかろう。


ありがとうございます!

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