納豆を食べる人は、只者では無いそうだ
ガタガタっと、ベッドが揺れ意識が覚醒する。
夜中に小規模な噴火が何度かあり、その度にベッドが揺れ、あまり熟睡出来なかった。
日も登り始めたので、今回の揺れで起きる事にした。
少し離した隣のベッドを見ると、ヒースさんは寝ていなかった。
次はソファの方を見てみる。
いらっしゃいました。
ただ、昨日の放心状態のままでは無く、ソファに横になっている体勢だ。
起こさない様に洗面所を呼び出す。
洗面所だけ呼び出すのは、お風呂を呼び出す時の半分の魔力で済むので、最近は洗面所だけにしている。
洗面所の引き戸を開けると。
「おはよう」
後ろから、ヒースさんに声を掛けられた。
「あっ、おはようございます。……起こしちゃいましたか? それとも起きてました?」
「起きていたよ。昨夜、衝撃を受けたのでな、あまり睡眠は取れなかった」
「……ごめんなさい……」
「良いんだ、理解するまでに時間が必要だったが」
「ですよねぇ……」
「ただ、その力はあまりに強大だ。良からぬ輩に利用されるとも限らない。今後も、他者へ伝える事は控えたほうが良いだろう。もちろん、他言しないと誓う」
自分でヒースさんにぶっちゃけておいて何だけど、簡単に受け入れ過ぎやしないかい?
しかも、忠告までしてくれちゃってさ。
こんな力があるって知ったら、自分が良からぬ輩になったって不思議ではないのに。
それを忠告するんだから、真面目なのか、悟りを開いているのか、ズレているのか……もはや分からない。
「……まさかこんなに、すんなり受け入れて貰えるとは思っていませんでしたよ」
「すんなり、ではないんだがな」
「それでも、助言してくださるって事は、受け入れてくれたって事ですよね? ありがとうございます。私も出来るだけ悪い事に使わないと誓います」
「出来るだけ……そこは断言してほしいところだ」
「いやぁ、カッとなると周りが見えなくなるタチなんで、もしかしたらやらかしてしまうかもで……へへへ」
「……」
この年でへへへとか言っても全然可愛く無いよね。
ヒースさんが、何か可哀想なものを見る目で見てくるんだけど。
わかってるから、そんな目で見ないで!
それに私だって、出来ればこの力を悪用したくない。
でも、ワンド国から頂いた慰謝料も、【薔薇の宴】への小さな嫌がらせも、ヒースさんからすれば力の悪用だと感じるかもしれない。
その時の感情で動いちゃうのが、私の悪い癖。
分かってるけど直らないんだから、絶対悪用しないなんて誓えないよ。
「とにかく、出来るだけ自重はします。それと、まずは顔を洗ってきます! ごめんなさい、こんな顔と格好で」
「……大丈夫だ」
そう、寝起きのまま話してたんだと、やっと気付いたのよ!
スッピンだし、自分じゃ分からないけど涎の跡とかあったら恥ずかしすぎる……今更だけど。
慌てて洗面所に行き、顔を洗う。
幸い涎の跡はついていなかった。
だけど、髪は乱れまくりだったよ。
髪の毛もセットして、化粧して着替えも完了。
準備を終えて洗面所を出る。
「ヒースさんも洗面所使いますか?」
「……いや、洗顔は済ませたから大丈夫だ」
何だか、自重してないじゃんって言う様な目をしているのは気のせいかな?
まあ、言われないからいいや。
そんなヒースさんの目を無視して、ベッドをしまおうとするが、バステト様がベッドに丸まったままだ。
「バステト様、ベッドをしまいますよ! ソファに移しますね」
「ふにゃぁ〜」
前足を伸ばしながら、欠伸をするバステト様。
ご自身でベッドを降り、ソファに向かわれた。
そして、またソファで丸まる。
ただ、ただ、可愛いです。
いかん、バステト様に見惚れている場合ではない。
昨日設定した“予定”時間が迫ってきてるからね。
また机と椅子を出し、朝食の準備をする。
ヒースさんとバステト様にはパンと目玉焼きとベーコン。
それと少しのサラダ。
ザ、洋の朝食。
私は、ご飯に味噌汁、焼き鮭に納豆。
ザ、和の朝食。
「ユエの朝食は違うんだな」
「はい、祖国の朝食です。食べてみます?」
「白い穀物はコメか? どこかの国で主食であると聞いた事がある。ただ、食した事はなかったが」
「!? こっちにもお米を主食にしている国があるんですか!?」
「確か、その様に書かれていた書物を見た記憶はあるが、済まない。定かでは無い」
「今度調べてみます! もしその国がわかれば行ってみたいなぁ」
主食がお米なら、その国に行くっきゃ無いっしょ。
もしかしたら、日本を感じられる国かもしれない。
いや、ベトナムとかアジアンな感じかもしれないか……
まあ、調べて行ってみるのはアリだな。
思いがけず、ロッテントークの後の目的が出来て嬉しい。
これで、燃え尽き症候群にならずに済みそうだ。
そんな事を考えながら、納豆をかき混ぜ始めると。
「!? 何だ! その何とも言えぬ臭いは!」
「えっ? 納豆ですよ?」
「うっ……」
「ご、ごめんなさい! この匂いダメでした!?」
「そ、その臭いは、苦痛だ。それを食べるのか!?」
「えっ? はい……」
「うっ……」
ヤバイ、ヒースさんが苦しい顔をして、鼻を押さえてる!
まさか、この納豆の匂いがダメだったか……
バステト様は、気にした様な素振りもないから、大丈夫って事かな。
そう言えば何かのテレビ番組で、海外の人は、特に納豆の匂いがダメって人が多いってやってたな。
日本人でさえダメな人がいるもんね……
私としては、食欲をそそる匂いなんだけどなぁ。
でも、ヒースさんが苦しそうだから、急いで納豆をストレージにしまった。
あぁ……せっかく混ぜたのに。
食べたかった。
「スミマセン……でも、あれ美味しいんですよ?」
「信じられん、あの匂いのものをか……ユエはやはり只者では無い」
「いや、只者だよ!」
納豆を食べる人が只者で無かったら、日本人殆ど只者では無いよ!
それにしても、今後ヒースさんと一緒の食事の時は、納豆が食べられないのか……
こっそり食べよう。
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