大体言ってみた
ヒューマニア大陸を離れ、ロッテントークへ向かった初日。
バステト様と、予め話し合って初日宿泊場所と決めていた島は、火山島だった。
タブレットの地図アプリでは、そこまで分からなかったのが痛いところだ。
ただ、近くには安全な島が無く、バステト様の変化解除時間も迫っている。
ここから見える島の、安全地帯と言えそうな場所はかなり狭い。
ただ、私の“予定”スキルで何とかなるんじゃないかと思う。
「バステト様降りましょう。私のスキルで何とかなると思います」
『あのスキルね、わかったの』
そう言って、一番マシな浜辺に降りてもらったが……
「あ、暑い!!」
『暑いの!! ユエ、冷たいお茶なの!』
「バステト様、今結界張るのでちょっと待って下さいね!」
うっかり結界を解除してしまったバステト様。
そこは、火山から噴き出したマグマの熱風が強過ぎて、灼熱地獄だった。
スマホを出し、急いで予定を組む。
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イベント:自分を中心に半径5mの結界を張り、結界内の温度を25度に保つ。また、マグマ、熱風、虫、雨を防ぎ、バステト神、ジェス・カイルラー、自分以外の侵入を不可とする
日時 :開始 3152年11月5日 16時15分
終了 3152年11月6日 06時00分
場所 :現在地
繰り返し:なし
アラート:なし
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【消費魔力は「200」です。実行しますか?】
【はい・いいえ】
はいを選択。
注文を多くつけ過ぎたか……いつもより倍魔力を持っていかれた。
しかし、背に腹は変えられん。
「バステト様、お待たせしました。どうぞ」
バステト様は、既に子猫バージョンに変化済み。
小さめの器に並々冷たいお茶を注いでお出ししたら、勢いよく飲み始めた。
「ヒースさんもどうぞ」
「……ああ、すまない。しかし、突然辺りが快適になったが、これもユエの能力なのか?」
「はい、とても万能な能力を頂きました」
「そうか、凄まじい力だな」
ヒースさんには、もうこの能力の事を話しても良いかなって思っている。
それに、ロッテントークで世界樹の浄化が終わって、ヒューマニア大陸に戻ったらきっとお別れだ。
一月半後にはお別れするのに、今更自重してもしょうがないかなって、半ば開き直り?
でもその話をする前に、ストレージから椅子二脚とテーブルを出す。
立ち話も何だし。
ヒースさんが謎の特訓をしにヤヴォン王都を離れている間、時間のあった私は、家具屋さんでソファ何かも机と共に購入していた。
夕食を取ったら、ソファを出そうと思っているけど、ヒースさんに呆れられそうかなとちょっと考え中。
そんな時、ドォーンっと大きな音ともに地面が大きく揺れた。
机や椅子も揺れ、バランスを崩し倒れそうになる。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます」
そんなバランスを崩した私の体を、ヒースさんが支えてくれた。
本当、さりげない所が良い男なのよ。
「すごい音がしましたね、噴火かな?」
「そうだろう。ここまで噴石が飛んで来ないと良いが」
「ゔぁっ!」
そうヒースさんが言うもんだから火山の方を見ると、こちらに大きな噴石が飛んでくるのが見えた。
飛んでくる噴石を見て変な声が出てしまったが、その噴石はもう目の前。
ドカンっと当たる音がしたが、私たちは無傷。
“予定”スキルで張った結界が、飛んできた噴石を弾いてくれたようで、結界の周りに粉々に落ちていた。
ヒースさんは噴石を切ろうとしたのか、見えないうちに剣を抜いている。
無言で切る気だったとか、ヤベェかっこいいっす。
「結界か。あの大きさの噴石も防ぐとは強力だな。いや、ダンジョン下層の魔物の攻撃でさえも弾いていたか……」
「あ“ぁ、びっくりした!」
「んにゃぁ」
特に揺れや音を気にする事なく、欠伸をするバステト様。
こっちは結界が張ってあるのを知ってたけど、巨大な石が飛んできて気が気じゃなかったですよ。
ヒースさんは違う意味で驚いているようだけど。
「結界が張ってあっても、振動や音はびっくりしますね」
「ああ。だが、この場所でこれ程寛いでいる事の方が私は驚きだがな」
「アハハハ……明日の朝までは安全なので寛いで下さい」
「……」
黙っちゃったよ、ヒースさん。
とにかく夕食の準備をしてしまおう。
“買い付け”で購入していた野菜類を出し、簡単に切り分け皿に盛る。
ドレッシングも日本のものをかけるが、今更ヒースさんは気にしないだろう。
それから、屋台で買っておいた串焼き、シチュー、パンを出し、それぞれの前に並べる。
もちろんバステト様の分も一人分でお出しする。
「もはや、この光景にも慣れてしまった自分が恐ろしい」
「ん? 何か言いました? さあ、頂きましょう!」
もちろん聞こえているが、聞こえないふり。
慣れてくれて有難いっす。
夕食を終え、片付けも済んだので机と椅子もしまい、ソファを出した。
これを見て、ヒースさんはまた無言だ。
何か言いたげな顔をしていたけど、無視して座ると、バステト様も私の膝の上に乗ってきた。
「みゃぁ、みゃぁ」
甘い鳴き声と、頭を擦り付けてくる動作をするバステト様。
これはあれですね?
「バステト様、これですか?」
「みゃっ!」
私が取り出したのは、猫用の高級ブラシだ。
細い毛も優しく取れるステンレス素材のもの。
これをいたくお気に召したバステト様は、寝る前におねだりをして下さる。
それがまた可愛いのなんのって、やらざるを得ないですよ。
「今日も長い距離ありがとうございました」
「んみゃぁ〜」
感謝を込めて、ブラッシングをする。
気持ち良さそうな顔をしながら、鳴くバステト様。
「気持ちよさそうだな」
「これ、大好きみたいなんですよね。明日もお世話になりますし、しっかりやりますよ〜」
いつの間にかソファの横に座っていたヒースさんも、バステト様の様子を見て口元が少し緩んだ気がする。
それにしても、バステト様の毛はあまり抜けないんだよね。
元々サラサラふわふわだから、絡まっているところが少ない。
一回に抜ける量はほんのちょっと。
しかしこの抜け毛だけど、捨てるのが忍びないくらいふわふわでキラキラしているんだよね。
なので、今までに抜けた毛は全てストレージにしまっている。
仮にも神の毛と考えたら、普通に捨てられなかったって言うのもある。
一通りブラッシングを終えたところで、ヒースさんに話を切り出す。
「ヒースさん、私の能力なんですが……」
「どうした?」
「ヒースさんには、どんな能力かお伝えしておこうと思って」
「今更だが、無理に話そうとしなくて良い。特殊であることは理解しているつもりだ」
「はい、かなり特殊で。ただ、ヒースさんには話しておきたいと言うか、正直なところ、自重するのも疲れたと言うか。アハハハ……。ヒースさんはワンド国の方ですけど、ぶっちゃけ信じきってしまってるんですよね」
「信じてもらえている事は嬉しく思うが、自重とは……していたようには見えないがまだあるのか?」
「えっ? かなり自重していたつもりなんですが……」
「最近は特に、アイテムボックスの性能や、その特殊な能力を隠していないように感じていたが、まだあるのか……」
「……はい、あの、基本的に生命を奪うこと以外であれば、私の魔力を消費することで、大体叶えられるようなんですよね……ハハハハ……」
「……」
また、ヒースさんが無言になってしまった。
でも、今更だしと私の能力を実際に見せながら話していく。
キッチンを出したり、お風呂を出したり、トイレを出したり、アイテムボックスで無くストレージの性能を伝えた。
恐らく思考が追いついていないだろうヒースさんは、ずっと固まったまま。
いや、そもそもこの設備を知らないヒースさんは見せられても何のこっちゃだろうな。
「ごめんなさ、一気に話して……二人での移動ですし、ヒューマニア大陸も離れたので、他の人にバレる事はないかなと思って……なので、これからこの様な設備を出すことがあると思うんですが、驚かないでくださいねって事です!」
「……」
ダメか、まだ起動できていないようだ。
まあ、もう説明しちゃったし、いっか!
今度はベッドを二つ、ちょっと距離を置いて出す。
「明日の朝までは安全なので、ヒースさんも休んで下さいね」
「……」
「あっ、クリーンかけますね。じゃあ、私はこっちのベッドで寝ますので、おやすみなさい!」
ヒースさんに【クリーン】の魔法を掛け、バステト様を抱きかかえ、ソファからベッドに移動する。
ヒースさんはソファに固まったまま。
明日の朝まで再起動しないかな?
また一気に詰め込んですんません!!
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