いと神々しい
一日一話投稿、ダメでした…難しい!頑張ります。。
クリフ君と涙のお別れをした翌日。
宿を引き払い、牧場へ行きクリフ君に最後の挨拶をした。
今日は泣かず、耐えた自分を褒めたいと思う。
エンデル街を出る為、牧場から防壁に向かっていると、冒険者ギルドの前を通った。
そこで会いたくない三人を発見する。
《薔薇の宴》の三人だ。
うわぁって思っていたら、向こうも私に気付いた。
否、ヒースさんの方を見ていた。
その瞬間、顔が青ざめ体が震え出した三人は、脇目も振らず走り去ってしまった。
「……」
「懲りた様だな」
接触がなくて良かったけど、あれは懲りたと言うのだろうか?
ただ怯えていただけじゃないか?
相当にトラウマを与えていた様だ。
まあ、どちらにせよもう会う事はないから良いか。
少しは生活態度を改めてくれると良いなと思うけどね。
それからは特に何事も無く、エンデル街を出た。
《ドナンの星》の三人はどうやら依頼中で、会えなかったのは残念だ。
またクリフ君に会いにこの街にきた時、三人に会えたら良いな。
暫く街道を歩き、人気のない林の中に入る。
今回は馬を借りていないし、馬車の予約もしていない。
私の自転車を使う事もない。
何故なら。
「バステト様、この辺りで良いでしょうか?」
「にゃっ!」
そう、バステト様が早速乗せて下さるそうなのだ。
ここまで意思疎通させるのに大変苦労した。
馬を借りに行こうとした時、バステト様がニャーニャー言って首を横に振り、私の顔をペシペシするもんだから、そこからイエスノーゲームが始まった。
右前足はイエス、左前足はノーで答えてもらい、では、馬車か?徒歩か?と聞いていきどちらもノーと言われ、最後バステト様が自分の胸を張り、右前足を上げるもんだから、バステト様に乗るんですかって聞いたら、イエスだった。
ロッテントークへ行く為じゃないのに良いのだろうかと聞くと、これもまたイエスと答えてくれた。
なんて寛大な神なんだ。
いや神だからこそ寛大なのか?
どちらにしろ有難いことに変わりはない。
そして今、人気のないところでバステト様を肩から下ろし、本気バージョン変幻を待っている。
ちょっとワクワク。
あのふわふわツヤツヤのボディが大きくなり、人が乗れるサイズになるなんて考えただけで最高じゃん。
抱きつくのは流石に無礼だろうけど、ガバっとさせてくれないかなぁ。
何て考えてたら、バステト様が光出した。
その光が凄まじいの何のって、目を覆ってしまうくらいだ。
人気の無いところに来ているけど、こりゃ遠くからでも異変だと思われてしまうレベル。
『これで良いの』
低音の効いた、底から湧き上がる様な声が聞こえて来た。
恐る恐る目を開けると、そこには黒い巨体。
何と表現したら良いのか、体高は見上げる程高く、体長は大型バス位あるだろうか。
なんと言ってもそのスラっとした巨体の周りがキラキラしていて、神々しい。
お顔は可愛さが抜け、キリッとしたスマートな大人猫の表情。
毛並みはふわふわでは無く短めだ。
それでも艶のある綺麗な毛並みに変わりはない。
ああ、素晴らしい、至高だ。
「まただらしのない顔になっているぞ。しかし、壮麗だな」
「美し過ぎますバステト様! 乗るのが恐れ多い!」
『乗って良いの。早く行くの』
体の内側に響く低音ボイス。
「その姿だとお話ができるんですね」
『そうなの。でもこの姿だと神力を多く使うから、長くても一日八時間ってところなの』
「っ!? スミマセン! すぐ乗ります」
バステト様が四つん這いから足を折って座って下さったので、よじ登る。
座って下さっても高いから、ヒースさんに手伝ってもらった。
なんとかバステト様の背中に乗り、ヒースさんが私の前に座る。
ああ、バステト様の毛並み控えめに言って最高。
硬めに見えた短い毛だけど、やはり柔らかくふわふわだった。
はあ、ずっと乗っていたいし、スリスリしたい。
「じゃ、隠匿しますね」
何とかスリスリしたい衝動を抑え、隠匿操作をかける。
そう、流石にこんな素晴らしい姿を晒したまま飛ぶ事はできない。
大陸中が大騒ぎになっちゃうからね。
ヒースさんの背中に触れ、隠匿操作を全員にかける。
「バステト様オーケーです」
『出発なの!』
そう言って、バステト様の周りに空気の幕みたいな物が展開された。
結界かな?
そう思ってるとバステト様が浮き上がり、空を駆け出した。
「うっ……」
ヒースさんから、今までに聞いたことがないような声が漏れた気がする。
ただ、私の前にいるからよく聞こえない。
ああ、飛んでいるお姿を遠目から見たかった。
乗っているから全体像は見えないけど、きっと凛々しい走りなんだろう。
しかし、速度が凄まじいな……
結界が貼ってあるからか風の抵抗は無いんだけど、景色があっと言う間に過ぎていく。
エンデル街が見えたと思ったらもう遥か後方に。
えっ?
これ王都まですぐ着いちゃうんじゃないの?
馬だと休み休みだし、距離も山を迂回したりで直線距離よりも長くかかる。
だが、空は直線で行ける上、このスピード。
体感的には新幹線ぐらいの速さが出てるんじゃないかい?
「こ、この速さと高さは流石に恐ろしいな……」
「流石バステト様ですね!」
ヒースさんはこのスピードと高度は初めてで慣れていないんだろう、振り返った顔色が少し悪いような気がする。
私は新幹線や飛行機などで慣れているので、全然問題ない。
それに、何故か体は固定されていないのに落ちると思えないんだよね。
バステト様の結界のおかげだろう。
ちょっとヒースさんの様子が心配だけど、過ぎ去る景色を楽しんだ。
すると。
『もうすぐ着くの』
えっ?
早っ!
多分一時間半くらいしか走ってないんじゃ無い?
馬で九日だった道のりを一時間半って……
しかし、このまま王都に入る事は出来ないから、人気のない森に降りてもらった。
「ヒースさん大丈夫ですか?」
「……ああ」
バステト様から降り話しかけるが、いつも以上に口数が少ないヒースさん。
顔も白いし、かなり怖かったのかも。
申し訳ないけど、ヒースさんでも怖いものがあるんだなと、ちょっとホッコリしてしまった。
そして、またピカっとバステト様が光り、元の姿に戻り私の肩に乗って下さる。
「バステト様、ありがとうございました」
「んにゃっ」
良いよって事かな?
耳元で鳴かれるのもまた至高だ。
それから徒歩で王都に入った。
ヒースさんは王都まで無言。
トラウマになってないか心配だな……
ここまでお読み下さりありがとうございます!




