また泣き通し
うっかりナージンさんとの約束を忘れて、ロッテントークへ行こうと思ってしまった。
思い出せて良かった。
危ない危ない。
でも、カールさんとってナージンさん言ってたけど、ヤヴォン国の国王だよね?
気が重いなぁ……
失礼な事したらどうしよう。
なる様にしかならないだろうけどさ。
あと、バステト様も同席していいか聞いてみよう。
って、猫と認識されたら食事処ではダメかな?
まあ、聞いてみるだけ聞いてみよう。
「バステト様、ロッテントークに行く前にヤヴォン国王都へ寄り道しても良いですか?」
「にゃっ」
「ありがとうございます」
今回は首を縦に振って、肯定して下さった。
それから、バステト様と部屋で夕食を取り眠りについた。
ああ、明日は違う意味で気が重いなぁ……
♢♢♢
翌日、食堂にて
「おはよう」
「……おはようございます」
おや?
ヒースさんの顔が晴れやかだ。
昨日の帰り際、あんなに険しい表情をしてたのに、一晩で何があったんだ?
「外で話そう」
そう言って私たちは朝食を取り、宿を出た。
そして、どこかのお店に入る事もなく、真ん中に大きな木がある中央広場にやって来た。
広場には子供達が遊んでいたり、端の方には露店も出ている。
椅子も等間隔に並んで設置されていて、人が少ない場所を選び、ヒースさん、私、バステト様とで座る。
そう、やはり一緒に移動しているバステト様。
別に部屋で待ってても良いのに、何故か付いてきて下さる。
ここも謎だ。
「昨日は取り乱してすまなかった」
「いえ! 私が色々伝え過ぎてしまったのもいけなくて……スミマセン」
「良いんだ。遅かれ早かれ聞かされていただろう? 少し混乱してしまったが、なんとか整理できた」
「そうですか……あの……その……」
「ロッテントークへか? 良い経験になるだろうから、同行させてくれ。バステト神にも迷惑を掛ける」
そう言って、私の膝に乗っているバステト様に頭を下げた。
「……っ、良かったぁぁぁ」
そのヒースさんの言葉に、私は深く安堵した。
そして、ヒースさんはバステト様を神様と信じてくれたんだね。
流石、この世界で出会ってきた中で一番の柔軟な思考を持つ人だ。
なんだかんだ、ヒースさんは私がこれまでしてきた事を受け入れてくれていると、思っている。
それは否定的に言われることがなかったからだ。
どこまでこの人は懐が深いんだろうか。
いや、人間力の高さか。
「も、もしかしたら、い、一緒に、来てくれ、ない、かもってっっ、ふ、あんで」
ヤバイ、声が詰まってうまく喋れない。
「ハハ、また酷い顔をしているぞ」
「にゃ……」
涙で前があまり見えないが、ヒースさんには笑われ、バステト様の鳴き声からは呆れた様な雰囲気を感じた。
だって、不安だったんだよ。
一気に気が緩んで泣いてしまったのは、仕方ないでしょう。
勿論行かないって言われる事も想定してた。
恐らくその時も泣いていただろう。
でも、今泣いているのは安堵泣きだ。
それにしても、私はこの人の前で泣き過ぎだな。
今後信じてもらえなくなるかもしれないから、出来るだけ泣かないようにしてたのに。
無理だったわぁ。
「しかし、バステト神に世話になるとしてもどの位かかるだろうか?」
「グズッ、ガマック様ば、三日ぐらいって言っでました」
「三日……凄まじいな」
「んにゃぁ」
何となく誇らしげなバステト様の鳴き声。
威厳というよりむしろ可愛さしかない。
あっ、いやそれは失礼か。
あと、恐れ多いが、撫でさせてもらえないだろうか……
今までには抱き抱えたり、肩に乗って下さったりで触れてはきたけど、勝手に撫でる事はしていない。
あわよくば猫吸いもしたい。
流石にそれはダメか。
「バステト様、撫でさせて頂いても良いですか?」
「……にゃぁ」
しょうが無いなぁが漂う鳴き声と、肯定の頷きを頂きました。
そして撫でさせてもらう。
ツヤツヤふわふわが堪らない。
「今度はだらしない顔になっているぞ」
「……失礼しました」
ヒースさんに突っ込まれる程だらしない顔をしていたとは……恥ずかしい。
「あっ、もう一つ言い忘れてたんですが、ヤヴォン国のナージンさんが、ロッテントークへ行く前に王都に寄って欲しいって言ってたんです。寄り道してもいいですか?」
「私は構わない」
「ありがとうございます。ところで、ヒースさんレベル上げはどうします? またダンジョンに潜りますか?」
「そうだな、百三十を目指してはいるが、ロッテントークへ行くに関係しないとなるならば、切り上げるのも問題ない。ダンジョンはいつでも挑戦出来る。先に神の願いを叶えるべきだろう」
「ありがとうございます。じゃあ、今日この後買い出しをして、明日には発ちますか?」
「そうしよう」
「……クリフ君に会いに行って良いですか?」
「勿論だ」
話がとんとん拍子で進んでいるけど、クリフ君との別れも近づいて来てるって事だ。
しかも、明日出発って事は今日が最後。
ああ、昨日は気が重かったけど、今日は胸が苦しい。
そして、牧場。
クリフ君と共にリリーちゃんも私のところへやって来てくれた。
「クリフ君、短い間だったけど、と、とっても、たの、たのしがっだよぉぉ」
あぁ、もうダメだった。
クリフ君がこっちに寄って来てる段階で、目に涙が並々で前が滲んでた。
ガバっと首に抱きつき、またオイオイと泣いてしまった。
「貴方、酷い顔よ?」
商人ギルドの受付にギルド長への言伝をお願いしたら、時間を作って来てくれたシャーリーさん。
しかしこの間からずっと、酷いとかだらしないだとか言われ続けているな私の顔は。
まあ、元々大した顔じゃないから良いんだけどさ。
ひとしきり泣いた後、抱きついた首から離れると、クリフ君が私の顔を舐めてくれた。
優しい子やぁぁ。
「シャーリーさん、クリフ君を宜しくお願いします」
「任せて。リリーと大事にするわ」
「ありがとうございます。しばらくこの大陸からは離れますが、戻ってきたら商人ギルドに言伝をしますね」
「そうして頂戴。どこに行くかは知らないけど、気を付けてね」
「はい、行ってきます。クリフ君、また会いに来るね! 元気でね!」
「ヒヒィーン!!」
今までで一番大きないななき。
隣にはリリーちゃんが寄り添っている。
クレインさん、クリフ君は良い恋人を見つけましたよ。
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