一気に詰め込み過ぎました
とても無礼な司祭をのして、戻ってまいりましたエンデル街。
クリフ君は商人ギルドの牧場に預け、リリーちゃんと合流していた。
仲が良さそうな姿を見て、無礼な司祭の事は無かった事に。
一発殴ったし、もう忘れよう。
前払いしている宿に戻ると、まだヒースさんはダンジョンから戻って来ていないそうだ。
“予定”スキルを設定しているから、きっと怪我せず大丈夫だと思うけど、それでも心配してしまう。
それに彼が戻って来たら、レベル百三十でも瘴気への耐性がないとロッテントークへは難しいと伝えねば。
バステト様がいれば大丈夫だけど、それでヒースさんが納得するかだよね。
強さを求めるヒースさんなら、もしかしたら同行しないって言うかも知れない。
むしろそうなると、私が不安?
バステト様も私一人じゃ不安だからと、ヒースさんを乗せる事を許可してくれたんだよね?
ここはお願いして付いて来てもらうべきか、一人で行くべきか。
一人で行くべきだよねぇ……
まあ、本人に聞いてみない事にはわからないけどね。
今はヒースさんを待つしか無い。
それから、二日後にヒースさんは戻って来た。
「お帰りなさい! ご無事で何よりです!」
「ああ、だがまだ百三十までは達していないだろう。二十五階層にたどり着いたので、一度補給に戻ったんだ」
「えっ!? もう二十五階層ですか!?」
恐らく、一週間程で二十五階層まで行った事になる。
ほぼ休みなしで走り続けたのか?
フィールド階層はどのフロアも広い印象だったから、十六階層から二十階層までも時間がかかると思うんだけど……
ヒースさんにかかれば何でもないのか。
しかも、一週間で五階層ではなく十階層も進んでいるのに衝撃。
やはり土台が違いすぎるんだ。
私基準で考えてはいけなかった。
「あっ、そうだ、一つご相談が……」
「ここでは厳しい話か?」
「……はい」
私が濁して言うから察してくれた様だ。
今は宿の一階食堂。
ここでは流石にカマック様の話などは出来ない。
私のとっている部屋で話す事を了承してくれた。
「取り敢えず、お疲れ様でした。レベルいくつか鑑定しましょうか?」
「ああ、頼む」
そして鑑定した所、レベル百十九だった。
上がりにくいと言ってたのに、四つも上げるとは流石としか言いようが無い。
それを伝えると、まだ百二十にすらいっていなかったのかと少し落ち込んでいる様子。
どの位倒したのが聞いたら覚えていないそうだ。
しかも、魔石は大きいものだけ拾い、小さいのは捨て置いたらしい。
それ、他の冒険者が聞いたら勿体ないって言うでしょ絶対。
でも、荷物になるから仕方ないんだってさ。
どれだけレベル上げの中毒者だ!
生活費も大事でしょう!
いけないいけない、本題に戻らなきゃ。
「それで、ヒースさん。私この間、隣村の教会に行って来たんですけど……」
「どうした?」
「……」
「その猫は関係しているのか?」
ここで、私の膝の上で丸まっているバステト様に関して突っ込まれた。
遅いですよヒースさん。
帰ってきて挨拶した時から私の肩にいたでしょう。
気づいていたでしょう?
ちなみに、宿の女将さんは、バステト様を見た瞬間目がキラキラしていた。
もちろん部屋への同行もオーケー頂きました。
猫好きそうで良かった。
「はい……実は、この方、神様です」
そう言って、寝てらっしゃるバステト様を指した。
「……待て、理解出来ないぞ」
「そうですよね、こんな可愛い子が神様と言われてもですよね」
「いや、そこではない。目の前に神がいると言われても理解し難いのだが」
あっ、そっちね。
「私も村に行く間にお会いしたんですけど、鑑定するまで普通の猫ちゃんだと思ってましたよ。でも、カマック様とお会いした時、バステト様とも神の姿でお会いしました」
「バッ、バステト神だと!?」
ガタッと座ってた椅子から立ち上がり、今までにない大声を上げたヒースさん。
あまりに珍しい光景を目にして、私もビックリした。
「え、ええ、その様です」
「にゃっ!」
また右前足を上げて、肯定ポーズをとるバステト様。
目を覚まされた様だ。
そして、それを目が飛び出るんじゃないかってぐらいおっ広げて凝視するヒースさん。
「神話で語られる、あのバステト神なのか……?」
「その神話を知りませんが、恐らく?」
「何と言う事だ……豊穣の女神と謳われているが、過去には獰猛な姿も目撃されているといあのバステト神なのか?」
「にゃあ?」
「……」
なんか疑問形で鳴いているけど、疑いの目を向ける。
バステト様マジか。
獰猛ってどんな姿よ?
あっ、それが本気の神獣バージョンって事?
「まあ、獰猛かは知らないですけど、本物である事は事実です」
「そうか……」
「で、ですね。カマック様曰く、いくらレベルを上げても瘴気に耐性がある体でないと、ロッテントークは厳しいそうです……」
「そうか……」
何とも言えない顔をするヒースさん。
あまり感情を表に出さないが、今日はいつになく厳しい顔をしている。
暫く沈黙が続く。
神様が目の前にいる事もそうだが、流石に一気に話し過ぎたかな。
あっ、でもこれも言わなくちゃ。
「ちなみに……バステト様がロッテントークまで送って下さる事になりました……」
「なっ!?」
もはや、目が落ちてしまうんじゃ無いかってくらい見開くヒースさん。
ですよね。
「バステト様の周りには瘴気が集まらないそうなので、バステト様と一緒にいればヒースさんも問題ないそうです。しかも、今回特例で乗せて下さるそうです。私一人では不安だからと仰ってました」
「……」
「色々スミマセン……」
もはやリアクションが返ってこなくなった。
この長い沈黙が辛い。
恐らく五分くらいだろうが、三十分にも感じる。
「すまない、一晩時間を貰えるだろうか。考えたい」
ですよねぇ。
そう言って、ヒースさんは自分の取っている部屋へ戻っていった。
「バステト様、ヒースさんが同行してくださらなかったらどうしましょう」
「にゃあ?」
「そうでした、今はバステト様の言葉がわからないんでした。はぁ、一人だと不安だなぁ」
「にゃにゃっ!」
「ん? 大丈夫って言ってます?」
「にゃっ!」
肯定ポーズだけど、どっちの大丈夫?
ヒースさんが付いてきてくれる大丈夫なのか、バステト様がいるから大丈夫なのか、判断が出来ない。
とにかく、ヒースさんの回答を待つしかないね。
ヒースさんの回答を聞いてから、出発の準備をしようと決めた。
あっ、でも一つ忘れてた!
ナージンさんに、ロッテントークへ行く前に王都にきて欲しいって言われてたんだっけ!
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