ご配慮、感謝申し上げます
翌日、村外れの教会にやって来た。
もちろんバステト様も一緒だ。
そして、今日も私の肩に乗って下さっている。
村外れの教会は、少し寂れた印象。
汚いわけではないのだが、所々修繕が必要そうな外観。
扉もちょっと軋んでいる。
そんな軋んだ扉を開け中に入ると、意外や意外、古い祭壇や椅子だけど手入れは行き届いている様だ。
しかも天井が磨りガラスで、光も十分に入ってきて室内は明るい。
丁度、正面奥の中央に置かれている石像に光があたり、神々しくも感じた。
「こんにちは」
そう話しかけてきたのは、祭服に身を包んだ年配の男性だ。
表情も声も穏やかだから、もしかしたらこの方が宿の店主が言っていた助祭さんかな?
「こんにちは。お祈りしても良いですか?」
「構いません。ごゆっくりどうぞ」
そう言って、男性はその場を立ち去った。
一人にしてくれた様だ。
石像の前まで行き、両膝をつく。
バステト様も私の横にストンとお尻をつけ、前足を揃えて座る。
私は、両手を胸の前で組み、感謝を伝えると。
パァァァァァ__
前回同様、眩い光に包まれ意識が遠のいた。
「よお」
眩い光が収まり、目が慣れる前に男性の声が聞こえてくる。
おそらくカマック様の声だろう。
案の定、目が慣れて前が見えると、浅黒い超絶美形が目の前に立っていた。
また目を覆いたくなる様な、綺麗な上半身を晒してらっしゃる。
眩しさは収まったのに、目の前の肉体が美しすぎて直視出来ない。
前回も見ているはずなのに、慣れないね。
いや、慣れる必要ないのか。
「お久しぶりです、カマック様」
直視出来ていないけど、ご挨拶申し上げる。
「ああ、バステトも来てるな」
「んっ」
隣から声が聞こえてそちらを向くと、これまた浅黒い肌をした十歳ぐらいの美少女が立っていた。
黒髪は短めで快活そうな印象だけど、顔は小さく目が大きい。
人懐っこそうな笑顔でこちらを見ている。
えっ?
めっちゃ可愛いんだけど。
なに、この子がバステト様なの!?
「そうだぜ、こんな成りしてるけど立派な女神だ」
「そうなの! 神なの!」
そう言って右手をあげる。
猫の時と同じ仕草が堪らん!
しかも声が高い。
総じて最高だ。
あぁぁ、グリグリしたい!
「この空間ではやめとけよ」
あっ、そうでした。
メル様に抱きついて、存在が希薄になりかけたんだっけ?
やめます。
「それにしてもお前、やっとレベル三十かよ。加護の効果でダンジョンの魔物が増えたってのに、チンタラしてんなぁ」
「スミマセン……って、やっぱり! もらった情報と違い過ぎて何か可笑しいと思ったんですよ」
「ダンジョン内じゃあ、加護持ちには試練を与える様に組んじまってるからな」
「試練……聞いてないですよぉ」
「言っちゃいなかったが、まあ、問題なかっただろ? レベルも上がったしよ」
「問題ないと言えば、今ここにいる時点で問題ないんですけど、精神的に色々ね……」
その情報を事前に知りたかったっす。
「まあ、良いじゃねぇか。それより、ロッテントークまではバステトが連れてくぜ」
「えっ!?」
「そう! 乗せるの!」
「えっ!?」
「バステトは神獣形態で空飛べるからよ、ちょいちょい休憩しても三日ありゃ着けるんじゃねぇか?」
「アタシ頑張るの!」
「えっ!?」
ちょいちょい、カマック様!
話が早すぎてついて行くのが大変なんですけど。
「ここじゃ、そんなに長く話してらんねぇからな」
そもそも、バステト様は私の為に?
「そうだぜ、まあ俺が頼んだ事だしな。あそこは人間には遠いからよう、今余裕のあるバステトにお願いしたんだわ」
「貸し一つなの!」
「ああ、悪りぃな」
ヒェェェェ……まさかの神様が神様に貸して……
頼まれたとは言え、そこまで配慮してくださるとは思ってなかった。
「あとよ、ロッテントークにいる【預言者】にもお前の事は伝えてっからよ、お前の名前言やぁ良いぜ」
ん?
預言者?
「ああ、世界樹を守ってる奴らがいてよ、そいつらの一人には【預言者】って、たまーに俺らの声が聞けるような職業を与えてんだわ。話しかけたのは暫くぶりだがな」
暫くぶりって前はいつ?
「あっ! それ、私名乗ったら神使扱いされませんか!?」
「だろうな」
「っ!? そんな軽く……」
「まぁ、良いじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」
「減る! 何かが私の中で減ります!」
「それよりもお前、俺に聞くとこあったんじゃねぇか?」
「それよりって。聞く事……」
ああ!
ヒースさんの事だ!
「そう、そいつな。バステトが居りゃあ平気だ」
「えっ? じゃあ、バステト様がいらっしゃらなかったらレベル百三十でも厳しいですか?」
「ああ。瘴気はレベルでどうにか出来る問題じゃねぇからな」
ヒースさん……百三十でも無理でした。
確かに強くなってHPが上がったとしても、瘴気に耐えられる体じゃなきゃ意味がないのか。
ロッテントークに住んでいる人は、生まれながらに耐性がついてると、カマック様は仰った。
でも、バステト様が居れば周りに瘴気を寄せ付けないそうなので、ヒースさんも大丈夫だろうと。
ちなみに、バステト様にヒースさんと私を乗せても大丈夫なのかと聞いたら、全く問題ないと良い笑顔で答えてくれた。
むしろ、下々の者が神様に乗って良いのかが問題だ。
「今回だけ特例、本来はあり得ないの。アナタ一人だと不安だから連れも許すの。それだけ世界樹の問題は早く解決するに越したことはないの」
私一人では不安だよね。
それは自分でも同意します。
そして、深く感謝を申し上げます。
でも、あの神獣形態だとちっちゃ過ぎないか?
と思っていたら、あれは目眩しバージョンなんだって。
本気の神獣バージョンは見てのお楽しみだってさ。
スゴく楽しみだ。
どの姿でも十分魅力的ですけどね。
「じゃあ、宜しくな」
「はい。色々とご配慮頂き有難うございました。あと、メル様にも御礼をお伝え頂けますか?」
「おう、言っとくわ」
再度深くお辞儀をして、またお祈りしますと思ったところで、辺りが光出した。
「そうだ、言い忘れた。世界樹の浄化は一ヶ月かかるからな。毎日頼むな」
はい?
お読み下さり、ありがとうございます。




