豪奢な教会はやめておこう
誤字報告ありがとうございました!クリフ君をヒース君と…大変失礼致しました。
三時頃宿に戻ると、食堂にはヒースさんがいた。
既に飲み始めている様だ。
「……大丈夫か?」
「え? 第一声が心配な言葉って、私マズイ顔してます?」
「ああ……少しな」
「ちょっと部屋行ってきますっ」
慌てて自分の部屋に戻り、手鏡で顔を見ると確かに酷かった。
化粧が崩れて顔がドロドロ。
うわぁ、これで街を歩いていたのか。
クリフ君の事ばかり考えていたから周りなんて気にしてなかったけど、ちょっと自分でも引く位だわ。
急いで化粧を直し、一階の食堂へ。
「お見苦しいものをお見せしました」
「問題ないが、クリフの事だろう? 結論は出たか?」
「はい、ギルド長にクリフ君をお預けする事になりました。幸せにすると約束してくれました」
「そうか」
「女将さん! 私にもエールください!」
「は〜い」
ロッテントークへ行く為、最終的にはクリフ君を誰かに預ける気でいた。
でも、結局はそれも私のわがままで振り回している事に変わりない。
それなら少しでもクリフ君が望む、恋人と一緒の方が良いだろうという考えも、私の身勝手か。
何にしても私は手放す事を選択したんだから無責任だ。
生き物も最後まで飼えないなら、引き取るなこのクズと言われても仕方がない。
ああ、ダメだ。
ネガティブ思考が止まらない。
「もうそれ位にしては如何だ?」
「え?」
意識を戻され、テーブルの上に並んだグラスの数に驚いた。
いつの間にか七杯も飲んでいた。
「これ全部私が?」
「そうだ。一心不乱に飲んでいたぞ。今日はもう休め」
「一人になるとネガティブが止まらないっす……」
「困ったな。私は明日からダンジョンへ潜るが、変な事に走らないか?」
「子供か! 大丈夫っすよ!」
「その様子を見ていると不安なのだが」
「……」
ちょっと、一気に飲みすぎたかもしれない。
少しクラクラしてきた。
「忘れるところだった。代わりに受け取っておいた。ユエの取り分はこちらだ、落ち着いたら部屋で確認してくれ。内訳の説明はここでは控えておく」
そう言って、巾着サイズの麻袋を私に渡してきた。
それを持つと、袋の中からジャラッと硬貨が擦れるような音。
中身を確認すると、金貨、銀貨、大銅貨、銅貨が混ざって何十枚か入っていた。
「そう言えば今日でしたねぇ、すみません、ありがとうございず!」
「酔っているな。そろそろ部屋へ戻ろう」
そこからの記憶はない。
翌朝起きたら、自室のベッドの上だった。
「……やっちまった……頭っ!! ゔっっ」
ヤバイ、前回のラウラさんと飲みすぎた時より頭が酷くガンガンするし、吐き気を催している。
ギリギリ桶を取り出し、下にはついていない。
何がとは言えない。
急いで自分にキュアの魔法をかけ、水を飲む。
思い返す為の記憶が、殆ど残っていない程酔ったのは久々。
ラウラさんと飲みすぎた時だって、記憶は無くしてはいない。
いつもなら七杯位ではここまで酔わないはず。
かなりメンタルが弱っていたんだ……
それから、頭をスッキリさせる為お風呂を呼び出したが、洗面所で見た自分の顔の酷さに絶句した。
顔はパンパンに腫れ上がり、化粧も落ちドロドロ、髪もボサボサ。
もはや自分でも自分と認識できない。
何だこの生き物は。
自分の足でこの部屋に戻ったのか、担がれたのか記憶がないのでわからない。
しかし、こんな姿をヒースさんに見られていたなら、もうお嫁には行けないだろう。
しかも、窓から差し込む光がだいぶ明るいから、彼はもうダンジョンへ行ってしまっているはず。
確認しようもない上、謝罪する事も出来ない。
はぁぁ。
取り敢えずお風呂に入り、支度をし一階の食堂に下りた。
「アンタ、二日酔いは大丈夫かい? 昨日は酷かったねぇ」
一階に下りた私に、宿の女将さんがそう言ってきた。
「やはり酷かったですか?」
「連れの人が部屋まで運んでたけど、嫌だ嫌だと駄々捏ねてたよ」
「はぁぁ、もうその方は出掛けてますよね?」
「朝早く出ていっちまったよ」
「そうですよねぇ……女将さんにもご迷惑お掛けしました。私お代を払ってないですよね?」
「連れの人がまとめて払ってくれてるから平気だよ」
「ヒースさんっ!!」
迷惑しか掛けてなかったぁ……
しかもやっぱり運んでくれてたかぁ。
戻ったらマジで土下座しよう。
せめてもの償いとして、“予定”スキルにヒースさんが怪我をしないよう登録しておこう。
ヒースさんへ事前に言っていたら断られてると思うけど、無事で帰ってきてほしいからね。
きっとこの事バレるだろうから、勝手に結界張りました、って昨日の件と合わせて土下座だな。
それから改めて女将さんに謝罪とお礼を言って、宿を出た。
♢♢♢
この街を出るまでの日課として決めたクリフ君とのスキンシップを終え、気持ちを切り替える為街をブラブラする。
街の中は冒険者と見える人達が多い印象だ。
ダンジョンで成り立つ都市なだけある。
宿屋も多いし、武器や防具を販売する店も通常の街より三倍位多いのではないだろうか。
これだけ多いと皆さんどうやって選んでいるのか、聞いてみたくなる。
私には武器の良し悪しはわからないから、どこも一緒に見えてしまう。
そんな冷やかししながら街を練り歩いていると、街外れの方に白く大きな建物が見えた。
ちょっと気になったので近寄ってみると、そこは教会だった。
以前、タン街で立ち寄った教会とは造りがまるで違う。
あちらはシンプルな造りながらも、厳かな雰囲気がヒシヒシと伝わる教会だったけど、こちらは色が白いと言うところは一緒だが、それ以外がかけ離れている。
一言で言うなら豪華絢爛。
門からして意匠を凝らしている。
タン街とは違う意味で入るのを躊躇う入り口だ。
しかし、ロッテントークへ行く前に教会へとカマック様が仰っていた。
行くならタン街のあの教会が良いけど、流石にここからでは遠い。
しかもロッテントークへは、地理的に南下して行かなければならないから、タン街は逆方向になる。
それなら、どの教会に行っても一緒かなぁなんて思ってたけど、他の教会もこの位豪華なのかな?
もっとこじんまりした所が良いなぁ。
「そこの者! 先程から何用だ!? 祈りを捧げるならば早く入れ! 捧げぬならば即刻立ち去れ!」
立ち止まって教会を眺めていたら、門の前に立っている騎士に怒鳴られた。
「えぇ……そう言う感じ? タン街と違いすぎる……」
「何をごちゃごちゃと申している!」
そんな威圧的にならなくたって良いじゃん。
教会を守る立場の人だから警戒して仕方ないのかもしれないけど、言い方ってあるじゃん!
うん、入るのはやめよう。
もっと村とかにあるような小さい教会にしよう。
「はーい、去りますー」
ちょっと感じ悪い言い方だったかな?
でも、ここ最近耳にしてるのは教会の悪い話ばかり。
治癒師は守銭奴だとか、教会から応援が来ないだとか。
以前冒険者ギルドの女性チーフも、誘拐紛いに聖属性に適性がある人を勧誘するみたいに言ってたしなぁ。
この大きく豪華な教会に入って何も無いって、何となく思えないんだよね。
うん、嫌な予感がするから、やはりここはやめよう。
ヒースさんがどの位で戻って来るかわからないけど、近くの村に教会がないか聞いてみようかな。
クリフ君とデートがてら、違う村に行くのもありだし。
ヒースさんには念の為、宿に伝言を残しておけば問題ないだろうし。
威圧的な教会の門を去り、商人ギルドに行きこの街から近い村を聞いた。
この街から二日程の所に、一つあるそうだ。
大まかな地理も教えてもらい、クリフ君と明日から出かける旨をギルド長への伝言で頼んだ。
リリーちゃん、ちょっとだけクリフ君を連れて行きますね!
お読み下さり、ありがとうございます!




