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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第四章 レベルアップ
73/133

ちょっと気まずい


 ようやく十五階層到着。

 そこは一面雪に覆われている階層だった。

 ローブのお陰で寒くはないから、マイナス三十度を下回ってはいない様だ。

 ヒースさんも事前に、厚手の外套に着替えていた。


 常に吹雪いているため、流石に仮眠を取る時はテントが必要だな。

 一応ナージン情報に持てる者はテントをと書かれていたから、用意はしてある。

 ただ、一人用なんだよね。

 ヒースさんに聞いたら、彼は嵩張るから持ってきてないそうだ。

 狭いテントで二人……距離が近いんじゃないか?

 まだそんなシチュエーションにもなってないのに、一人妄想してテンションが上がってしまった。


「大丈夫か?」

「ゔっ、スミマセン。大丈夫です」

「では、進むぞ」


 この階層では《スノウクァール》と言う豹型の魔物や、《スノウウルフ》と言うオオカミ型の俊敏な魔物が多かった。

 しかも、それぞれ少し強い個体のリーダーがいて、統率されていたのは厄介だった。

 何度となくドンッされて、“予定”スキルには数え切れないほど感謝した。

 それでも、ドロップアイテムが魔石だけでなく、爪や牙なんかも落としていたから、洞窟タイプの階層よりも収入は増えそうだ。

 

 そして、外も暗くなり、休息を取る時間になった。

 吹雪の中テントを建て中に入ると、思った以上に広かった……

 二人入っても密着なんてしない。

 建てながら薄々感じてたけど、通りで銀貨二枚とちょっと高かった訳だ。

 流石に二人横になるとしたらキツイけど、一人が横になり、一人が見張るなら何の問題もないくらいのスペース。

 まあ、体格の良いヒースさんには狭いだろうけどね。


「明日はとうとう地上に戻れるんですね」

「そうだな。十五階層のボスを倒してからだがな」

「はい。でも、ヒースさんはこの後もっと下の階層を目指すんですよね?」

「ああ。だが、一度地上に戻って準備をしてからだな」


 ですよねぇ。

 このまま続けて潜るには、食糧とかアイテム系が心許ないよね。

 それにしても今更だけど、ヒースさんはマジックバッグを持っていない。

 食糧とかそこまでたくさん持てないと思うけど、大丈夫なんだろうか?


「ヒースさんはマジックバッグは持たないんですか?」

「便利だが、それに頼りきりも良くないと思ってな。今は、出来るだけ道具に頼らずレベルを上げると制約をつけているんだ。ただ、ユエには食糧面で頼り切ってしまっているがな」

「……ヒースさん、色々反則ですよ……」


 なんだこの人!

 急に頼りにしてるとか言いやがって!

 しかも、どこまでストイックなんだ!

 知らずに制約付けてたなんてさぁ、ストレージに頼り過ぎの私は情け無いよ。

 けど、今更ストレージ使いません、予定スキル使いません、なんて私が出来るわけないじゃない。

 私は大いに頼らせてもらいます!


「レベルが百三十になるまで戻らないんでしたっけ?」

「どれ程時間がかかるかわからないが、そのつもりだ」

「今レベル幾つでしたっけ? 鑑定しても良いですか?」


 そう言って鑑定をさせてもらうと、前回見た時より一つアップの百十五だった。


「百二十以上になるとより上がりにくくなると言うからな」

「でも、お荷物の私は同行しないので、ヒースさんの全力であればすぐじゃないですか?」

「どうだかな。ここまで空腹を感じることもなく、睡眠も取れている。かなりコンディション良く進めていたが、一人となるとそうも行かなくなるからな」


 そうか、確かに。

 臨時のパーティに加入してはと思ったが、下層になればなる程連携の取れないパーティだと、危険が増すんだと。

 稀に、囮にされて置き去りにされることもあるとか。

 信頼しているパーティで潜るのがベストだ。

 そうなるとヒースさんはやはり一人で潜ることに。

 ああ、心配だ。

 強さは疑っていないけど、コンディションが万全でないといくら強いと言っても隙が出来る。

 そうなると……


「心配です!!」

「ハハ、ありがとう。ただ、レベルを上げるには必須なことだからな」

「そこまで強くなる必要って……」

「そうだな、目標が無ければ私は自分を見失ってしまう……」


 そうだった……ヒースさんの人生を狂わせたのは私だ。

 以前も話したけど、あの時国王を殴っていなければ、ヒースさんはここには居なかった。

 今も近衛隊長と言うエリートであり続けて居たんだ。


「ごめんなさい……」

「ユエの所為ではない。私が守れなかった事が一番の原因だ。私が弱いのだ」

「……」


 いや、そんな訳ないでしょ。

 貴方が弱かったら私はなんだ?

 それに、何故この人は強さにここまで拘るんだろうか?

 強さの最上位でないと何かダメなのか?

 まあ、そんなこと聞ける様な空気じゃ無いんだけどね。


「先に休んでくれ」

「はい……お休みなさい」


 ちょっと気まずい空気になったところで、先に休ませてもらうことになった。


 翌日のヒースさんは、昨日の話が無かったかの様にいつも通り。

 切り替えが上手いんだろうな。

 私は申し訳なさが抜けず、無言が多くなってしまう。

 それでもダンジョンを進み続け、ボス部屋前まで来た。


 扉は開いている。

 

「ようやくここまで来たな。準備は良いか?」

「はい、行きましょう!」


 他のボス部屋同様、中に入ると重厚な扉が音を立てて閉まる。

 それと同時に魔物が現れた。


「……だから、多いんだって!!」

「確かにな」


 ナージン情報では、平均的に《スノウウルフ》が十体、ボスで体高五メートルほどの《イエティ》が一体と書いてあったはず。

 だが、目の前には《スノウウルフ》三十体以上に、なんと《イエティ》が二体。

 ボスが二体ってどういう事!?

 誰が何を基準に操作したんだこれ!


 まあ、そんな愚痴を今言っても仕方ないから倒すしか無いんだけどさ。

 

「やるよ! やってやんよ!」

「ど、どうしたんだ?」

「ヤケだよ!!」

 

 誰かに弄ばれてる気がしてならなくて、ヒースさんに八つ当たりしてしまった。

 それで無くても朝から気まずいってのに、なんかもう本当ヤケだよ!


「ホーリーウェーーブーー!!」


 思いっ切り魔力を乗せて放った魔法は、かなり広範囲の魔物を吹き飛ばした。

 しかも、イエティも一体倒して。

 お陰でまたレベルアップ。


「……スゴイな」

「スゴイのはヒースさんだから! 貴方は強いんだから!」


 酔ってる訳ではない。

 ヤケを起こしているだけだ。


「……ああ、ありがとう」


 そう言ったヒースさんの顔に、少しだけ笑顔が見えた気がした。


 そして、あっと言う間にボス部屋内の魔物は討伐された。





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