レベル三十到達!
エンデルダンジョン十一階層。
今回もスッキリした気持ちでダンジョン挑戦に臨めている。
「あの冒険者達の話を、噂程度だが耳にした。ユエが何かしたのか?」
そうヒースさんに言われたが、
「いいえ、何も!」
と、めちゃくちゃ笑顔で答えておいた。
何か疑わしげな目線を向けられたけど、何もと強調しておいた。
実際私は、魔力を提供して“予定”を入力しただけ。
日頃の行いが良ければ、あんな事私だって実行しようとは思わなかっただろうからね。
さあ、あいつらの事は忘れてダンジョンに集中だ!
この十一階層は草原フィールドだ。
出てくる魔物も洞窟タイプとは違い、様々な種類が出てくる。
主に草原を生息地としている魔物達が大集合していると言えよう。
そして今私たちの目の前には、真っ赤な体毛のツノがやけに長いシカが三頭。
目も真っ赤。
ギラついてるねぇ。
こちらにはまだ気づいていない。
鑑定してみると『レッドディア』と出てきた。
魔物ランクはD。
脚力が強く、足は速いしジャンプも高い、そして角が大きく頑丈。
角を振り回しての攻撃が主だそうだ。
鑑定している間に気配を感じたのか、レッドディア達がこちらに気付き、三頭一斉に駆け出した。
一頭がヒースさんへ、二頭が私へ。
「ホーリーアロー! ウィンドウボール!」
二発放つもどちらもかわされる。
あっと言う間に私の目の前。
だが、ドンっと言う音と共に二頭とも飛ばされた。
これは“予定”スキルのおかげ。
単発攻撃がかわされてしまうなら。
「ホーリーウェーブ!」
またブワッという音と共に聖属性の衝撃波が放たれた。
前回のボス部屋よりは威力は少なめだと思う。
でも、正面にいた二頭のレッドディアには大打撃。
なかなかにエグい状態になってしまったが、すぐシューっといって魔石を残して消えていった。
この範囲攻撃魔法をダンジョン外で使用したら、後片付けがキツい気がするのは気付かなかった事にする。
出来るだけダンジョン以外では控えようと心に誓った。
それからも色々な魔物と出会した。
《イビルスカンク》に《アックスビーク》に《ブルーヌー》などなど。
《イビルスカンク》はあのスカンクの大型版。
お尻から出す毒霧が臭いのなんのって堪らなかったわ!
この毒霧に効く薬草を噛みながら、霧を吸わない様に風を起こして回避してたけど、匂いは嗅いでしまった……毒には犯されなかったのに、吐き気が酷かったのは臭いのせいだろう。
《アックスビーク》はダチョウ型の魔物。
この魔物もレッドディア同様かなり足が速い。
大きな嘴でつついてくるのを回避して倒していった。
《ブルーヌー》は、体全体がブルーの色をした大型のヌーだ。
この魔物は群れで行動していて、出会した時かなりの数に囲まれてしまった。
焦った私は、手当たり次第【ホーリーウェーブ】を放ってしまい、魔物に対して魔法攻撃が過多になってしまった。
そして、魔法の無駄撃ちは控える様にヒースさんに諭された。
これは、一度ヒースさんに魔法が当たりかけたからだろう。
ごめんなさい、かわしてくれて本当に良かった……
そんな戦闘を続ける事半日。
まだ十一階層からは抜け出せていない。
なので、この階層で今日は仮眠を取る。
先に火を起こし、魔物避けを焚く。
この魔物避け、前から思っていたけど独特な臭いだ。
これが魔物の嫌いな臭いなのか。
この階層では、至る所で他の冒険者達に遭遇した。
もちろん命の危機がない限り加勢を要求されない為、相互不可侵。
今のところ負けそうな冒険者達にも出会していない。
この階層にこれたって事はハイオークに勝っていなければならないしね。
そう簡単にやられる様な人たちは来ないだろう。
「今日でレベルはどのくらい上がった?」
「確か二度レベルアップを感じた気がするので……」
▽▽▽
名前 :トウコ・スズキ(偽名:ユエ)
職業 :販売部
レベル :23
HP :431/800
MP :560/1,060
スキル :隠匿操作・鑑定
ユニーク:予定・ストレージ
その他 :創造神の加護・商業神の加護
△△△
あら、気付いたらレベルが二十三にアップしてた。
魔力も千を超えている。
そう言えば、ハイオークの戦い前からステータス確認するの忘れてたわ。
「いつの間にかレベル二十三になってました」
「そうか、もうすぐ三十が見えてくるな」
やはり、下層になると魔物も強くなり経験値も高くなるんだね。
一階層から九階層までと上がり方が全然違う。
レベル三十が近づいて来ているけど、浮かれず堅実に魔物を倒していこう。
浮かれてもきっと良い事ないしなぁ。
気を引き締め直し、見張りをする。
魔物に襲われる事なくお互い仮眠を取り終え、レベルアップの為の魔物狩りを再開した。
♢♢♢
それから二日ほど経ち、丁度十三階層の真ん中あたりで。
「ヒースさん!レベルアップしました。恐らく三十です!」
「おめでとう」
「ヒュッ……」
ヒースさんにヤベー笑顔を不意に向けられて、一瞬呼吸が止まった。
笑顔が神々しく感じるのは神だからか?
それにしても、思い返せばここまで何度となくヒースさんには迷惑をかけて来たなぁ。
「ヒー、ヒーズざん……」
「ただ、まだダンジョンだからな。泣いている場合ではないぞ」
「ズズッ、ごめんなざい。気を引き締めまず」
そんな事を言ったが、簡単に引き締まるはずもなく、何度か魔物にドンっとされてしまったが私は無傷だ。
「ここから引き返すには時間がかかり過ぎる。十五階層までこのまま行くが良いか?」
「はい。問題ないです。食糧もまだまだ大丈夫ですよ!」
「そのアイテムボックスの容量は可笑しいと思うが……聞かないでおく」
確かに、今回用意して今まで出してきた食糧やアイテムは、私の魔力量では入りきらない量だと推測できる。
ヒースさんの荷物も少し入れているし。
薄々は気付いているだろうけど、あえて聞かないところは紳士だなと改めて思う。
そのままダンジョンを進み続け、十四階層の階段に到着したので、下りたらそこで仮眠を取ろうという話になった。
今回チャレンジを開始した日から既に三日が経つ。
転移陣のある十五階層のボス部屋までは、後三日はかかるだろうとの予想。
無理に進まず、休憩を取りながら着実に進む予定だ。
十四階層に下りると、一面砂漠が広がっている。
そして急激に温度が上がった。
私のローブはプラスマイナス三十度に耐えるが、それを超えているということだろう。
とても暑い。
ローブを着ていなかったら干からびてしまいそうなくらいだ。
隣のヒースさんを見る。
……納得いかない!
なぜそんな涼しい顔をしているんだ!
革鎧も身に付けているから私よりも重装備なはずなのに、暑さを感じていないような顔色。
「……ヒースさん暑くないんですか?」
「うん? 暑いぞ?」
「全然暑くなさそうです……」
「確かに暑いが、色々な環境で訓練していたからな。動くには問題ない」
「流石です」
どんな訓練をしたら暑さにも耐えられるようになるんだろうか?
次の階層の雪フィールドでも大丈夫なんだろうか?
痩せ我慢しているようには見えないから、やはり超人だな。
「今は暑いが、間も無く日が傾き始めるから今度は寒くなるぞ」
ダンジョンの不思議。
フィールド階層では朝と夜が訪れるのだ。
それによって出てくる魔物も異なる。
この階層は砂漠だから夜の間は寒くなると、ナージン情報にも載っていた。
階段から少し離れた先で場所を確保する。
幸い、魔物避けを焚くまでは魔物に襲われる事は無かった。
火を起こしている間に日は陰り、寒くなってきたが私はローブのおかげで快適。
そして、ヒースさんとシチューを食べている時にそいつらは来た。
「ねえ、魔物避け切らしちゃったから一緒に良いかしら?」
「おねが〜い」
「減るもんじゃないし良いよね?」
「なんか良い匂いするんだけどぉ」
《薔薇の宴》の襲来だ。
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