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予定は確定ースケジュール管理は基本ー  作者: 秋海棠
第四章 レベルアップ
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元近衛隊長は伊達じゃない



 怪我を負った冒険者の治療を終えて、治療費の話をしたら皆さん唖然としてしまった。


「あのぉ……」

「兎に角今はここを離れてセーフティエリアに行くぞ。君たちは倒れた者達を運んでくれ」


 皆さんの正気を戻してくれたのはヒースさん。

 確かにここにいても次々とポイズンフロッグが襲ってくるだけだ。

 加勢しに来た冒険者パーティと助けを求めに来た冒険者とで、倒れた二人を二人一組となり担いで行く。

 セーフティエリアまでの道のりで出てきた魔物は、全てヒースさんが倒してくれたので、皆んな無傷で辿り着くことができた。


「今回は助かった、本当にありがとう」

「「ありがとう」」


 そう言ったのは、助けを求めにきた冒険者のパーティだ。

 怪我を負っていた二人も途中で目覚めたので、自分の足で肩を借りながら歩いてもらい、何とかセーフティエリアに戻ってきた。


「何があったんだ?」


 ヒースさんがそのパーティに経緯を聞いた。


「四階層のセーフティエリアに向かってたんだが、その一歩手前でキラービーの群れに襲われたんだ。どうやらクインビーが統率していた様でな。クイーンビーは出ないと思ってたんだ」

「クイーンビーか……低層では出ないはずなんだが、突然変異か?」

「恐らく……」


 確かに、ナージンさんからもらった情報にもクイーンビーは載っていなかった。

 統率者がいるとなると厄介極まりないんだとか。

 早めにクイーンビーを叩かないと、どんどん群れの数が膨れ上がっていき、中級冒険者でさえ厳しくなるとか。

 こうなると初級の冒険者ではどうにもならない。

 

「君たちはこの事をギルドへ伝えてくれ。私は対処を試みてみる」


 ヒースさんなら何とかしてくれそうだ。

 でも流石に数には勝てないかもしれないから、ヒースさんにも【怪我をしない____】を設定してもいいかな?

 自分に設定したままで今更だけど、とても卑怯な裏技だよね、“予定”スキルは。

 他の冒険者達は皆命をかけてるのに、私は安全圏でのうのうとレベルアップ。

 本当に今更だけど。

 それでも、死にたくない私は“予定”スキルを解除する勇気なんてない。

 知り合いにも死んでほしくない。

 身勝手でひとりよがりと言われても、使えるものは使って良いだろうと、ヒースさんにも“予定”スキルを適応させた。

 今回はいつもと違い、私にではないからか魔力消費が百五十だったのは仕方ない。


「ん?ユエも来るのか?」

「えっ?ヒースさんが行くんですからもちろん」

「……そうか。全て倒しきれるとも言えないが大丈夫か?」

「大丈夫です!行きましょう!」


 そう意気込んで出発しようとした時、


「待ってくれ!さっきの治療の……」


 そうだった!まだ貰ってなかった。


「そうでした。さっき言った通り、ポーション代と同額で良いですよ」

「本当か?後でやっぱりって言われても払えないぞ」

「構いませんよ」

「……アンタはあいつらとは違うのか……恩に着る」


 あいつらって誰?

 知らない人と比べられても結局わからないんだけど、そう言って硬貨を渡してきたので受け取っておいた。


「じゃ、報告お願いしますね!」


 そう言って私とヒースさんは走り出した。

 しかし、走り出し十分で私の体力は尽きた……

 さっきの往復で既に疲れてたのに、気合だけで空回り。


「ヒースさんごめんなさい。先に言ってください……」


 明らかにヒースさんは疲れていなさそう。

 体力の鬼だな。

 鍛え方が違うんだから当たり前だとは思うけど、私のお荷物感が半端ない。


「……そうだな。事は急ぐから、済まない先に行くぞ」

「はいぃぃぃい!?」


 そう言った瞬間ヒースさんが走り出し、既に遠く見えなくなり掛けてた。

 私は驚いて「はい」の一言がおかしな事になってしまった。

 何て身体能力。

 元近衛隊長は伊達じゃない。

 ずっと私に合わさせてしまっていたのが、本当に申し訳ない。


 そんな一人置き去りの私は、ストレージから水袋を出して水を飲む。

 マップを見ながらトボトボ歩いているが、進みは遅い。

 まだ歩けているだけマシだけど、明日がヤバいんではないかと不安にすらなる。

 

 進んでいると、ヒースさんが倒したであろう魔物の魔石が、ちょいちょい落ちているので拾っておく。

 それから、たまに出てくるポイズンフロッグをウィンドウボールで倒していく。

 もちろん毒を吐かれて体にかかっても、無傷に変わりはない。


 ようやく四階層への階段に辿り着いた。

 もうヘロヘロではあるが、自分で行くと決めたのだから今更引き返せない。

 引き返す体力もないし。

 頑張れ自分!

 と、奮い立たせて階段を下りていった。


 四階層に下り立つと、三階層のジメッと感から解放された。

 階段付近にキラービーの姿は見えない。

 とにかくマップを頼りに進む。

 またちょこちょこ魔石が落ちているのでそれも拾う。


 歩きながら、まだ会得出来ていない【ホーリーウェーブ】の練習をしたが、歩きながらっていうのがより難しい。

 全然集中出来ない。

 歩きながらやるものではないなと、諦めた。


 それにしても未だキラービーに遭遇しない。

 全部ってくらい倒してるんじゃないのヒースさん。

 徐々に落ちている魔石の数が増えてきているし。

 私の出番なんて無いんだろうなと思いながら歩き続けた。


 ……いや、本当、尋常じゃないくらい魔石が落ちているんだが!?

 あの人何してるんだ!?

 確か魔法も使えるって前に言ってたから、範囲攻撃でも使ったのかな?

 魔石を拾い集めるのだけでも大変だぞ。


 そして、辿り着いた時、


「……」

「ああ、着いたか、お疲れ」

「……」


 終わってた。


 何がって?

 全てが!

 統率されてたであろう無数のキラービーも、クイーンビーすらも形は残っていなかった。

 夥しいほどの魔石と、その中心で立っている一人のイケメン。

 

 ちょっとこの状況が飲み込めない。

 本当に沢山の魔石が落ちているので、これ全部をヒースさんが倒したんだろうかとは理解できる。

 理解できるが、マジかこの人。

 

「思った程数は増えていなかった。それよりも、ユエ。私に何かしたか?」

「……」

「不覚にも攻撃を受けてしまったが、体が何かに覆われているように魔物が弾かれていったんだ。何かしただろう」

「……」


 現状とヒースさんの言葉とどちらにも何も言えない私。

 頭の中を何から処理したら良いのか。


「大丈夫か?」

「ごめんなさい、この状況について行けてなくて。これ全て一人で倒したんですか?」

「ああ、そうだが、私には傷を負わなかった事の方が重要だ。でなければまだクイーンビーに辿り着けていなかったかもしれない」

「はあ……すごいですね」


 そんな言葉しか出て来なかった。


「私が何かしたかは別にして、流石ですね。その手に持ってるのがクイーンビーの魔石ですか?その細長いのは?」

「こっちはクインビーからのドロップアイテムで針だな」

「針が大きいんですね。って暢気に話している場合じゃなかった。魔石が消滅する前に拾いましょう!」


 そう言って、落ちている魔石を二人で拾った。

 “予定”スキルの話は有耶無耶にして。



ここまでお読みくださり、ありがとうございます!

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