はい、前に見たぁ
後半会話文が多くなりました。。
朝一で城門近くの詰所へ向かった。
「おはようございます。ユエと申しますが、先日の大型キャラバンの事件で、こちらに来るように言われていた者なんですが」
詰所にいきなり行くのもどうかと思ったので、近くにいた兵士に声を掛けたら、案内してくれた。
前回連れてこられた部屋と一緒だ。
「お待たせしました」
そう言って入ってきたのは、先日対応してくれたガタイの良い兵士だ。
まだ敬語はやめてくれそうにない。
「先日はご助力頂き、ありがとうございました。申し遅れましたが、第十班長のスヴェンと申します。早速ですが、報酬と治療費のお話をさせて頂きます」
「よろしくお願いします」
「ではまず、集めた治療費から。一人金貨一枚で徴収しましたが、全員満額とはいかず申し訳ありません」
そう言って木のトレーに乗った硬貨の枚数は、金貨九枚と銀貨七枚だった。
もはや何人治療したかも覚えていないが、一人金貨一枚は取り過ぎではないだろうか?
「治療費が高い気がしますが……ありがとうございます。払えない方は無理に支払って頂く必要はないので、もし借金までして払った方がいたらお返し頂きたいんですが良いですか?」
「なんと……そのような事は初めて言われました……暫くお待ちください」
そう言ってまた一人詰所に残された。
私があそこにいたのは偶々だし、助けられたのも偶然。
助からなかった人もいた中で、折角助かったのに結局借金苦になるとかは私だったらキツイ。
なので、そこまでして支払って欲しいとも思わない。
私が勝手にやった事だし。
払える分だけ払ってもらえれば良いなんて言えるのは、今私がお金に余裕があるからだろう。
もし一文なしだったならそんな事言っている場合ではなく、きっちり徴収しろって言ってたかもしれない。
それくらい小さい女であるという自覚はある。
でも、幸い神様たちのおかげでお金に困らない生活をさせてもらっている。
治療費は払えるだけで良いから、その分神に感謝してもらおう。
「お待たせいたしました。確認したところ四名対象者がいました。金貨二枚と銀貨八枚を対象者へ返金させて頂きますが、本当によろしいですか?」
「ええ、大丈夫です。面倒な事を言ってすみません」
「とんでもない。恐らく感謝されるでしょう」
「もし感謝するなら、それは神様にとお伝えください」
「とても信心深いのに、貴女は教会に属していないんですよね?」
「はい、個人的に信仰しているだけです」
「はあ……その様にお伝えします。では次に報酬ですが……」
何やらスヴェンさんが言い淀む。
「もしかして報酬は無しとかですか?それならそれで構いませんよ?」
貰えるなら貰うけど、貰えないならそれはそれで良い。
別に報酬が欲しくてやった訳ではないし。
結局私の自己満足ですから。
「いえ、報酬はございます。こちらです」
そう言ってスヴェンさんが出したのは、どこかで見たような小さい宝石箱。
なんか嫌な予感がするんだけど……
「……開けて良いですか?」
「どうぞ」
カチャッ
はい、前に見たぁ。
中には数枚の金貨と小さい宝石がいくつか入っていた。
明らかに数日前の報酬受け取りと同じような内訳内容。
思い当たる人が一人いるじゃん。
「何ですこれは?」
「今朝になって、国から使いがきまして……これを渡すように言われました」
「……スヴェンさん、この手の報酬の相場ってどのくらいなんです?」
「良くて銀貨八枚程度かと」
どう見ても百万は超えている。
相場の十倍以上とかやめてくださいよ!
絶対ナージンさんが原因だ。
じゃなきゃ、国からこんなに支払われるわけがない!
軽い気持ちで一昨日の事を話したのに、こんな事になるとは。
貴方がその気なら……
「スヴェンさん。今回の治療費全額返却します。対象者に返金して下さい。それと、返金した際に国が全て負担してくれたとお伝えください」
「えっ?いやしかし……」
「国からの報酬を受け取らない訳にはいかないでしょう?なら、治療費は国が負担したってことでお願いしますね。あと、感謝するなら神様へ。じゃ、そういう事で私は失礼します!」
「あっ、ユエさん待ってください!ここにサインを!」
「あっ、ごめんなさい……」
言い逃げしようとしたら止められた。
ちょっと恥ずかしい。
受け取りサインしなかったら怒られるのはスヴェンさんだもんね。
しっかりサインをして、あとはスヴェンさんに丸投げして詰所を出て行った。
スヴェンさんごめんなさい。
これはナージンさんに意見せねば!
ホテルへの帰り際商人ギルドに寄り、言付けをした。
♢♢♢
翌日お昼頃。
コンコン
「……はい」
「ナージンです」
「どうぞ」
いらっしゃいました、ナージンさん。
「ナージンさんこんにちは」
「どうしました?何かご不快の様ですが」
「ご不快の様ですがじゃないですよ!何ですか、あの報酬額は!」
「なんの事でしょう?」
「惚けちゃって!城門で起きた騒動の件での報酬額が、可笑しかったんですよ!」
「ほう、そうでしたか。私は特に何もしていませんよ?まあ、友人には一日の出来事として話はしましたけどね」
「友人って誰!?」
「カールという友人ですな。今リハビリ中なんで、話し相手にもなってるんですよ」
「……」
カールとは……国王のミドルネームやんけ!
国の税金をこんなところに使ってる場合ちゃうやんか!
エセ方言でごめんなさい、取り乱しました。
「カールも何か報いたかったのかもしれませんね」
「いや、もう既に頂いてますから……」
「まあ、気持ちという事で受け取ってくださいね。それは良いとして、出発が明日とか?」
「それは良くないんですけど……ええ、明日この王都を発とうと思っています。ヒースさんも馬を確保できましたし」
「そうですか、寂しくなりますねぇ」
「色々お世話になりました」
「いえ、それはこちらのセリフですよ。今こうしていられるのもユエさんのおかげです」
「そんな大袈裟な。お役に立ってて良かったですよ」
「大袈裟ではないんですがね。明日は何時ごろ発つ予定ですか?」
「早朝出発します」
「そうですか……」
「あっ、もしかしてお見送りとか考えてくださってます?朝早いので大丈夫ですよ。今日が最後ということになりますが」
「そうですか……」
あら、お見送りにきてくれると思ったのは自意識過剰だったかな?
「もし可能でしたら、レベルアップが終わられたらまた王都へお越し頂けませんかな?」
「ん?何故です?」
「カールが直接礼を言いたいと申してましてな」
「えっ!?国王が!?」
「いえ、カールとしてですよ?」
あっ、そうだった。
隊長としては報告しないでと言ったのは私だ。
だから、ナージンさんの友人カールとしてお礼を言いたいと。
でもなぁ、もう国王ってわかっちゃてるじゃん。
そんなの緊張するに決まってるじゃん。
「……私、作法とかなってませんけど、良いでしょうか?」
「ええ、私的な事ですし」
「……わかりました。一度王都に戻ったらご連絡します」
「ありがとうございます」
そうナージンさんと約束をして、翌日の早朝に私とヒースさんは王都を旅立った。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ストックが切れました……一日一話頑張ります。
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